表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
太陽が昇らない国の物語(仮)  作者: 岸田龍庵
21/32

海に歌う

【マリア・アズーラ号  甲板】

慌ただしく甲板を走り回る船員たち


ベルタ:「モタモタするな!お前たち」

黒のレザー姿でムチをふるうベルタ

サーラ:「ムチって、あのために使うの?」

ヒューマ:「あの格好じゃないとダメなのかな?」


港を出る、マリア・アズーラ号


【マリア・アズーラ号甲板】



見張りの船員:「船長、追っ手の船です、動力船です。1マイルありません。どんどん縮まっています」

ヒューマ:「もっとスピードでないの?風の力でなんとかならない?」

ジェス:「無茶言うな、そんなに都合良くできてねえ」

考え込むベルタ


【動力船甲板】

猛烈な勢いで舷側(げんそく)の車輪で波を()く動力船



コマンダー:「もっと出力をあげろ!」

ミラン:「早く、早く」

射撃手:「まもなく射程に入ります!」

コマンダー:「よーし、前門砲、発射用意!」




【マリア・アズーラ号甲板】

見張り:「このままだと10分もしないうちに追いつかれます」

大砲の音:「(ヒュ~ウウウウウウ)」       

マリア・アズーラ号の舷側(げんそく)に水柱があがる。横波に揺れるマリア・アズーラ号


見張り:「大砲です!第二弾来ます」

反対側の舷側にあがる水柱。甲板の上を横滑りするヒューマ、ジェス、サーラ、そしてグレイス

ジェス:「こんなんじゃ、そのうちドカンだぜ、ベルタ」

ベルタの姿はどこにもない

ジェス:「ベルタ?どこいった?」

船長室のドア:「(バタン!)」

ヒューマ:「ベ、ベルタ」



黒の女王様ルックから青のドレスに着替えたベルタ。揺れる甲板をモノともせずに静かに舳先に向かう。

ベルタ:「航海長!180度回頭。舳先(へさき)を動力船に向けろ」

ヒューマ:「なんだって?」

航海長:「アイアイサー」

舵輪を回転させる航海長、

舳先を動力船に向けるマリア・アズーラ号



ジェス:「おい、気でも狂ったのか?グレイスなんとかしろよ!」

グレイス:「ここはベルタの船よ。彼女の言うことは絶対よ。それよりジェス、一緒に妹を援護(えんご)して」

ジェス:「援護?」


【動力船甲板】


舳先をこちらに向けるマリア・アズーラ号が見える

コマンダー:「なんだ、観念したか?」

見張り:「司令官。舳先(へさき)にあの水の民の女が立っています」

コマンダー:「狙撃兵(そげきへい)を呼べ、目標は舳先に立つ女だ」


【マリア・アズーラ号  舳先】

舳先に直立不動のベルタ。

そのの両側をグレイスとジェスが構えている。

動力船がどんどん近づいてくる



【動力船甲板】

コマンダー:「撃て!」

火を()く狙撃兵の鉄砲




【マリア・アズーラ号舳先】

ベルタに殺到(さっとう)する鉛の弾。しかし、ひとつもベルタに当たらず、あり得ない弾道で海に落ちていく



【動力船甲板】

狙撃兵:「司令官ひとつも当たりません」

コマンダー:「小賢(こざか)しい、自然の力なんぞに(たよ)ってからに」

ミラン:「司令官、船を狙って船を」

コマンダー:「やかましい!子供なんぞに言われなくても分かっているわ!」

どなられて怯えてしまうミラン




【マリア・アズーラ号舳先】

狙撃兵の銃弾がこなくなったが、依然として砲火(ほうか)にさらされているマリア・アズーラ号

ベルタ:「姉さん、ジェス。ありがとう。もう大丈夫」



両手を末広がりに広げるベルタ

ベルタの口から歌声が流れ出す。清流のような美しい歌声に、美しいメロディライン。

しかし、その声量はとんでもなくデカイ




【動力船甲板】

コマンダー:「歌なんぞうたって何をしているんだ?」


【海上】

海から波が消えて、鏡のようになる。

次の瞬間、波の壁が動力船とマリア・アズーラ号の間に沸き立ち、津波になって動力船に襲いかかる



【動力船甲板】

コマンダー:「なんだあれは!」

マストよりも高い波の壁が迫ってくる


【動力船】  

津波を受けて、舳先が上方向に向いてしまう。

その時に発射された大砲の弾が、そのまま筒に戻って大爆発を起こす。舳先を失って大破し、沈み始める動力船




【マリア・アズーラ号舳先】

歌い終えて、背中から倒れるベルタ

ジェス:「ベルタ!」

受け止めるジェス。気絶している。

グレイス:「航海長。180度回頭。ただちに離脱して!」

航海長:「アイアイサー」




反転して加速するマリア・アズーラ号。

二度目の爆発を起こしてほぼ木っ葉みじんになる動力船

かろうじて板の切れ端に捕まって浮かんでいるミラン

遠ざかるマリア・アズーラ号

読了ありがとうございました。

まだ続きます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ