89.この世からのお届けもの
「どこへ行くのですか?」
女子高生に化けている青蘭は天城に対して聞いた。それに対して「朝国だ」と一言だけ返した。朝国へ向かうために守護国・森の国の駅へと向かっているだろう。何かあるに違いないと思った青蘭は聞いてみることにした。
「朝国でどこへ向かうのですか?」
すると天城は「草薙さんというお宅だ」とまた一言だけ返す。
「草薙さんですか?なぜ行くことに」
「今日は午後に草薙さんのお宅に用事があったからな」
青蘭は気になる。そのお宅には鳥山海斗という友達がいる。
「じゃあ、俺も着いていってもいいですか?そこにはお孫さんもいますので」
驚いたのか突然その場で止まった。すると「青蘭に一つ聞くけど、その孫の名は?」と天城は聞いた。
「鳥山海斗さんです。次の守護国覇王戦に推薦する人間です。鳥山海斗は妖の力を相当持っています。天城さんが推薦する神坂桜雅さんには負けません」
青蘭の言葉に刺さったのか負けてはいられなくなっていた。天城は「上等だ」と一言だけ返す。
「今から、鳥山海斗に顔を知られるかもしれんがそれも悪くない」
「そうですね。あなたにとっては初対面かもしれませんよ」
青蘭は表情を一つも変えずに言う。それから二人は守護国・森の国にある駅へと向かい、朝国へと向かうのだ。
▼△▼△▼
「じいちゃん…疲れた…」
一方、海斗たちは草薙家の古民家でゆっくりとくつろいでいた。
「お疲れさん。二人とも」
「お疲れ様です」
紅葉は疲れていても穏やかな口調だった。
「海斗、またこの世からの贈り物が来たぞ。黄泉の国へ行く前のお気に入りの物のようだったな」
海斗にそう言ったのは草薙明雄だ。
「見てくるよ」
海斗は二階にある海斗の部屋へと向かった。着くとそれは以前黄泉の国へ行く前、義理の両親内緒でこっそりとブイチューバーである猫宮ひなののアクスタを10個以上を買ってしまった。
(あ、そうだ。以前買ってしまったやつだ…)
海斗が焦っていると鳥という陰陽師の東風谷蓮が海斗の部屋へ入ってきてしまった。
「ここで昼寝でもしたいからお邪魔するよって…」
海斗が隠しているものを蓮が見てしまった。
「海斗、それって」
「あ、ばれたか…」
海斗は仕方なくこの世から届いた10個以上のアクスタについてを教えることにした。
「これは人気ブイチューバーの猫宮ひなのの数十個のアクスタ。僕がこの世にいたときに親に内緒でこっそりと買い続けた結果がこれだ」
それに対して蓮は全く知らなかった。
「猫宮…ひなの…?あれ、名前は知ってるけどそんなに人気だったんだ」
「蓮は、あそっか、蓮は2021でこの世を去った。だから…」
「そうだよ。俺が猫宮ひなのがそんなに話題になってることを全然知らない」
そうだった。まだ蓮がこの世を去った年頃、猫宮ひなのはまだ知名度が上がっていなかった。活動開始が2018年2月22日。ニャンニャンの日。人気が出たのは2023年頃。活動開始から5年後。ある流行っている曲のダンスが可愛いという話題になったことがきっかけで人気になった。
「納得した。あ、ところで蓮の方もこの世から届いたものってある?」
海斗が話を変え、質問に対し「届いたもの…」と蓮は考えるような顔をしながら思い出している。
「届いたものとしても望遠鏡とヘアセット。まあ、髪は整えないとな」
「美意識高っ!よっ、さすがナルシスト!」
海斗が突っ込むと蓮が「ナルシストまでは余計だ」と言い返されてしまう。
「何してるの?二人とも」
海斗の部屋へ入ってきたのは紅葉だった。
「紅葉にはたぶん知らないけど今、この世から届いたものについて話していたんだ」
そう、海斗は以前青蘭に対して推しのブイチューバーの話をしたことがある。青蘭は『推し』『ブイチューバー』という単語がわからなかったのでついて行けなくなった。これは妖怪だからという理由でもある。
「そうなんだ。羨ましいな。何か好きなことがあって、それを大切にしてるって」
紅葉は羨ましそうにしていた。
「紅葉ちゃんは大切にしているものはあるの?」
蓮から聞かれた。
(さすが女子にはすぐ聞くんだな)
海斗は蓮のことをじっと観察した。
「大切にしてるもの…ないかな」
蓮は「へえ」と頷き、「そのうち見つかるといいね」とナンパするような口調で言った。
「やっぱナンパしてるのか、蓮」
海斗は思わず口に出してしまった。
▼△▼△▼
青蘭と天城は守護国・森の国の駅から電車に乗った。乗客はほとんどいなかった。
「誰もいなくて落ち着く」
「本当ですね」
その後、数分二人が黙ると雰囲気が静かになった。
数分後、青蘭は天城に聞きたいことが決まった。話の話題のためでもある。妖怪として何百年も生きている天城でも何かしら大切にしてるものがあるだろうと思った。
「天城さん、守護国覇王戦の話と関係ないことですが何か大切にしてるものってありますか?」
青蘭の質問に天城は「ある」と一言返した。
「いくらでもある。一つはお前が出てた守護国覇王戦のとき青蘭と戦うことができなかったこと。もう一つは俺が人間だった頃、年を取ってない青年とあったことだ。それが今も記憶には残ってる」
ある青年。とは一体誰だろう。年を取ってないということは不老不死だ。妖怪見たいな存在の人がいたとは。
「そうなんですか」
天城は青蘭の共感があまりにも嘘っぽく見えた。感情がない。ただ一言だけ言って終わるだけの会話みたいだ。
「そうだ。じゃあ、話を変えるが青蘭、お前は好きな人はいるか?」
その質問に青蘭は顔を真っ赤にしながら固まってしまった。あまりにも意外だ。
「いません」
「そうか、いないのか」
ただそれだけだった。青蘭に好きな人を聞く妖怪がどこにいるのか。青蘭にとってはよくわからない。
「じゃあ、話を守護国覇王戦の話に戻る」
青蘭はこれでよかったと感じた。まだ乗客は誰もいない。だから聞いたのではないかと考えた。あるいは青蘭に対してちょっかいのために。色々と考えているうちにこんがってきたため考えるのをやめた。
「ああ、よかった」
青蘭は安堵した。天城のことをミステリアスだと思っているが少し知ってよかった。そう感じたのであった。




