【陸路編】 大地の乙女
◆陸路編
【大聖堂内 屋根の梁の上】
聖堂の中で、議論をしている大地の司祭、村長、面布の男たち
四つの人影を梁の上から見下ろすヒューマとジェス
ヒューマ:「誰だい、あいつら?」
ジェス:「ラクダの連中だろう」
ヒューマ:「ラクダって?」
ジェス:「サーラを刺した連中の仲間だ」
ヒューマは顔がかなり険しくなる
【大聖堂内】
面布の男:「で、帰還された『大地の乙女』はどちらにいらっしゃるのです?」
司祭:「ちょっとワケがあって地下室で休んでいるが、それが何か関係があるのかね」
面布の男:「協力が得られぬというのであれば、力ずくでも奪い取るまでよ」
ひげ面の男が剣を抜き司祭と村長に斬りかかった。ランプの光りに血の影が飛び散る
【大聖堂内 屋根の梁の上】
ジェス:「おい、ヒューマ降りるぞ」
ヒューマ:「うん」
【大聖堂内】
床にくずおれる村長と司祭
面布の男:「地下室だと言っていたな。お前は確保を急げ」
面布の男の背後に音もなく降りるヒューマとジェス
ジェス:「聖堂の中で、暴力はよくねえんじゃないのかい?」
ギョっとする面布の男。なんでこんな所にこの二人が、というような顔をする。
面布の男:「ほほう、これは手っ取り早い、『大地の乙女』だけではなく『太陽の子』まで手に入るとは、さすが我が全知全能の『カナン神』のお導き」
面布を取る。顔中を覆う手形の火傷があらわになる
ヒューマ:「ああ!」
動揺するヒューマだが、すぐに取り直して
ヒューマ:「もっとヤケドの跡を増やされたいのか!」
ジェス:「随分と怖くなったなヒューマ」
【砂漠地方から来た二人の男を蹴散らすヒューマとジェス】
顔手形の男:「くそ、我が神に従わないことを、後悔するぞ」
逃げ出す砂漠地方の二人
ジェス:「ここに導いてくれた神様に文句でもいうんだな」
斬られた二人に駆け寄るヒューマ。
手が太陽色に光り輝き、傷を治してゆく
ジェスは床に耳を当てて、地下室の気配を探る。サーラの気配を感じ床を叩くと、取っ手が持ち上がった。取っ手をつかんで持ち上げると、地階へと伸びる階段が現れた
ヒューマ:「もう大丈夫ですよ」
司祭:「君は、太陽の子・・・君が治してくれたのか」
頷くヒューマ
ジェス:「ヒューマ、お前がサーラを迎えに行くんだ」
ランプを手渡すジェス
【大聖堂 地下室】
剥き出しの土壁の部屋。一番奥で膝を抱えてうつむいているサーラ。
足下に、大地の法衣、大地のネックレス、それに手をつけてない食事がある
ヒューマの声:「サーラ、サーラ」
顔をあげるサーラ
ヒューマの声:「サーラ、サーラ」
ランプの光と一緒にヒューマの声が近づいてくる。
サーラ:「ヒューマ」
ランプとともに現れるヒューマ
サーラ「ヒューマ」
抱きつくサーラ
ヒューマ:「大丈夫?」
サーラ:「うん」
サーラのお腹が空腹の音を立てる
サーラ:「ちょっとお腹が減っただけ」
食事と一緒に置かれている、大地のネックレス
復活祭の夜店で選んだもので、森の賢者スーリヤにもらったもの
ヒューマ:「外したの?ネックレス」
サーラ:「だって、あれをしていたら大地の乙女になっちゃうんでしょ?」
ヒューマは森の賢者スーリヤからもらった、大地のネックレスを拾い上げてサーラに渡す。
サーラ:「しろって?」
ヒューマ:「大地の乙女でも、太陽の巫女でも、サーラはサーラだろ?太陽の子だって、俺は俺だよ。とっても似合ってるじゃないか」
やや迷うサーラ。しかしヒューマからランプを取り上げて、背を向ける。美しいうなじが見える。
サーラ:「してくれる?」
ジェスの声:「おーい、変なことしてないで、早くあがって来いー」
【大聖堂内】
町の住人と向き合っているヒューマ達
司祭:「大地の力を、世界のために貸して欲しいと。太陽が昇らぬ今となっては、大地のみが世界を支えるのだ、と依頼を受けていたのだ」
サーラ:「そうだったんですか」
司祭:「我々の意見は割れていた。伝統を守り続けるか、それとも新しい道を歩むべきか」
苦悩の色を見せる司祭
サーラ:「あの、私、良くわからないんですけど、司祭様も村長さんもヒューマに助けてもらったんですよね。私もそうなんです。」
突然、胸をはだけるサーラ。ヒューマに助けられた『手形』を見せる
ヒューマ:「おい、サーラ」
ジェス:「見てない見てない」
聖堂内にどよめきが起きる
サーラ:「ヒューマに助けてもらったのは、みんな一緒です。だからみんな大地の子供なんですよ」
微笑むサーラ。大地の女神のような微笑み
サーラ:「司祭様、まだ太陽は昇っていません。まだ世界はおかしいことになっているんです。
私は、大地の乙女かもしれないけれど、私にはまだヒューマを助けるという役目が残っているんです。それを飛び越えて大地の乙女にはなれません。大地だけ良ければそれでいいなんて私は思いません。
太陽も、水も、火も、大地も、風も、月も、星もあって世界は輝くんだと思います。私はヒューマと一緒に行きます」
ぱらぱらと拍手がおこり、それは大きくなっていった。
司祭:「わかったサーラ。我々は伝統を守る、それが自然の流れであり、私たちはそれに従おう」
司祭はサーラに歩み寄ると大きな手を頭に載せた。
司祭:「大地の女神よ。我らが愛しき大地の乙女をお守りください」
大地のネックレスが光り輝く
【砂漠の窓口の港町パールカノン】
ジェス:「買い物なんかしながら港に行こう」
ヒューマ:「港に行って船にでも乗るの?」
ジェス:「水の民に協力をしてもらうことになっている」
サーラ:「水の民?」
ジェス:「そう、砂漠でも水は必要だろ?水の民と一緒だと極力あやしまれずに済むからな」
【港 艀】
青い星が彫り込まれている船 マリア・アズーラ号が停泊している
【マリア・アズーラ号のタラップ】
グレイスとベルタの姉妹がなにやら話し込んでいる
ジェスの声:「グレイス」
グレイス:「あら、遅かったじゃない」
ベルタ:「・・・・」
ヒューマ達を見下ろす尊大な、黒いレザーだらけのベルタ
【港 マリア・アズーラ号が停泊している艀】
グレイス姉妹を見上げるヒューマとサーラ)
サーラ:「グレイス、元気そうだね」
ヒューマ:「ねえ、サーラ?あのグレイスの隣にいる、あの人が水の民なのかなあ」
サーラ:「そう・・・じゃないの?」
ヒューマ:「すごい、格好だね。ムチもってるよ」
タラップを走り降りてくるグレイス
グレイス:「どう?元気にしてた?」
サーラ:「うん、グレイスこそ元気そうね」
ヒューマ:「ねえ、あの人が、水の民なの?」
グレイス:「ベルタ、降りてきてちょうだい」
呼ばれて、尊大かつしずしずと靴音も高く、タラップを降りるベルタ
ヒューマ:「ベルタさんっていうの?」
グレイス:「妹なの」
ヒューマ、サーラ「いもうと?」
ヒューマとサーラの前に到着したベルタ
ベルタ:「あなたたちが太陽の子と大地の乙女ね」
恐縮するヒューマとサーラ
ベルタ:「着替えてくるわね」
タラップを戻るベルタ
ベルタの雰囲気にすっかり圧倒されているヒューマとサーラ
サーラ:「仲良くできるかな?」
読了ありがとうございました。
陸路編まだ続きます。




