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太陽が昇らない国の物語(仮)  作者: 岸田龍庵
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南海の孤島

【太陽の神殿 最深部 玄室】



ヒューマ:「母さんは本当にそこにいるんですか?」

重々しく頷くサンタナ

サンタナ:「遥か南海の孤島にある研究所で幽閉(ゆうへい)されている」

ジェス:「そこで、何をやらされているんだ?」

サンタナ:「人工太陽の研究だ」

一行:「人工太陽?」

サンタナ:「父は、私の父は自然の人間の手でコントロールしようと試みている。たしかに我らがカナン神はこの世界を統べるために、自らの似姿(にすがた)に我々を作って(つか)わした。だが、それは自然を支配しろという意味ではない」

グレイス:「いろいろなことを考えるものね」

ジェス:「炎の民を(だま)して、太陽の民はたぶらかしか、俺はヤダね、こんなことをしているヤツの息子の案内で、その離れ小島にいくなんて!」

押し黙る一行

ヒューマ:「案内してください。サンタナさん」

ジェス:「おい、ヒューマ」

ヒューマ:「行こうよ父さん。母さんを助けに。どこまでも」

息子の言葉に頷くファロス

ジェス:「ケッ、勝手にしろい!」




【太陽の神殿 外周】

 


 一行の中で、距離を置いているジェスとグレイス

ヒューマ:「本当に行ってしまうのかい?」

サーラ:「ねえ、考え直してよジェス」

ジェス:「今回ばっかりは納得できねえ。俺は自分で納得できないことはしない主義だ。悪いなヒューマ。

 お前の事が大好きだが、同じくらいに俺は自分に正直でありたい」

ファロス:「今までヒューマを助けてくれてありがとう」

ジェス:「なあに、助けられたのは俺の方さ」

握手をするファロスとジェス

ジェス:「行くぞグレイス」

動かない、答えないグレイス

ジェス:「どうしたグレイス?」




グレイス:「私は、ヒューマ達と行くわ」

ジェス:「おい、何いってんだよ。お前も一緒に帰るんだよ」

グレイス:「私は、偉業を打ち立てて部族の長になりたいという、あなたの夢を一緒に追いかけてきたの。だからあなたに付いてきた」

ジェス:「グレイス・・・」

グレイス:「あなたは、途中で辞めるの?ジェスイーノ?」

ジェスの本名を呼ばわるグレイス

グレイス:「あなたは、長になりたくないの?私はみんなに認められて長になったあなたと結婚したいの。あなたの言うことはわからなくもないけど、私は行くわ。あなたを族長にしたいもの」

は押し黙っていたが、自分の風のブレスレットを外してグレイスに渡す

ジェス:「風がお前とともにありますように」



【港町ポート・オブ・エリア】

サンタナがチャーターした船で南海の孤島まで向かう、ファロス、ヒューマ、サーラ、ジェス



【チャーター船 甲板】


 舷側(げん)の縁にほほ杖をついているヒューマとサーラ。動力船は圧倒的に早い

 


サーラ:「ねえヒューマ」

ヒューマ:「なに?」

サーラ:「ベルタがいない船ってヘンな感じね」

ヒューマ:「ジェスもいないしね」

サーラ:「ヒューマ、お父さんは?」

ヒューマ:「船酔いだって」


【チャーター船 甲板】

  


揺れる船の上で、ぴくりともしないで瞑想をしているサンタナ


グレイス:「ねえ、話できる?」

すーっと目を開けるサンタナ

サンタナ:「どうしました?」

グレイス:「あなたは、お父さんを裏切るような事をしているけど、平気なの?」

サンタナ:「私は父を裏切るような事はしていませんし、これからもするつもりはありません。父が間違った道を歩んでいるのは確かです。私は、今回の企みを止めさせることによって、父にカナン神に対する一層の信仰を願うつもりです」

グレイス:「あなたたちの神っていうのは、どんな神なの?」

サンタナ:「全知全能のカナン神。神はいずれ平和で満ちた王国に私たちを導いてくださるのです」

グレイス:「カナン神・・・」


【南海の孤島 全景】


360度海に囲まれた孤島



【南海の孤島 謎の研究所】

 

 人の形をした巨大な人工物が鈍い光りを放っている。研究所の中では多くの人間が働いている

 その中に、サンタナの父の姿。相変わらず豪奢(ごうしゃ)な椅子に座っている。そこになにやら耳打ちをする兵士



サンタナの父:「放っておけ。何も抵抗をするな。それが我が神の教え。教えに従いなさい」

走り去る兵士

サンタナの父:「サンタナよ。お前は神の言葉を理解していない。父が直に教えてくれよう」

人型の人工物を仰ぎ見るサンタナの父。

人工物の()()の辺りに、ガラス窓がある。その中では、痩せこけた女性が光りの中で眠っている

読了ありがとうございました。

まだ続きます

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