↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

46/100

第46話 チームラングと土人形


 チャオプが土人形三十体を希望すると、他の生徒たちから笑いが起きた。

 担当教員もやれやれといった顔をする。


「一度に三十体なんて、わたしの魔導では制御できないよ、お嬢ちゃん」


 チャオプは外見が幼いため、子供の戯言たわごとだと思われたのだろう。担当教員が『三十体が相手なんて無茶だ』とは言わずに、『制御できないから』と言ったのは、幼い子供に対する優しい配慮だと思われる。


 オレがチャオプに代わって担当教員に尋ねる。


「先生、MAXで何体までなら制御可能ですか」

「やるのなら七、八体くらいまでにしておきなさい」

「ならば八体でお願いします」

「ほっ、本気か?」


 担当教員の前でチャオプの頭に手を置いた。


「コイツ、マジやりますよ。一人でじゅうぶんです。なあ、チャオプ?」

「もちろん」


 担当教員が困ったような顔になる。


「そんなことは言わずに、協力してとりかかりなさい。では八体出そう」


 魔法陣から土人形が八体出てきた。


 嬉しそうなチャオプの顔に変化が生じる。

 さーっと表情がなくなり、髪も肌も真っ白になっていく。

 半龍半人のチャオプ登場だ。


 彼女の口が開く。フッと息を吐いた。

 スノーブレスだ。


 一瞬のうちに勝負がついた。


 担当教員も他の生徒たちも、目の前のことが信じられないようだ。

 皆の表情は固まり、ただ茫然としている。


 オレも驚いたことが一つある。


「あれらの土人形、溶けてないか?」


 半龍半人のチャオプはこう答えた。


「これはいままでのスノーブレスとは別物。超酸息スーパーアシドブレス。レベルがあがったので、より強力な息を吐くことができた」


「てかさ、協力してとりかかれって言われたんだ。一人でやるなよ」

「申し訳ない」


 静まりかえっていた第二闘技場内が次第にガヤガヤしてきた。


 ある生徒が叫ぶ。


「いまの見たかよ。あっと言う間だったぞ。もしかすると『彼ら』より強いんじゃないのか」


 その生徒の言う『彼ら』とは、プリーストたちのことだろう。


 オレは手を伸ばし、ふたたびチャオプの頭に乗せようとした。しかし実際、乗せたのは頭ではなく肩の上だった。半龍化した彼女を子供っぽく扱うのは、どうかと思ったからだ。そして担当教員に言う。


「彼女が三十体と言った意味がわかったと思います」

「いやあ、確かにビックリした。素晴らしい仲間だね」

「まあ、オレだってあのくらい……」


 ここで他の生徒から「嘘つけぇー」の声。


 嘘なものか。いまのオレはここに通っていた頃とは違う。

 ユニコーンだってファイアリザードだって倒してきたんだ。


「やってみるかい?」

「はい、八体でお願いします」

「ではやってみなさい」


 先ほどと同様、魔法陣から八体の土人形が出てきた。

 抱えていたシェムをムアンに預かってもらう。


 ここでは素っ裸にはなれないので、『スーパーハツカネズミ』は不可能。『風ネズミ』がベストだ。『雨ネズミ』ならば手っ取り早く土人形を片付けられるだろうが、範囲をきっちり絞り込ませることに自信がない。一部のネズミが生徒の近くに降ってしまう可能性もあるのだ。もし生徒に当たったら即死は免れない。


 八体の土人形に対し、風ネズミを一体ずつ発射していく。

 その分、時間はかかった。しかしすべての土人形を粉砕。


 大歓声に包まれる。


「師匠、わたしより時間かかったな」


 すでにチャオプは元に戻っていた。

 半龍半人ときの記憶は完璧にあるようだし、変化も驚くほど素早くなった。

 龍化のワザを使いこなしてきている証拠だろう。


「うるせ。雨ネズミだったら瞬時に終わってたんだ」


 オレたちのやりとりに担当教員が笑みを浮かべる。


「ハハハ。二人とも素晴らしかったよ。あとの二人はどうなのかな」


 あとの二人とはムアンとイリガのことだ。


「わたしは冒険者ではありません」とムアン。

「わたしも遠慮する」とイリガ。


 オレはイリガの背中をポンと叩いた。


「せっかく冒険者スクールに来たんだ。いい機会じゃないか。もし一人じゃ無理って言うんなら手を貸すぜ」


「別に……。一人でじゅうぶん」

「OK。じゃ見せてくれ」


 そう言ってから、担当教員に向く。


「あと一人お願いします」


 担当教員がイリガに笑顔を向ける。


「何体やれるかな?」

「五体くらいは……」

「わかった。五体だね」


 魔法陣から五体の土人形が現われる。

 イリガがつぶやく。


「白煙剣」


 手の先から一直線に煙が立った。凄まじいスピードで駆けていく。

 白い煙に包まれた剣の切れ味に、生徒たちは誰もが目を見張るのだった。


 瞬く間に終わってしまった。それぞれ一撃ずつで屠ってきたのだ。

 たぶんオレやチャオプと同様、八体は軽くいけたことだろう。


「なんたることだ」と目を丸くする担当教員。


 彼の話によれば、これまでに一人で土人形を倒せた者は、この学年に三人しかいなかったそうだ。もちろんオレの元パーティー仲間のことだ。プロデビュー後、一度だけスクールに戻ってきて、土人形に挑戦したらしい。


 そのとき倒した土人形はプリーストが六体、ソードマスターも六体、アーチャーが一体だったという。てことはオレたちの完勝だ。





    ◇





 授業が終わるとクラスメイトたちが集まってきた。死んだはずのオレが生きていたことと、オレたちの戦いっぷりのことで、大騒ぎだった。


 元パーティー仲間のことを皆に話した。


 しかし彼らの表情は半信半疑といったところだ。

 いいや、『信』より『疑』の成分の方が多めのようだ。

 ヤツらは悪党でありながら、それなりに人望が厚いのだ。


 次の教室へ向かう。


 途中、廊下にポスターが張られていた。

 見たことのあるポスターだった。


 タイトルは『美しすぎる女剣士』。

 ムシャクシャしてくる。


 イリガの足が止まった。じっとポスターを見ている。


「それ、イリガも知ってるポスターだったか」

「初めて見た。けど……」


 イリガが口ごもる。


「けど、どうした?」

「先日、対戦した。あれはわたしが勝っていた試合だった」


「嘘だ!」と他の生徒からの声。

「嘘ではない」イリガの口元にギュッと力が入る。


「だって彼女は連戦連勝してるんだぞ」

「あれには不正行為があった」

「証拠はあるのかよ!」


 その生徒は感情的になっている。

 きっとクラスメイトがインチキだと言われたため、腹を立てたのだ。


 だがオレはその生徒に言いたい。

 あの連中ならばインチキする。躊躇もなく不正を働くヤツらだ!


 イリガに言う。


「もちろんオレは信じるぜ」


 彼女は小さく首肯した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。