表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最終戦線の老兵 ―JZ-65伝説―  作者: ちょいシン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
31/37

第六章・第五節 老兵、帰還命令を受ける

ロンドンでの王室チャリティ試合の余韻冷めやらぬ翌朝。老兵JZ-65のもとへ、在ロンドン日本大使館から一本の封書が届く。差出人は――防衛省。老兵の新たな「帰国命令」が、静かに物語を動かし始める。

 ――ロンドン滞在、最終日。

 王室の茶会から一夜明けた朝、ホテル・クラリッジズのスイートルーム。

 老兵・浦見重蔵は、窓の外の霧を見つめていた。

「霧が晴れるのぉ……そろそろ潮時というやつか」


 その背後で、美羽と翔がスーツケースと格闘している。

「じいじ、これお土産多すぎ! 紅茶何種類買ったの!?」

「うむ、敵国の味は研究せねばならん」

「紅茶は敵じゃない!」翔のツッコミが響く。

 TACTはラップトップを閉じ、深呼吸した。

「朝から在ロンドン日本大使館から連絡がありました」

「む……また茶会の招待か?」

「いいえ、“極秘任務”です」


 TACTが封筒を差し出す。

 表には、政府印章と共に“CONFIDENTIAL”の文字。

 重蔵は静かに封を開いた。

 中には、わずか数行の通達。


【極秘指令】

JZ-65殿。

帰国後、即時“特別調査局”への出頭を命ず。

次期国家防衛プロジェクトに関し、助言を求む。

――防衛省・極秘局長


 翔が目を丸くした。

「じいじ、これって……政府案件!?」

「えっ、eスポーツから国家機密に!?」美羽が叫ぶ。

「いや、もしかして『ゾンパニF』が防衛省公認になるんじゃ……?」TACTが半ば冗談で呟いた。

「まさか……ゾンビ訓練ソフトになるとか?」

「いや、意外とあるかもしれん」重蔵が真顔で頷く。

「やめて! 本当にありそうなのが怖い!」翔が悲鳴を上げた。


 重蔵は書簡を読み終え、深く息をついた。

「どうやら“老兵の休暇”もここまでじゃな」

「え、じいじ、また戦場に?」美羽が心配そうに覗き込む。

「戦場といっても、今度は机上の戦かもしれん。

 だがな、美羽――戦う理由が“人を守るため”なら、老兵は何度でも立つのじゃ」


 その言葉に、TACTが微笑んだ。

「……ですね。僕らも一緒に立ちます」

「おお、頼もしいのぉ」


 翔が荷物を閉めながら笑った。

「帰ったら、じいじ特集またニュースになっちゃうね」

「ふむ。どうせなら“紅茶をすする老兵、帰国す”の見出しがよい」

「絶対バズる!」美羽が吹き出した。


 重蔵は立ち上がり、スーツのボタンを留めた。

 背筋を伸ばし、霧の消えたロンドンの街を見やる。

「戦場は変われど、心は同じ。――帰るぞ、我が祖国へ」


 TACTがスマホを掲げた。

「フライト、予約完了。帰国便は今夜です」

「よし。ではその前に――」

 重蔵は盆栽を手に取り、微笑む。

「こやつにも故郷を見せてやらねばの」


 ロンドンの空を飛び立つ飛行機。

 老兵の旅はまだ終わらない。

 次の戦場は――再び、日本。


 ――その胸に宿るのは、紅茶の香りと、不屈の魂。

紅茶の香りとともに、老兵は再び祖国の地へ。次章・第七章では「帰還」と「再会」の物語が始まります。戦場はもうゲームの中だけではない――それでも、老兵は笑うのです。「まだ、終わりではない」と。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ