魔法瓶 I
殿下から承った開演の儀で行う魔法儀礼。
(どうしよう⋯⋯どうしようっ?!やると決めたのは良い。だけど、何やろう?!)
春季に行われる伝統祭まで、残り七日。
ユフィーアは、四六時中どんな演出をするか寝る間も惜しんで考えていた。
着々と伝統祭当日に進むもイメージが浮かばない。
必修科目の作法を学び、魔術で遊び、授業後は伝統祭で使用する物の搬入運搬、設計設置。
普段なら、何かをやっていてもぽわぁぁと浮かんでくる魔術のイメージが今は全く浮かんでこない。
イメージという名のシャボン玉が膨れては割れ、膨れては割れを繰り返すこと早三日。
未だにやるの事が決まって居ないユフィーアは⋯⋯考えを放棄した。
(もぉいいや!考えても分かんないしとりあえず光魔術で星屑でも散りばめればいいでしょ!)
殿下からの頼み事云々はどこへ行ったんやらと言いたくなるが、これを考えているのはこんなだが一応、他国からは創造主と恐れられている色彩"白銀の魔女"だ。
軽く魔術を使うだけでも、上級魔術師に匹敵する彼女ならまぁ、上手くやってくれるだろう。
⋯⋯そう信じたい。
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伝統祭前日。
伝統祭の準備で疲労した体を癒そうとユフィーアが寮へ足を運んでいると、
「おーい、ユフィーア!ん?うわっ、あ、ころ⋯⋯ふぅ⋯⋯へへ、ありがとねっ!」
「大丈夫?メルレス⋯⋯?」
慌ただしくも、パタパタとユフィーアの元へ駆けて来たのは、ユフィーアの数少ない友達、メルレスだ。
「あのさ、ユフィーア!一緒に魔法瓶作らない?!」
「え?⋯⋯作る!もちろん作る!え、良いの?私もいいの?!」
「もちろんだよ!早く調合しに行こー!」
周りからの視線など気にせず、二人は学園の中央広場でキャッキャと騒ぎ飛び跳ねる。
一人は他国にも恐れられている魔女、もう一人は名家、ドライブ侯爵家の御子息。
この二人は恥じらいを知らないのか、そう言いたげな梟は中央広場を天から覆う程の大樹に身を潜め止まっている。
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第三魔法学室、通称調合室へと着いたユフィーアとメルレスは既に準備されている調合機の前へ座る。
調合機には沢山の魔法陣が輝きを放っており、神々しくも禍々しい雰囲気を醸し出していた。
「実に素晴らしい調合機だな!えぇーと、作成者は⋯⋯ゆ、ユフィーア!見てこれ!」
メルレスの指さす方へ目をやると、そこには作成者の名前が刻まれていた。
ー ミラン・シャリーフ ー
この名が刻まれている魔道具は全て、国のお偉い様方も重宝していると言われている。
理由は単純、どんな魔道具よりも性能が圧倒的に良いから。
なんたって、ユフィーアと同じ魔女、色彩"紺青の魔女ミラン・シャリーフが手掛けた魔道具なのだから。
「ミラン・シャリーフが手掛けた魔道具がこの学園にあるなんて⋯⋯!僕はなんて幸せな場所に来てしまったんだろう⋯⋯」
「あぁ⋯⋯なんて素晴らしい⋯⋯」と、魔術の世界に入り込んでいるメルレスを他所にユフィーアは早速、魔法瓶を作り始めた。




