母の救出
【謎の研究所 地階下層部】
巨大な人型人工物の前にやってくる
サンタナ:「これは、カナン神の像?」
グレイス:「これがあなたたちの神なの?」
サンタナの父の声:「良く来たな太陽の子。それに我が息子サンタナ」
神の像の頭頂部に立っているのは、でっぷりとしたサンタナの父
サンタナの父:「サンタナ、父を裏切り異教徒をこの神聖なる地に連れてきたことを悲しく思うぞ」
サンタナ:「父上こそ、我がカナン神ではなく太陽の力に民族の命運を託そうとしている。それはカナン神に対しての冒涜です。
それに神はその御姿を形作られることを禁止されているのをご存じのはず」
サンタナの父:「カナン神は言われたではないか。この世界を統べるために我々人間を遣わしたと」
サンタナ:「誰かを踏みにじり、利用せよとは言っておりません。このばかげたものを作るために太陽の子を利用しているのでしょう」
ファロス:「あれは」
神の像の首の辺りの小窓を見つける。ガラスの奥に痩せこけた女性が眠っている
ファロス:「フレア」
ヒューマ:「かあさん?」
目をこらすヒューマ。スーリヤの小屋で見た父と母の肖像画。父と一緒に映っている女性の姿があった。だが、恐ろしく痩せて血の気がない顔色
ファロス:「どうやら、この像を破壊しないかぎりフレアは助けられないとみた」
サンタナ:「破壊?この像を破壊するとおっしゃるか?」
ヒューマ:「母さんを助けるんだ」
両手を広げて一行の前に立ちはだかるサンタナ
サンタナ:「いかなる理由があろうとも、神の姿をしたものを壊そうとする行為を黙って見過ごすわけにはいきません」
ファロス:「それが、不純な動機から出たものであってもか?」
サンタナ:「神の像を造るのに不純な動機などない」
ファロス:「ならば仕方がないな」
力ずくでサンタナをどかそうとする一行
しかし、サンタナは一行の力を無抵抗で受け止める。
ヒザをつくサンタナ
ヒューマ:「なんで、抵抗してこないんだ」
サンタナ:「隣人を愛せよ。それがカナン神の教えです。そこに暴力はない。争いは争いしか生まない」
崩れ落ちるサンタナ
サンタナの父:「サンタナ!なんと言うことだ。サンタナよそなたが融和を試みる隣人の真の姿は、血にまみれた闘争者でしかないのだ。そなたの仇。父が取ってくれようぞ」
神の像が光り始める。
音を立てて神の像が動き始める
ヒューマ:「すごい太陽の力だ」
ファロス:「フレア、今助ける!」
暴れ出す神の像の攻撃に防戦一方になる
ヒューマ:「父さん、どうすればいいんですか?」
ファロス:「どうやら、力の源を立つ必要がありそうだな」
ヒューマ:「どうすれば?」
ファロス:「サーラ、この像の動きを固定してくれ」
サーラはすぐさま今立っている場所に両手を当てた。大地まではとても距離がある。
果たして大地と交信できるかどうか
サーラ:「お願い。私に、私に力を貸して。この暴れている神の足元を封じて」
すると神の像はその場所から動けなくなった。砂漠でやったように、神の像の足を大地ががっしり押さえつけている。
大地に手をつくサーラの額に汗が噴き出る。
ファロス:「よし、グレイス。私とヒューマを、像の首辺りまで持ち上げてくれ」
グレイス:「私一人で?」
ファロス:「誰が君一人でやれと言った?」
グレイスは何を言われたのかを理解し、ジェスから受け取った腕輪にキスをする
グレイス:「ジェス、力を貸して」
両手を広げ、グレイスは上体をしなやかにひねると、大いに回転をした。ちいさな、それでも人を巻き上げるくらいの竜巻ができる
グレイス:「風よ、2人を運んでちょうだい」
グレイスが作り出した竜巻にのるヒューマとファロス。
2人はほどなくして神の像の首のところにしがみつく。ガラス越しに、探し続けた妻の、母の顔が眠っている。
ヒューマ:「母さん・・・」
ファロス:「待っていろ、フレア」
ファロスの反対の手が夕陽のような朱色の光りを発する。
ファロス:「フレア。今、助ける」
パンチでガラスを突き破る。ファロスの体が朱色に光り始める
ヒューマ:「母さん」
光り輝いていた神の像から徐々に光りが消えていく。元の鉄の色に戻っていく。
神の像の全身を覆っていた光りは、首に集中している。ガラスの中の眠っていたフレアに変化が現れた。
骨と皮だけだったフレアが、水をえるように徐々にふっくらと、精気ある顔に戻っていく。
ファロス:「フレア。目を覚ますんだ」
フレアの目がパチリと開く
ファロス:「あなた?」
ファロス:「助けに来たぞ」
神の像の首の周りが大きな音を立てて壊れる。光の玉が落ちてきて、それは妙齢の女性を抱いたファロスの姿に変わった。一枚布の腰ヒモだけの服を着た女性。
フレア:「あなた・・・」
ファロス:「ずいぶん待たせてしまったなフレア」
体力を使い果たしたのか、すっかりスリムになっているファロス。今まで蓄えていたエネルギーを一気に使ったようだった。
フレア:「ずうっと眠っていたようだったから、あっという間だったような気もします」
ヒューマを見つけるフレア
フレア:「ヒューマ、ヒューマなのね」
ヒューマ:「母さん?」
フレア:「ヒューマ。大きくなって」
母の手が息子の顔を包み込む
フレア:「ごめんなさい。あなたを置いて行ってしまったことを。許してヒューマ」
抱き合う親子。動かなくなった神の像の前で親子はただただ抱き合っていた。
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まだ続きます




