第73話 決着
安堵の空気が広がりかけたその瞬間、光の柱の中心から、これまでにない、凄まじい力の奔流が、噴き上がった。
『……認めましょう。あなたの理解、そして、あなたを支える者たちの想い――それは、確かに、無視できないものでした』
もう一人の管理者の声には、これまでの余裕とは異なる、追い詰められた者特有の、鋭さが滲んでいた。
『ですが、私は、まだ、諦めるつもりはありません』
その言葉と共に、光の柱そのものが、これまでのどの脅威よりも巨大な、実体を伴った姿へと、変貌し始めた。
「来るぞ……!」
イザベラが、鋭く叫んだ。
巨大な光の存在は、まるで、世界そのものを飲み込もうとするかのような、圧倒的な威容で、統合艦隊全体に、その圧力を放ち始めた。
「蓮、まだ戦えるか!」
イザベラの問いに、蓮は、疲労困憊でありながらも、静かに、しかし確かな決意を込めて頷いた。
「はい。ここで、決着をつけます」
蓮は、これまでのすべての理解――風、潮流、世界の法則、そして、これまで出会ってきた、すべての仲間たちとの絆を、静かに、しかし確かに、束ねていった。
「ガイウスさん、獅堂さん!」
「おう!」
「言われるまでもねえ!」
ガイウスと獅堂グレンが、それぞれの剣を構え、巨大な光の存在へと、真っ向から挑みかかった。二人の規格外の剣技が、光の存在の表面を、確かに、切り裂いていく。
「王国海軍、大商会艦隊、私掠船同盟、島嶼連合、全艦、砲撃準備!」
イザベラの号令のもと、統合艦隊のすべての船が、蓮によって強化された砲門を、一斉に、光の存在へと向けた。
「導きの目、最適な攻撃タイミングを!」
強化された羅針盤が、すべての艦船の攻撃タイミングを、瞬時に、そして完璧に、同期させていく。
「撃て!」
イザベラの号令と共に、統合艦隊のすべての砲が、一斉に火を吹いた。放たれた無数の砲弾が、光の存在の中心へと、正確に、そして力強く、吸い込まれていった。
『ぐ……ぅ……!』
もう一人の管理者の声に、初めて、明確な苦痛の色が滲んだ。
「今です!」
蓮は、その好機を逃さず、これまでのすべての理解を、一点に集中させた。
――この世界の均衡を、正しい形へと、完全に導き切る力を、俺に与えてくれ。
その願いと共に、蓮を中心とした光が、これまでにない、圧倒的な輝きを放ち、光の存在の中心――その核心部分へと、真っ直ぐに、収束していった。
『……これで、終わり、か』
もう一人の管理者の声が、静かに、しかし確かに、弱まっていった。
『私の理念は、確かに、間違っていたのかもしれません。ですが――』
その声には、これまでにない、ある種の、静かな諦観のようなものが、滲んでいた。
『あなたたちが積み上げてきたものが、本物であることは、認めましょう』
その言葉を最後に、巨大な光の存在は、静かに、しかし確かに、その姿を、収束させていった。
戦いは、こうして、決着を迎えた。統合艦隊の甲板に、静かな、しかし確かな安堵の空気が、広がっていった。
だが、この決着の先には、まだ、蓮たちが向き合うべき、最後の対話が、静かに待ち構えていた。




