表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
航図無限 ~最弱の水夫、ただ《道具超強化》だけで七つの海を制した男~  作者: 伝説の男前
第六部:大渦潮編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
65/87

第59話 静寂の中心

構造物の最深部は、これまでの喧騒や衝撃が嘘のように、完全な静寂に包まれていた。


「ここが……」


白鯨号を降り、蓮たちは、静かにその空間に足を踏み入れた。周囲には、これまで見たどの技術とも異なる、幾何学的な光の紋様が、静かに明滅している。


「――ようこそ」


その声は、どこからともなく、しかし確かに、空間全体に響き渡った。


イザベラが、素早く剣に手をかける。だが、その声には、敵意も、脅威も、感じられなかった。ただ、深く、静かな、何かを見守るような響きがあった。


「あなたは……」


蓮が問いかけると、空間の中心に、淡い光の粒子が集まり始めた。やがてそれは、人の姿を思わせる、しかし明確な実体を持たない、不思議な存在へと形作られていった。


『私は、この世界の海洋の均衡を管理する者。あなた方は、私のことを、「海図管理者」と呼ぶことになるでしょう』


その言葉に、蓮の心臓が、大きく跳ねた。


「海図、管理者……」


『天草蓮。あなたが、ずっと抱えてきた違和感の答えを、ここで話す時が来たようです』


蓮は、緊張しながら、静かに頷いた。


「教えてください。俺の力は、一体、何なんですか」


『あなたの持つ、《道具超強化》の力』


海図管理者は、静かに、しかし確かな重みを持って語り始めた。


『それは、本来、私が、この世界の海洋の均衡を保つために有していた、権限の一部――その断片です』


「権限の、断片……」


蓮は、言葉を失った。


『この世界は、常に、一定の均衡の上に成り立っています。力ある者が力を持ちすぎれば、弱き者が踏みにじられる。逆に、均衡が完全に固定化されれば、世界そのものが停滞する』


海図管理者は、静かに続けた。


『私は、長きにわたり、この均衡を、密かに調整し続けてきました。しかし、ある時、私自身の権能にも、限界が見え始めたのです』


「限界、ですか」


『はい。世界の均衡を保つには、単なる管理者の力だけでなく、この世界に生きる者自身が、自らの意志で、その均衡を築き、守っていく力が必要だと、私は判断しました』


蓮は、これまでの旅路――カラベラでの救援、五大海洋勢力の統合、そして世界海洋連邦の建国を、静かに思い返した。


『そこで私は、私の権限の一部を、ひとつの「可能性」として、この世界に流し込みました。それが、あなたが手にした、《道具超強化》の力です』


「なぜ、俺だったんですか」


蓮の問いに、海図管理者は、静かに答えた。


『理由は、単純です。あなたが、誰よりも、道具というものに――そして、この世界の在り方そのものに、深い興味と敬意を持っていたから』


その言葉に、蓮は、幼い頃から積み重ねてきた、道具を眺め、理解しようとしてきた、あの日々を思い出した。


『あなたの理解に基づく力は、単なる暴力ではなく、この世界の均衡を、より良い形へと導く可能性を秘めていました。そして、事実、あなたは、その可能性を、見事に体現してくれました』


海図管理者の声には、静かな、しかし確かな敬意が滲んでいた。


蓮は、これまでの旅路の意味を、改めて、深く噛みしめていた。自分の力は、決して偶然の産物ではなかった。この世界の均衡を守るための、確かな意志のもとに、託されたものだったのだ。


「では、これから、俺はどうすればいいんですか」


蓮の問いに、海図管理者は、静かに、しかし確かな重みを持った言葉で応じた。


『それこそが、今、あなたに問われる、最も重要な選択です』


その言葉と共に、静寂の中心に、これまでとは異なる、新たな緊張感が、静かに満ちていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ