母と父の秘密
【最果ての村 崖の途中】
夕陽が沈むであろう空を見つめているヒューマ。音もなくやってくるサーラ
ヒューマを後ろから抱きしめるサーラ
サーラ:「ヒューマ・・・悩みがあるんだったら、言って」
険しい顔で押し黙っているヒューマ
崖の上で寄り添う小さな影
【最果ての村 祠】
司祭と向き合っているジェスとグレイス
グレイス:「太陽が昇らなくなった原因はわかっているんですか?」
司祭:「それは、太陽の神殿で語られるべき話なのだろうな。
風の旅人よ。我らが小さき太陽の子の後押しをしてくれたことにはいくら感謝をのべても感謝しきれるものではない」
ジェス:「よしてくれよ」
褒められたり感謝されることに慣れてない様子のジェス
司祭:「これからは我ら太陽の民が導こう。太陽の神殿まで」
【最果ての村 門】
旅支度を調えるヒューマたち一行
最果ての村の門を出るヒューマ
最後に村を振り返って出発する
【ゆりかごの森 広場】
小川が流れる広場。賢者スーリヤは椅子に座って森の動物と語らっている様子
サーラ:「スーリヤおばさん」
ダッシュしてスーリヤに抱きつくサーラ。
スーリヤ:「おやおや、元気いっぱいじゃないか」
サーラ:「ひどいわおばさん」
スーリヤ:「おや、なにがだい?」
サーラ:「なんか知らないうちに私たちを導いてくれていたんでしょ。このネックレスだってそうでしょ?ちょっとは教えてくれても良かったのに」
スーリヤ:「そりゃ教えてあげたかったけど」
サーラ:「けど?」
スーリヤ:「自分が理解できないことは、先のことを教えてもらっても理解できないでしょう?」
遅れてきたヒューマを見つける。
相変わらずの苦悩した顔のヒューマ
スーリヤ:「その顔は、いろいろ理解できたみたいね」
【スーリヤの小屋】
ホタルが飛び交う中、円卓に座る一行とスーリヤ。なぜか部屋が広くなっている。前と同じようにスープの皿が全員の前に置かれている
スーリヤ:「そうかい。ファロスが、こんな近くにいたのかい」
ヒューマ:「教えてくださいスーリヤおばさん。父さんにあったことを」
スーリヤは黙ってしばらくスープを食べている。
スーリヤ:「ヒューマ、お前さんは最果ての村で生まれ育ったと聞かされているんだね」
ヒューマ:「違うんですか?」
スーリヤ:「お前さんはここで生まれたんだ。私が取り上げたんだよヒューマ」
ヒューマ:「本当ですか?」
スーリヤ:「そりゃ、もう元気な赤ん坊でね。覚えていないのは仕方がないね。あまりにも小さいときにファロスにつれられて最果ての村へ行くことになったわけだから」
ヒューマ:「俺は・・・ここで」
スーリヤ:「ファロスと一緒に映っているのは、お前さんのお母さんフレアさ」
ヒューマ:「母さん?」
初めて見る、肖像画の中の母の姿。
ヒューマ:「フレアっていうんですか?それが母さんの名前?」
今のヒューマの記憶の中には母の面影は残っていない。
ヒューマ:「どうして父さんと母さんはここに、スーリヤおばさんのところにいたんですか?」
スーリヤ:「逃げてきたのさ?」
ヒューマ:「逃げる?なにから?誰かに追われていたのですか?」
スーリヤは大きくため息をついた。
スーリヤ:「ここからは、アンタ変わってくれるかね」
司祭を「アンタ」呼ばわりするスーリヤ
アンタ呼ばわりされたが、丁重に礼をする司祭
司祭:「ファロスとフレアを追ったのは我々、太陽の民だ」
一同:「え?」
ヒューマ:「なぜです?」
司祭:「ファロスと、そなたの母フレアは本来は結ばれてはならないさだめにあった。
なぜなら、そなたの母フレアは東の果てに住む太陽の子、すなわち太陽を昇らせる能力を持っているのだ」
ヒューマ:「母さんが?」
ジェス:「なんだって?」
司祭:「我々、太陽の民は西と東に分かれて、能力を絶やさずに来た。
なぜなら片方でもなくなると世界のバランスは崩れてしまうからだ。もし二つの能力を持った人間が一人になってしまえば、その人間を失った時に太陽は死んでしまう。
片方でも残っていれば希望はある。だから二人は結ばれてはならなかったのだ」
ヒューマ:「じゃあ、俺は、じゃあ俺は」
ヒューマの手がぶるぶると震える
ヒューマ:「生まれてきちゃいけない人間じゃないか!」
外に飛び出すヒューマ
サーラ:「ヒューマ!」
ヒューマを追って出て行くサーラ
沈黙に包まれる室内
無言で立ち上がるスーリヤ
スーリヤ:「あとはお前さんがたで話してくれるかね?私にゃちょっと耐えられないよ」
室内に残ったのは司祭、ジェスとグレイス
グレイス:「その結ばれてはいけない二人は、どうして出会うことになったの?」
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まだ続きます




