第70話 冒険者たちの顔合わせ①
午後、ソンクラム軍に協力する冒険者たちの顔合わせに行った。
場所は中央神殿前の広場だ。多くの冒険者パーティーが集まっていた。
なんだか個性的な冒険者パーティーが多い気がする。
たとえば……
全員そろって虎髭で、短剣と円盾を持ったパーティー
槍を持った若い女だけのセクシー・パーティー
いかにも『家族で冒険者やってます』って感じの子連れパーティー
それぞれが動物を模した恰好のコスプレ・パーティー
……など。
「ひゃっ、気持ち悪ぅーい! あれってハーレム・パーティーよ」
尼僧ふうの若い冒険者がこっちを指差す。
眉をひそめながらオレたちを見ていた。
え――――――っ!
思わぬところでショックを受けた。
気持ち悪いのか。そんな目で見られているのか。
そりゃ、ここで男はオレだけだけど……。
でもこのパーティーはハーレムなんかじゃないぞ。
ムアンがニヤリとする。
「ねえねえ、ラング。ハーレム・パーティーだって。モテモテのご感想は?」
「うっさいなあ。モテモテなんかじゃないだろ」
似たようなパーティーならば、他にもたくさんあるはずだ。
例えば、きょう最初の食堂で出くわした集団とか。
男はマスターと呼ばれているヤツのみで、他は女ばかりだった。
ヤツらこそハーレム・パーティーではないか!
いや……。
あそこに来ていたメンバーが、あのパーティーの全員だとも限らない。
他にも男メンバーがいるかもしれないし。
だけど男女比が偏ったパーティーなんて、よくあることだろ?
別に珍しくもなんともないはずだ。探せばすぐに見つかるさ。
そう思いながら周囲を探してみる。
ほーら、見つけた! ちゃんとあるじゃないか。
男が十人近くいて、女がたった一人のパーティーだ。
ウチのパーティーよりも男女比の差が激しいじゃないか。
ムアンに笑顔を見せながら、そのパーティーを指差す。
「逆ハーレム・パーティー、みっけたぜ」
「それ別に普通でしょ。女冒険者って数が圧倒的に少ないから」
「えっ?」
そうなのか。逆ハーレム・パーティーはセーフなのか。
かつてのパーティーも女はソードマスターだけだったな。
ここで背後から声。
「そういうことだ、ラング君」
振り向くと、前校長がいた。
慌てて挨拶する。
「こんにちは、校ちょ……」
おっと、もう校長じゃなかったんだ。
前校長が笑う。
「あのスクールが特殊だったんだ。たくさんの女子生徒がいたため、男子一人に女子三人のパーティーも珍しくなかった。だから別に何も感じなかったのだろうね。けれども世間じゃ、そんなパーティーは極めて少数だ。ただラング君の場合、良くも悪くも常に多くの女子に囲まれる――そんな星の下に生まれてきたんだよ。ハハハハ」
「からかわないでくださいよ」
「で、どうだい? 新しいパーティーの感想は」
「はい、サイコーだと思っています」
「そうだろうね。美人ぞろいだから」
「いや、そういう理由じゃなくて……」
三人の兵士がやってきた。
前校長に用事があるようだ。
「大佐、神官長がお呼びです」
「わかった。すぐに行く」
前校長は兵士に『大佐』と呼ばれていた。オレも前校長を大佐と呼ぶべきなのだろうか。せめて『有翼人』退治で集まるときだけでも。
前校長がこっちを向く。
「ここには様々な冒険者や、軍の有望な兵士が集まっている。せっかくだから今後のためにも顔を売り、いい人脈を作っておくといいと思うぞ。わたしは用ができたので失礼するよ」
オレは去っていく前校長に頭をさげた。
「またよろしくお願いします、大佐」
しばらくして、誰かに肩を叩かれた。
「よう!」
そこにいたのはタハーンだった。
「タハーン?」
意外だった。こんなところで再会するとは思わなかった。タハーンは誘拐組織に恨みを持ち、その壊滅に専念するはずではなかったのか。これはどういった風の吹き回しだろう。
タハーンの背後に大男が三人いる。
そのうちの一人は以前に見たことがあるような……。
思いだした。例の地下牢で知り合った大男Aだ。
なんと、タハーンとパーティーを組んでいたのか。
新しいパーティー同士、互いに会釈を交わした。
「まさかタハーンたちがパーティーを組んでたなんて」
「ちょっとワケがあってね」
「ワケ……? 例の組織壊滅と関係でもあるんですか」
「しっ! やめてくれないか。ここでは黙っててほしい」
てことは例の組織壊滅と何か関係があるのだろう。
でも軍に協力することとの繋がりはどういう理由で?
興味深い話だが、教えてはくれないだろう。
「とにかくわかったよ。秘密にしておく」
カーン カーン カーン
鐘が鳴った。中央神殿のすぐ下からだった。
広場の冒険者や兵士たちが神殿に寄っていく。
神殿の階段前には軍の上層部と思われる人々がいた。
冒険者スクールの前校長や現校長、教頭の姿もあった。
神殿の上に何者かが現れる。
どうやらソンクラム軍の将官らしい。続いて神官たちも現れた。
広場に集まった者たちに対し、将官と神官長から挨拶があった。
長い挨拶が終わり、将官が皆に一人の仲間を紹介することになった。
有翼人退治のための秘密兵器だというが……。
秘密兵器ということは、余程のやり手なのだろう。
もちろんその人物は、軍に所属する者だという。
ところが兵士でも冒険者でもないそうだ。
じゃあ、なんなんだ?
ここにはまだ来ていない。
軍の地下道からやってくるとのことだ。
しかし地下道は神殿まで続いていない。
そのため広場の向かいにある建物から顔を出すらしい。
皆が後ろを向く。確かに広場の向かいには大きな建物があった。
民間の倉庫のように思っていたが、軍関係の建物だったとは。
へえ、地下道がその建物に繋がっているのか。
建物の巨大な扉が開く。
いよいよその人物が登場するようだ。
扉の奥から大きな顔が見えた。這うように扉から出てくる。
デカい! いつぞやの巨人だった。
あの巨人はプリーストからタンクと呼ばれていた。
そういえば前校長から聞いてたっけ。軍に飼育されているって。
巨人は立ちあがり、広場に足を踏み入れた。
神殿の方へと歩く。広場の冒険者たちは、道を大きく空けた。
皆、あまりの大きさにあんぐりと口を開けている。
途中で巨人の足が止まった。
オレを発見したのだ。じっと睨んでいる。
「ボクはお前が嫌いだ」
巨人はそう言って、また歩きだした。




