第45話 ソンクラムの冒険者スクール
これから授業を受けに行く。似非パーティーの仲間もいっしょだ。
学年主任がオレたちに同行してくれている。
やってきたところは校内の第二闘技場だ。
この時間は実技の授業だった。
学年主任は出入り口から担当教員を呼んだ。
担当教員が振り返り、クラスメイトたちもこっちを向く。
「「「ラング!」」」
場内にいる皆の声が重なった。生きていたオレに驚愕している。
ちなみに元パーティー仲間はオレのことを『ウィザード』と呼ぶが、その他のクラスメイトたちは普段から本名で呼んでいた。
実技の担当教員は学年主任から話を聞き、オレの仲間が授業見学することに笑顔で許可してくれた。さらにこう言うのだった――。
「見学などと言わず、皆いっしょに授業を受けたらどうだ? 本日限定だがな」
いいのかよ、先生?
ムアンとチャオプは大喜びだ。
担当教員に感謝した。
きょうの実技は『動く土人形』を各パーティーごとで倒していくというものだ。授業で『動く土人形』を相手にするのは、オレにとって初めてのことだ。したがってこの『動く土人形』がどれほど強いのかは、まったくの不明だった。
クラスの生徒数は四十四人。パーティーあたり四人で組んでいるので、十一組のパーティーが存在することになる。きょう授業を受けているパーティーは八組。残りの三組は冒険に出かけているものと思われる。
ちなみにパーティーメンバーの全員が十五歳に達したら、冒険による公欠が認められるため、授業に来ることが少なくなる傾向にある。いまここにない三組はいずれも、全員が十五歳に達したパーティーだ。
きょう授業に出ている八組のうち、すでに三組が『動く土人形』との対戦を終えていた。いまから『動く土人形』と対戦するのは、四組目のパーティーAだ。
パーティーAのリーダーが手をあげる。
「土人形の数、一体でお願いします」
対戦する土人形の数をリクエストできるようだ。
しかし担当教員は首を左右させた。
「一体など認めん。三体に挑戦してみろ」
「はい」
本来はこのとおり、この教員は厳しいのだ。
第二闘技場の床には、たくさんの魔法陣が描かれている。
そのうち光り輝いた魔法陣が三つ。そこから土人形が一体ずつ姿を現した。
「さあ、やってみろ」と担当教員。
パーティーAには回復系魔導の使い手がいない。だからイザというときのため、一人ずつ回復薬を持たされた。ただしそれを使用した場合、土人形に対して敗戦扱いとなるらしい。
パーティーAのメンバーは走りだした。一人が火球魔導をブッ放す。
見事に土人形の一体に命中した。土人形の体から煙があがっていく。
チャオプがオレにそっと耳語する。
「師匠の水流魔導よりは使えるな」
「うるせ」
パーティーAの四人中三人が、一体の土人形のみに攻撃を集中させる。
残りの一人は弓で、他の土人形を牽制するのだった。
一体の土人形に攻撃しているのは、剣、槍、魔導の使い手たちだ。
剣と槍の使い手二人が接近戦に挑み、魔導の使い手が遠距離から支援。
しかし接近戦の二人は、土人形の反撃で徐々に後退を始める。
ついには魔導の使い手のところまで逃げ帰ってきてしまった。
ここでパーティーAが降参。結局、一体も倒せなかった。
呆れる担当教員。
「戦略を考え直せ」
次はパーティーBの番だ。
手をあげるパーティーBのリーダー。
「土人形四体でお願いします」
他の生徒たちから「おおおお」と響めきが起きた。
担当教員までも心配する。
「四体も大丈夫か?」
「はい。ぜひ、やらせてください」
自信満々だ。
このパーティーBのメンバーは、三人が斧を扱う近接攻撃系で、もう一人が回復魔導を得意とする僧侶系。この僧侶系生徒は支援魔法も得意だ。
四つの魔法陣が光る。それぞれから土人形が現われた。
「勝ってこい!」と担当教員。
まずは僧侶系生徒が仲間三人に何かの魔導を施した。
これは加速魔導だろうか? 強化魔導だろうか?
斧使いAが一人で動く。大きな斧を両手であげ、土人形aに振りおろした。
ズシンと大きく響く。なかなかの破壊力だ。
しかし次の攻撃に移らずに、後方へ逃げるのだった。
ゆっくり追いかけてくる土人形a。
その背後に回った斧使いBとCが、同時に斧を振りおろす。
斧使いAもくるりと身を翻し、再度斧を前方から振りおろした。
たまらず土人形aは床に膝をついた。もう一息だ。
しかし土人形bとcも歩いてきた。土人形aのすぐ後ろまで来ている。
斧使いBとCはAをその場に残し、それぞれ土人形bとcに対応した。
僧侶系生徒も走りだした。遅れて歩いている土人形dに対応する。
しかし僧侶系生徒は攻撃を仕掛けるつもりはないようだ。彼はただ逃げ回っているだけだった。しかし土人形は足が遅いため、追いつかれることはなさそうだ。
これが作戦なのは間違いなかろう。土人形dは僧侶系生徒のみをひたすら追い、他の土人形に加勢することはなかった。
弱り切っていた土人形aに、斧使いAがトドメを刺す。
他の生徒たちから歓声があがった。
斧使いAはすぐさま斧使いBのもとに駆けつけた。
ホッとする斧使いB。これで二対一の戦いとなる。
僧侶系生徒はひたすら逃げ続けている。
土人形bが倒された。
斧使いAとBがCに加勢。土人形cも倒す。
最後に全員で土人形dに対応。
とうとう土人形dが倒れた。
パーティーBの勝利。
他の生徒たちから大拍手が湧き起こった。
担当教員も満足そうだ。
次はパーティーCが土人形と対戦する番だ。
その前に、担当教員がオレたちのもとにやってきた。
「ラング、お前のチームはどうだ?」
この似非パーティーのことを言っているは間違いない。
敢えてチームと呼んだのは、正規のパーティーではないからだろう。
「本当に、オレたちもやっていいんですか」
「せっかくだ。やってみなさい」
「ありがとうございます、先生!」
「では何体の土人形に挑戦する?」
オレが口を開く前に、チャオプが言う。
「土人形、三十体!」




