大磯 その2
一方でミケタマの二人は、危機に瀕していた。
「どうしよう、本当にまずいわ」
「わ、私、眠くなってきちゃった」
ここで眠ってしまったら、それは死を意味する。
二人でお互いを励ましあっていると、どこからともなく歌が聞こえてきた。
「この歌、何かしら?聞いたことがあるわ」
「これは、童謡『お猿のかごや』だわ」
歌が聞こえる方に目を凝らすと、ぼんやりとした明かりが。
やがて近づいてくると、それが小田原提灯であることがわかった。
「幻を見ているのかしら?お猿さんが小田原提灯を掲げているわ」
「それだけじゃないわ。籠を担いでいるのよ」
自家用スノーモービル・お猿のかごやタイプRXは、二人の前で止まった。
「小田原まで、お二人さん、ご乗車です」
と、猿が言ったのか、誰が言ったのかわからない。
渡りに舟とばかりに、二人は籠に乗り込んだ。
「ふわ〜、助かった!」
「もう、死ぬかと思った!」
中はしっかりと暖房が効いていて暖かい。
革張りのソファは、最高級のリムジンのようだった。
それだけではない。
「お酒があるじゃない!」
「しかも、お燗がしてあるわ」
二人は、凍えた体を温めようと、そこにあったお酒をいただいた。
「あ〜、生き返る〜!」
「天国みた〜い!」
ちょうど、たたみいわしが二畳分もある。つまみには事欠かない。
熱燗のおかげで、すっかり元気を取り戻した二人であった。
小田原に着く頃には、天気もすっかり回復。
東海道は再び爽やかな冬晴れに包まれていた。
一方、またしても計画が失敗した、一茶は。
「な、なんで、なんで自家用スノーモービル・お猿のかごやタイプRXが、勝手に走り出すんだ〜!」
雪に埋もれて悔しがっていた。
すると、雪の上に何かを発見する。
「むう、これは…」
大人の男性のものと思われる、足跡が点々としていた。
「これは、靴じゃないな。草鞋の跡…」
一茶は、昨日、川崎で拾ったものを懐から取り出した。
「この十字手裏剣に煙幕。そして草鞋の足跡か」
意味ありげに、小田原の方向を眺めて、こう呟くのであった。
「小田原城か、なるほどな…」




