10000ポイント突破記念。ちょっとだけ酔いながら。
ある時、私は文字が読めなかった。文章が理解できなかった。そんな自分が嫌で、嫌で嫌で嫌でたまらなくて、私は筆を執った。
全身全霊雨あられ。言の葉をばらまき、雨後の筍のように育った作品たちも、また、何かの模倣に過ぎなかった。
それでも発表する必要があった。安いプライドを売り払い、吹けば飛ぶような誇りを賭ける。競りに出せるものは全部出した。ポイントが付かないなら、次を書いた。
書いて、書いて、書きまくって。一番ウケがいいのは自分の身体の切り売りだと気づく。
何もないところから生み出された小説の書き方入門は、どうやら人の心に染み込むインクのようで――
私はそのエッセイを誇りに思いつつも、それが生み出したものと破壊したもの、どちらが多いのだろうかと、人並みに悩めるくらいには、まあまあ饒舌になることができていた。
それからそれから。本物との邂逅を幾度となく経て、本物とまがいものを見分けられるかのように錯覚。
しかしそれが過ちだと自覚できる程度に成長して。気付く。
私はまだあの時のままだと。何かを模倣するコピーキャットでしかないのだと。天衣無縫に言の葉を紡ぐ、言語魔術師にはまだ成れていないのだと。
そして己の心の内に潜り問うてみれば。なんのことはない。
私はただの破壊の王。撃鉄の王に憧れて、(勇気が無くて)引くこともできないおもちゃの銃を振りかざす、中二病が完治していないいち作者に過ぎないのだと。
私は、まだ青い。
だがそれもまた、自覚しさえすれば、武器の一つだ。武器があるうちは戦える。戦えば戦果が増える。戦果が増えれば蓄えられる。蓄えられれば出費もできる。さあ出し惜しみは無しだ。ありったけを全弾、カンバンまでくらえ。
さて、ここまで読んでようやく君も気づいたことだろう。
作者は今酔っている。
10000ポイントという美酒に酔っているのだ。
ありがとう。ありがとう。そしてまた、ありがとう。万雷の拍手を。無限の喝采を。
そしてそれは、始まりに過ぎないということも、作者は知っている。上には上が、天井無しの天上がある。
ジャンル別ランキングに名を連ね、ポイントを地道に得ていった自分が、到底到達できない高みに至った作品たち。中には出版、アニメ化された作品とかもあるらしい。なにそれこわい。
羨むは罪。なぜならば別の世界の出来事に思いを馳せるということは、現実を直視することを怠っているという意味に他ならないのだから。
ある時、私は文字が読めなかった。文章が理解できなかった。病気だったのだ。でも、今なら出来る。
言の葉に込められた意味を、自分は押し広げ、読解することができる。心に生じた躍動を、クオリアを、別の言葉に翻訳して、誰かに伝えることができる。
それは作者の特権だ。一度削られた力だからこそよくわかる。それは人間が誰しも持っている、作者という名の創造特権。反省文やら読書感想文やらでクソみたいに萎縮させられている、物を書くという能力だ。
君は削られる前にそれに気付ける。気付いてくれると嬉しい。きっと気付いてくれると信じる。ていうか気付いてくれ!
作者はルールを説明したかもしれない。作者が小説が小説足り得るために必要だと思う、文章的な作法とかをだ。
だがあえて言う。
ルール違反を犯したことを恥じるな。自らが書き上げた傑作を消すな。どうか、どうか作品を殺すな。君は、そのままに、作者として傲慢であれ。
プライドを売り払い、誇りを賭けろ。賭けのレートを引き上げろ。
作品が良ければポイントが付くだろう。運が良ければ読者が付くだろう。
あるいは経験値不足のクソザコナメクジならポイントはつかないだろう。
ポイントがどうなるかは公開しなければ分からないし、ポイントの果ては公開し続けなければ分からない。
だからこのエッセイを読んだら、一緒に走り出そう。ポイントの果てを目指そう。作者は10000ポイント先からスタートしますが、大丈夫。君ならきっと皆をごぼう抜きにできる。
君が君の創造特権を信じる限り、君の筆は、君に無限の力をくれるのだから。
2017/8/7 夏。ちょっとだけ酔いながら




