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太陽が昇らない国の物語(仮)  作者: 岸田龍庵
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太陽の秘密

【大都市サンドピーク郊外 砂漠の天幕】



 夜の砂漠に浮かぶ無数の天幕。天幕の群れの中を歩いていく、体格の良い、長髪、ひげ面の男。

 ボロ布を縫い合わせた衣服姿の男



【大きな天幕の内部】


 一際豪奢(ごうしゃ)な椅子にかける、でっぷりとした体躯(たいく)の王のような人物が報告を受けている。

 報告をしているのは、目の前にひれ伏している男2人

部族の長:「それでは、『炎上石』はもうないというのか?」

コマンダー:「もうしわけありません。だが、すぐに増産の研究をさせますゆえ」

部族の長:「我らが神は慈悲深い。そなたのことはお許しになるだろう。やむを得ん。火の力を使った計画はいったん白紙に戻さなくてはならない」


頭を抱える部族の長

部族の長:「サンタナはまだ見つからないのか?」

左右の者に問う

左右の部下:「はは、全力を持って探しているのですが」

サンタナの声:「わたしなら、ここにいますよ」

大股で天幕に入ってくるサンタナ

部族の長:「おお、サンタナよ。探したぞ。この重要な時にどこでなにをしているのだ」

サンタナ:「父上のほうこそ、相変わらず道にそれたことをされていますね。そんなに炎の力が盗まれたことが大事なのですか?」

部族の長は憮然(ぶぜん)とした顔で息子を見ている





サンタナ:「太陽の力だけではなく、火の力まで。そんなに力を得てどうするのです?」

部族の長:「豊かな水も肥沃(ひよく)な大地も持たない我々に、いったいどうしろというのか?力がなくては、滅ぶのを待つだけだ」

サンタナ:「融和(ゆうわ)があるでしょう。対話による解決の方法もあります」

部族の長:「我らが神、カナン神を受け入れない者に対話などない」

サンタナ:「父上の対話の仕方が間違っているからです。それになんですか、私の姿形をかたって、民衆に戦争をあおるような活動をさせているのはどういうことですか?」

部族の長:「豪奢(ごうしゃ)な服装で説法をしても誰も耳は貸さないよ」

サンタナ:「父上のやっていることは間違っています。私は、私で融和の道を歩みます。だから邪魔をしないでください」

そう言い残すと、天幕を出て行くサンタナ

        

コマンダーの隣の男が、顔に手形のある男が、後を追う。






【最果ての村入口】

 うっすらと雪化粧している、村の門



サーラ:「帰ってきたよ!」

走り出すサーラとヒューマ

ジェス:「あーいう所はまだ子供だな」

グレイス:「お出迎えしてくれる見たいね」

門の向こうに多くの人影がある。村長や司祭、サーラの両親などなど




一足先に村に入るヒューマとサーラ

ヒューマ:「ただいま、村長に司祭様」

村長:「おお、元気そうだなヒューマ。おかえり」

サーラ:「お父さん、お母さん」

両親の胸に飛び込むサーラ

サーラの父:「おかえりサーラ。無事で良かった」

サーラ:「ごめんなさい心配かけて」

サーラの母:「お前が無事なら、お父さんも母さんも、それでいいのよ」


しばし家族の愛に浸(ひた)るサーラ

ヒューマは村の司祭と対峙する


司祭:「ヒューマ。良く無事で帰ってきた。つらい旅だったろう」

ヒューマ:「いろいろあったけど、父さんの居場所も分かったしね」

司祭:「うむ。私たちも先ほど知った」

ヒューマ:「えっ?なんで?」

司祭:「雪の女王という高貴(こうき)なお人から便りが届いてな」

ヒューマ:「便り?」

ヒューマの鼻面を、ひとひらの雪がふわりと舞ってゆく。

ヒューマ:「便り・・・」

司祭:「そなたに、教えなくてはならないことがあるな」


その日はそれぞれ体を癒す




【最果ての村 祠】

 

 狭い場所には司祭、対面にヒューマとサーラ、ジェスとグレイス。ランプがひとつしかない、全体的に暗い

司祭:「いろいろ、疑問はあると思うが、まずはこれを見て欲しい」

司祭は左手をかざす。すると司祭の手から太陽色の光が、やや弱々しい光りが浮き出る。

ヒューマ:「俺と一緒だ」

サーラ:「司祭様もできるんですか?」

司祭の手から太陽色の光が消える

司祭:「私は傷を治すことはできない。だがかつて、この力は太陽の民であれば、誰でもできたのだ。誰でもな。太陽の子ではなく、太陽の民であれば」

ヒューマ:「そうなんですか」


       

司祭:「だが、それ故、各地で紛争(ふんそう)が起こり、太陽の民は時として敵味方に分かれて戦わなくてはならなくなった。同士討ちのようにな。同じ太陽の民でありながら殺し合うという恐ろしい事になってしまったのだ」

サーラ:「なんでそんなことに」

ジェス:「癒し手としてかり出され、またその需要もあったってことか」



司祭:「その通り、風の旅人よ。そして増えすぎた太陽の力は各地に干ばつをもたらし、砂漠を増やしてしまった」

一行:「なんだって?」

ヒューマ:「じゃあ、砂漠の原因を作ったのは、太陽なんですか?」

重々しく頷く司祭

グレイス:「世界のバランスが崩れたのね」

司祭:「それ故、我々の先人は『癒しの技』を封印し、隠遁(いんとん)することを決意した。太陽の運行だけを営むことだけに専念した」

ジェス:「だから守るってことか」

司祭:「また、負の歴史を繰り返してはならない。そして同時に太陽の子を二つの分けたのだ。

 太陽を昇らせる力を持つ、『朝陽の民』と太陽を沈ませる力がある『夕陽の民』。我々は西の果てに住む夕陽の民の末裔(まつえい)ということになる」




ヒューマ:「じゃあ、俺たちの親戚、みたいな人たちが東の果てにいるってことですか?」

司祭:「我々は極力交流を避けた。守り通してゆくためにはそれが最善の方法なのだ。お前だけが知らないわけではない。この村の人でもほとんど知らないのだよ」

ジェス:「俺がお前の親父を見たのは、東の最果ての村だ」

ヒューマは自分の手をじっと見つめる

ヒューマ:「なんか、俺。軽々しく使っていたみたい」

司祭:「そんなことはないヒューマ。病める人を見つければ癒してあげたいという気持ちが起こるのは、当たり前のことだ。お前は、間違ってない」

グレイス:「間違っているのは力を悪用したり乱用することよ」

読了ありがとうございました。

まだ続きます

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