表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冥王の刀  作者: 涼
神槍の勇者
31/31

ディーオ

 槍の前に緊張した様子でいる少年の周りでは町の人々がこそこそと話していた。

「あれは誰だ?」

「初めての参加者だな。」

「待て、あの金の髪に青の瞳はもしや。」

 一部、不穏な様子が見て取れて、イーナの耳に小声で話しかける。

「イーナ。」

「はい。」

「退路の準備を頼む。逃げ道を確保したい。」

「わかりました。」

 イーナの植物で壁を作ってもらう準備に入っているところでシリウスとヒメカに話しかけられる。

「師匠、俺は飛べる準備を町外れでしてます。」

「ありがとう、シリウス。」

「わたくしは目眩ましの準備をしますね。」

「あぁ、任せた。ヒメカ。」

 シリウスは人の波に逆らって宿の方向に向かって行き、ヒメカは風下の方向へと移動していた。

「さぁ、神の再来だ。」

 少年が今まさに槍へと手を伸ばした。


 槍は5年も経っているはずなのにまったく錆のない感触が伝わる。それを両手で僕は一気に持ち上げた。

「抜けた。」

「よかったね。」

 触れてわかるのはやはりこれは僕のために作られた物だ。手に馴染む。

「魔女の息子だ!」

「魔女の呪いは息子が叶えてしまった!」

「あの槍はお前の者じゃない!」

 やっぱりこうなったか。誰も僕が父様の子供である可能性を考えない。

「最後くらい、何か言ったら?」

 いつの間にか握りしめていた手を女の子が優しく包んだ。

「これは母様と父様の僕への誕生日の贈り物だ!」

「さぁ、行こう。」

 言ってやった。あぁ、やっと言えた。町のやつらの顔、傑作だった。女の子に引かれている手を握り返して一緒に走る。

「な、何だ!」

「前が見えない!」

「追え!」

「前が見えません!」

 なんか、後ろで町のやつらが煩いけど、もうどうでもいいや。もう関係のない人たちだ。

 女の子が止まった。そこにいたのはさっき、案内した男の人と待っていた女の人たち。その後ろには大きな竜がいた。

「さぁ、こっちだ。」

「遅い。」

「え、うわぁぁぁぁ。」

 竜の背中に男の人によって乗せられた。

「暴れないでよ!」

 女の子に言われて大人しく震えながら竜にしがみつく。

「ざまぁ、見ろ!」

「威勢だけはいいな。」

 これぐらいはいいだろ。


「怖い怖い怖い怖い怖い。」

 あの少年は震えながらもしっかりとしがみついていた。

「男の子なのに情けないわね。」

「まぁまぁ。」

 プンスコと呆れているナチュネをヒメカが抑えていた。

「え~っと、あなたの名前は?」

 そう訊くイーナに少年は、

 

「ディーオだぁぁっぁぁぁ!」

「締まりが無いな。」


 行きなさい。

 僕たちのかわいい息子よ。

 君の行く道に幸あらんことを。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ