女王の贈り物
【雪の女王の城】
鏡のような湖に、静かにたたずむ壮麗な居城
【雪の女王の城 応接間】
豪華な調度品で埋め尽くされた、極限まで贅を尽くした応接間。
上座の氷の椅子にかける、今日も一層美しい、雪の女王ユーベ。
対面にヒューマとサーラ、ジェスにグレイス、そしてベルタ
赤く燃えるような『炎上石』を渡すヒューマ
ユーベは『炎上石』のイヤリングを手に取ると、つまらなそうに一瞥し、デコピンを一閃。
すると『炎上石』は一瞬でカチンコチンに凍り付き、彼女のコレクションのひとつに収まった。
ジェス:「身につけるんじゃなかったのかよ?」
ユーベ:「私より美しい宝石なんて、やっぱりありゃしないんだよ。そんなものつけられっかい!」
呆気にとられるが、なんとなく納得する一行
ユーベ:「さて、太陽の子を探せば良かったんだよね」
ユーベは足下から無骨なタライを取り出すと、手をかざして雪を降らせる。すぐさま雪でいっぱいになるタライ
ユーベ:「約束はちゃんと守るよ。私にとっちゃ『炎上石』が手元にあるのはいいことだからね」
タライの中に手を突っ込むユーベ
ヒューマ:「どういうことです?」
ユーベ:「最近は暑くてね。少しでも火の力を弱くしておかないと」
ベルタ:「このところ、火の勢いが強くなっている。それが、この雪山にも影響があるということ?」
ユーベ:「さすが、流水の聖女だね。私たち雪とか氷はちょっとした温度の変化に敏感だからね。そういう意味じゃバランスが崩れたりするのも考えもんだね」
サーラ:「そんなにすごい宝石だったんだ、炎上石って」
びっくりしてヒューマと顔を見合わせるサーラ
ユーベ:「寒い国がなくなったら、あんたたちも大変なことになるんだよ。大地は水浸しさ」
タライの中でできていたのは、雪のジオラマ。細部まで表現されているジオラマ。喋りながら作ったとは思えない巧緻な作り
サーラ:「すごいきれい」
ユーベ:「手がかじかんじゃったよ。太陽の子はここ」
指さしたのはジオラマの端っこにある階段型ピラミッド
ユーベ:「太陽の神殿。かすかに熱がでているみたい」
ヒューマ:「太陽の・・・神殿?」
ユーベ:「なんだい、あんた『太陽の子』なのに知らないのかい?」
ジェス:「こいつは、ほとんど知らされずに育ったみたいなんだ」
ユーベ:「まあ、いいさ。朝陽の民に幽閉されているみたいだね」
一行:「朝陽の民?」
ユーベ:「お前さんたちも、何も知らないんだね?」
情けない話だが、頷くしかない一行
ヒューマ:「その、太陽の神殿とか、朝陽の民っていうのは?」
ヒューマの問いに、チッチッチッと指を立てるユーベ
ユーベ:「それをお前さんたちに教えるのは私の役目じゃないんだよ。いったん、村に戻って村長なり司祭なりに、キチンとしたことを聞いておくれ」
妙に納得するヒューマ
ユーベ:「みんな、お前さん達のことを心配しているよ」
雪の女王はウインクをする。
【雪の女王の城 湖 艀】
艀で見送りをする雪の女王ユーベ
ジェス:「じゃあ、世話になったな」
ユーベ:「スーリヤに言っておいておくれ。面倒なことはおしつけるなって」
ジェス:「世界のことだぜ姉さん」
ユーベ:「ヒューマ、いいものを見せてあげよう」
ユーベの姿がダイヤモンドダストに包まれる。
サーラ:「すごいキレイ!」
ユーベ:「ダイヤモンドダストさ。空気中の水分が凍り付くと、こんなふうにキラキラするのさ」
ユーベ:「キレイだろう。でもこのキレイな景色は、太陽の光があれば、もっときれいなのさない」
ヒューマ:「オレ頑張るよ。きっと、いや必ず太陽を昇らせてみせる」
ユーベ:「太陽が昇っても、私よりキレイなものはないけどね」
ダイヤモンドダストはすーっと消えて、女王が立っていた所には、遠ざかっていく雪だるまの姿があった。
もそもそと体を揺らしながら小さくなっていく雪だるま。
ジェス:「フッ・・・行こうか」
読了ありがとうございました。
まだ続きます




