必然の出会い
地面に伏せていても殺気に満ちていました。殺気を向けられていない私でも怖じ気付いてしまうほどの。
「冥界流」
冥界流なんて聞いたことがない流派。思わず私は顔を上げました。そこには刀を横に一線するレイハさんの後ろ姿が見えます。
「彼岸花」
一線した後に衝撃で土煙が舞い、それはまさに白い彼岸花のような美しさでした。思わず見惚れるほどに。
「れ、レイハさん!怪我はないですか!?」
はっとして、私がガバッと起き、レイハさんに傷がないか確かめました。
「ないから、大丈夫。」
「そうですか。それであの人たちは?レイハさんに吹き飛ばされたのはわかりましたが、早すぎてどうなったかまではわからなかったのですが。まさか、殺してませんよね!?」
素人の私にとってもあの技は匠の一撃。殺しても不思議ではない。
「峰打ちだ。本来の技は彼岸花らしく、血が吹き出して、危険だ。」
「ふ、吹き出す…、危険…。」
私は顔を青ざめて、言葉を復唱する。そして、男たちが飛んでいった方向に視線を向けて、男たちが気絶しているのがわかった。ほっと息を吐く。
「さて、俺は今から旅支度して、あいつらが起きる前にここを出るけど、聖女様はどうしますか?」
その言葉で私に気を使ってくれているのがわかった。1日会っただけで信用するのが危険なことだとはわかっている。それをわかった上で私に提案してくれている。暗に「護衛としてついていてもいいか。」と。
「わかりました。旅のお供にお願いいたします。レイハさん。あと、敬語はなくて大丈夫ですよ。」
この人は優しい。私を手当てしてくれたくらいに人に思いやりがある。
ぐるるるると私のお腹の音が盛大に鳴り響いた。
「ぷ、あはははは。」
「わ笑わないで下さい!朝から何も食べてないんですから!!」
「あはは、ごめんごめん。非常食があるからそれ食べてから旅に出ような。」
「わかりました。」
しかし、その優しさに私の心は重くなる。罪悪感で押し潰されそうになる。私が貴方を騙していることの罪に。
王都の女王の間にて一人の女性がいた。菫色の髪に毒々しい色をした瞳をした女王というより魔女という言葉が似合う雰囲気の妖艶な美貌の女性だ。
「ふーん、合流したか。これからが楽しみよ。どう楽しませてくれるのかしら?」
ニタリとその顔を醜く崩して笑い、呟く。
悪魔と聖女の悲劇の始まりよ。と