第三十二話 地獄の投擲ラッシュ
裸ゴブは次の投石の準備に入っている。
数秒もしないうちに、投げられた石が容赦なく飛んで来るだろう。
考える時間を与えてはくれないようだ。
今のままでは一方的に追撃を喰らい続けるだけなので、地面を蹴って飛び上がりもう一度予測されにくい動きで飛行する。
裸ゴブのほうをちらっと見たが、また【三連投擲】をしてくるみたいだ。
あえてよけやすい位置に投げ、避けた先に本命の攻撃を叩きこんできたりするからな。
よけたあとも気を抜くことはできない。
裸ゴブから放たれた石の最初の一個が、少し上よりで俺に迫ってきた。
予測されにくい動きをしていたというのに、やはり正確に飛んでくるか。
さすがというべきだろう。
飛んできた石を下降して躱した先に、二個目の石が下よりで俺に迫ってきていた。
上昇すれば簡単に躱せるが、それではやつの思うつぼだ。
躱した先を狙って最後の石が正確に飛んで来るのが目に見えている。
ここを切り抜けるには、裸ゴブが予想していない行動をとるしかないな。
……イチかバチか試してみるか。
うまくいく保証はないし、失敗したら結構なダメージを負うことになる。
リスクはでかいが、成功したときのリターンもまた大きい。
下よりに俺へと迫ってきている石を、避けるのではなく【ファイアーボール】で迎え打つ。
これまでの【ファイアーボール】であれば撃ち負けるのが目に見えているので、いつもの三倍ほど魔力を込めて威力を底上げする。
これなら飛んでくる石の速度を遅くしたりできるかもしれない。
失敗したら俺の下半身に直撃するので、そうならないように祈っておく。
【ファイアーボール】と石がぶつかると、ボンッという爆発音のような音がした。
音自体がそれほどでかくないので、爆発音というほどの派手さはないが。
どちらかといえば、ポップコーンがはじける音に近い。
それを少しでかくしたくらいか。
音のたとえはともかく、今回打ち勝ったのは【ファイアーボール】だった。
石のほうは、【ファイアーボール】にぶつかった衝撃で勢いを完全に失って下に落ちていっている。
【ファイアーボール】のほうは、石の勢いを殺すので精一杯だったみたいだ。
裸ゴブに届くよりかなり前にはじけて消えてしまった。
なんにせよ、今がチャンスだ。
今回のチャンスを逃すわけにはいかないので、全力で飛行して裸ゴブめがけて突っ込む。
裸ゴブは【ファイアーボール】に撃ち負けたのが予想外だったのか、動揺してるのが明らかだった。
自分のほうへ突っ込んでくる俺を見て、ハッとして石を投げようとするがもう遅い。
この距離なら俺の攻撃が届くのが先だ!
裸ゴブが石を投げるよりも先に、俺の【フレアタックル】が炸裂した。
俺がぶつかった勢いで、裸ゴブのやつは吹っ飛んでいった。
心臓の位置(ゴブリンの心臓が人間と同じ位置にあるのかは不明)に【フレアタックル】をぶちかましたので、今のはかなりのダメージになったはずだ。
裸ゴブを見ると、吹き飛ばされた先でよろよろと立ち上がっていた。
今更だが、心臓の位置を狙うより右肩(裸ゴブは右利き)を狙ったほうがよかったんじゃないだろうか。
肩を壊せば、投げることができなくなって戦えなくなる可能性があったかもしれない。
こればかりは、ゴブリンの体の構造を知らないので何とも言えないが。
裸ゴブの体力は既に半分を切っているので、もう一度【フレアタックル】をぶちかませれば勝てそうだ。
裸ゴブに【投擲】で狙う暇を与えるわけにはいかないので、【ファイアーボール】を6発放った。
六発も打てば、さすがの裸ゴブでも防ぎきれないだろう。
「ゲ……」
裸ゴブもさすがに六発は防ぎきれないのか、【ファイアーボール】を見て顔をしかめている。
裸ゴブは舌打ちをしたあと、石を三つ拾った。
【三連投擲】をするつもりだろう。
裸ゴブは三つの石を、迫りくる【ファイアーボール】の右側三つに投げた。
投げられた三つの石が【ファイアーボール】を打ち消すが、そのあとに俺のほうに来ることはない。
今回の【ファイアーボール】は数重視で撃ち負けるのが目に見えていたので、【ファイアーボール】を放った直後にあらかじめ石が当たらない位置に移動しておいた。
滞空せずに最初から不規則に動き続けているので、変化球で狙ってくる余裕はなかったみたいだ。
裸ゴブは三つの【ファイアーボール】を打ち消すことはできたが、まだ二発分迫ってきている。
石を拾って投げるのは間に合わないだろう。
となれば、必然的に裸ゴブの次の行動が読めてくる。
裸ゴブは俺の予想通り、右側へ大きく跳んだ。
右側の【ファイアーボール】を打ち消した時点でそちらへよけようとするのは明白だったので、避けた先に【ファイアーボール】の最後の一発を撃ち込んでいる。
裸ゴブの誘導をうまいことまねることができた。
まさに誘導返しだ。
最後の【ファイアーボール】は確実に当たる!
当たった直後に【フレアタックル】で突っ込んでフィニッシュだ!
だが、ここで裸ゴブは予想外の行動に出た。
横に大きく跳んだ状態(手から突っ込むスライディングみたいな感じで跳んでる)から体を側転させ、回転しながら地面に落ちていた石を拾いあげる。
そして、そのまま回転した勢いを利用して【ファイアーボール】めがけて石を投げた。
嘘だろ……。
空中に浮いてる不安定な状態から、正確に【投擲】してきやがった。
しかも変化球で、俺のほうに迫ってくるというおまけ付きだ。
こんなおまけいらない。
変化球を躱すのに精一杯で、裸ゴブにとどめを刺しに行くことができなかった。
その間に裸ゴブはすでに起き上がっている。
もちろん手に石を握って。
どこまでも俺の想像を超えてきやがる。
だが、こんなところで負ける気はねえぞ。
第三十話のタイトルと裸ゴブの称号のところのエースストライカーを、エースピッチャーに変えました。
エースストライカーはサッカーのほうでしたね。眠くて頭があまり働いていないときに書いたので、エースストライカーのことをストライクを次々ととっていく投手のことだと勘違いしてました。





