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白い記憶と共犯者  作者: 安川 瞬
異世界転移〜裏切りまで
21/28

白い記憶(転移)

遅れてしまい申し訳ありません。

受験も本格的に始まりましたので……また次の投稿は遅れてしまうかもしれないです……

総合評価がもう少しで50ptです!ありがとうございます!Twitterの方もしていますのでそちらのフォローもしてくださると嬉しいです!次回投稿は2が中旬以内を目標にしたい(低い目標

※訂正部分あり。6年間→4年間

 人間の絶唱が耳を(つんざ)く。聞き取りようによっては、喜んでいるようにも興奮しているようにも発狂しているようにも勇んでいるようにも聞こえ……いやもしかしたらその全てが当てはまるのかもしれない。


 ただ、今挙げた感情は全て予測であり事実かどうかはわからない。理性と本能が僕の中で(せめ)ぎ合う中で、そう理性が判断しただけに過ぎない想像。

 ……それに、その情報は今のこの状況で必要不可欠かと問われればバツであろう。

 先程起きた出来事を包み込むような目の前の事象に、現実逃避をさせられているだけに相違ない。

 今必要な情報は、自分たちの状況の方だろう。


 周りを見てメンバーを把握する。

 凛。愛斗。悠太郎。ついさっきまで一緒にいた3人が僕の近くで座っていた。

 当たり前だけど、みんな呆然としていた。そりゃ、この()()を初めて体験したみんなにとっては到底理解できるものではないだろう。


 それに、僕たちは喧嘩していた。

 その事をみんな引き摺っているのか、協力しなくてはならない状況であるのにみんなは互いの顔を見ることができないでいた。

 故に、共有している情報は少なく、「どこかに瞬間移動した」としかみんなは理解できていないのだ。いや、もしかしたらそれすらも理解できていない可能性がある。


 わかる。分かるのだ。ここがさっきまでいた場所ではないということが。

 でも、理解したくない。理解したくないのだ。人智で理解することのできない現象を。

 だからみんなはこの現象から目を背け、目の前の出来事に逃避しているのだ。


「……………………」


 その中で1人。

 僕だけがこの現象を理解していた。

 端的に言えば「転移」

 もしくはそれに近しい現象が起きたのだと。

 2度目。

 頭にチラつくのはお母さんの死体。

 なぜか今になってカラーで蘇る記憶(悪夢)


「っ……」


 そんな雑念を無理やり振り払い僕はまた思考する。

 此処は何処かーー不明。

 僕の故郷の言語は通じるかーー不明。

 誰に何をすればいいーー不明。

 受動的なまま空気に流されていいのかーー不明。


「ーーーーーーーーーーーーーーーー」


 顔をあげる。

 声が聞こえたのは目の前。

 赤いローブを着た男性が近づいてくる。

 今、その男性が発した言葉を反芻する。


「ーーーがーーーーーーしょう」


 僕の知っている言語とやや違うものの近しい言語。もしかしたら通じるかもしれない。

 希望が僕の胸に湧くと同時に、焦燥感も生まれてしまう。


 時間が無い。

 確かに僕は焦っていた。

 一度冷静になれ。

 分かっている。

 なんで此処に飛ばされた?

 もしかしたら僕1人がみんなを巻き込んだのか?それとも全員が全員転移させられたのか?

 分かったふうに、落ち着いている風に見えて、その実何も理解できていない僕に嫌気がさす。

 分かっていない。近づいてくる。

 落ち着け。一度冷静になれ。何度でも冷静になれ。限界まで時間を行使しろ。

 そう僕は、

 脳に指示を送った。







 ーー瞬間。

 電気が流れる。

 血流が逆流したかと思うほどの痛み。

 脳を刺激する圧迫感。

 頭の中を、脳の中を、情報が駆け巡る。

 全身の毛穴が開いて、空間から情報を吸い取ろうとする。

 ジワリと湧き出る液体ーー汗が水晶となって僕の体を彩る。

 自分の体から出ているもののはずなのに、生理的嫌悪感が僕を包み込んだ。

 逆流しているのは胃も同じで、吐き気が徐々にこみ上げてくる。

 聞こえいた牽制が遠く霞んでいく。ゆっくりにおとなしくなる声。

 伸びきった太い声が嫌に耳朶を震わせる。


「ッ!!」


 手を口に抑えようとしてようやくこの違和感の理由に気づく。


 遅い。


 緩慢とした時間が流れていく。ゆっくりと焦らすように近づいていく手に憤りを隠せなくなる。

 嫌だ。気持ち悪い。(まばた)き一度も満足にできない環境。ポツンと置いていかれた僕の意識。段々吐き気が体に追いつく。そんな感覚に目眩がしてくる。

 周りの人間の唾液の一滴一滴が鮮明にレンズを通してまぶたに焼き付く。

 追いついた吐き気が胃に異変を訴える。

 胃酸が逆流するその様さえも、僕はコマ送りの世界の中で感じ取っていた。


 止まれ!動くな!


 次に僕が願ったことは違った。

 世界にそう命令する。

 もうこれ以上早くなることが不可能だと言うならば、いっそのこと止まれと指図する。

 グニャグニャとした形容し難い球体の僕の心が一気に膨らむ。


 溢れ出る。

 そう確信する。僕は吐く。

 限界を迎えた風船と同じ道を辿ろうとする。

 吐けるなら吐きたい。

 その願いは先ほどの願いと矛盾するものだ。

 止まれ!吐きたい!止まれ!気持ち悪い!止まれ!放ちたい!止まれ!止まれ!止まれ!止まれ!!!


 ……僕の願いは封印されていた。


「もう少し……我が儘になれ、ご主人よ」


 封印はいつか解かれるものである。

 永遠に閉じ込めるなど不可能である。

 何かきっかけさえあれば、いつでも解かれる故にそれは封印なのだ。


 ……その声は僕の頭の中を跳躍して、脳を翻弄する。

 馴染み深い声だった。

 初めて聞く声だった。

 懐かしい響きだった。


 そしてーーー。


「………ぁ……」


 世界は凍結した。


 僕という存在を中心にして、


 世界は今僕の手に握られた。


 封印を解く為に、世界を封印したのだ。


 ……いや、ただ僕の限界を越しただけなのかもしれない。


 すでに風船は破裂していた。

 限界の感情を内包した、

 僕の4年間を内包したその風船は破裂していた。

 僕の望みを吐露しながら、噴き出ていた。


 こうして、僕の願いは成就された。


 欲したのは、時間と空間。そして()()

 その感情が、世界を支配した。


 ……思考する。

 考え、考え、考え、場面を想定する。

 今考える必要があるのは、この空間についてではない。

 余裕のある僕の脳は、焦燥感も何もない澄みきった清流が流れているかのようだった。


 この状況をどう切り抜けるか。


 顔をあげる。


 赤いローブ。唾の一滴。

 何かの絵画のようにその世界は描写を切り取っていた。

 鳴り響く先程の言葉。

 僕の言語。

 思い出す。

 母の顔。口。言葉。死体。場所。部屋。人。空気。親。父。兄弟。異世界。日本。異なる点。共通する点。実験。想像。仮想。記憶。状況。ステップ。



















 ーーーーーーーー何十時間の思考(試行)の末。


 2つ目の願いは叶った。







「瞬くん!!」


「………ぁ……」


 みんなの視線が集まるのがわかる。

 顔が熱い。

 脳が痛い。

 電熱線でも入れてしまったかのようだ。

 心配の目。焦燥の目。

 僕の異常に、みんなの心が一致した。


 未だ、周りの喧騒は(やかま)しい。

 赤いローブの男性は近づいてきて……

 ……いや、この場を動かすのはあの人じゃない。

 僕だ。


 この世界の言語に近しいものを知っているのは僕しかいない。


 望みが成就される直前。僕が唱えたおまじないをもう一度口の中で反芻する。


「お母さんはいつだって僕を見ている……」


 深呼吸をして、

 通じるかわからないあの言語を口にする。


『話を聞いてくれ』


「ーーーーーーーーーー」


 視線が僕に集まる。

 赤いローブの男性の驚愕とした顔。

 してやったり。そう思いながら言葉を続けようとする。


 ……僕の2度目の転移はこうして始まった。

4人の転移の完全確認。

それに伴い、精霊の覚醒も確認。

周辺の精霊使いの乱れを確認。

理由はイーストースに精霊が集まったことによる、魔力の乱れが原因と思われる。

私の力を超える力の確認。

原因は不明。恐らく……

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