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天蓋輪廻の幻想曲  作者: 黒乃羽衣
第二話 穢れなき信仰
13/22

暗躍

    ♮


 南西部都市。

 それは宗教国家を構成する7つの街の中で3番目に大きな都市でもある。

 服飾の都とも呼ばれるように、縫製業や針仕事によって発展した街。

 化粧品やアクセサリーも毎年新作が出され、流行りに乗る女性たちから絶大な支持と人気を誇っている。


 けれど、宗教的な面では大きな問題を抱えていた。

 宗派分裂を起こして街を東西で二分化し、『聖なる教』の原理主義派と福音派が衝突を繰り返す事態に陥っているのだ。

 私は南西部の東側、その最奥に位置するスラムの一画を歩く。

 ここは完全に福音派の管理化にあり、原理主義派の圧力から逃れた人たちが流れ着く場所だった。

 薄汚れた雰囲気の中で、一際異彩を放つ建物が目に入る。

 古い洋館を教会施設に改装したもので、私たち福音派の重要な拠点だ。

 洋館に足を踏み入れると、スラムの雰囲気から一転して綺羅びやかな内装に目を奪われる。

 そしてゆっくりとした足取りで客間へ向かい、扉を開く。


「あ。やっと来た。リリ、遅いよ〜!」


 そんな声をかけられた。

 部屋の中には四人の少女が長いテーブルに並んで座っていて、それぞれ後ろに黒尽くめの男たちを控えさせている。


「すみません。少々回り道をしていました」

 

 自らを含め、五人の少女は福音派に擁立された巫女神官で、すでに神鎧(アンヘル)を発現していた。


 私は彼女たちを一瞥し、名前と役割を心の中で反芻(はんすう)していく。


 改めて、私はリリアナヴェール。

 福音派巫女神官、その筆頭です。

 神鎧(アンヘル)の名は『ソールインフェクト』

 透明なクラゲ型の異形の神鎧(アンヘル)で、戦闘向きではないけど神経毒による幻覚と記憶改変を行うことができる。

 宗教国家の北部都市にいる、現在の巫女神官筆頭アルスメリアをその座から引きずり落とすのを使命としています。


 それでは、テーブルに座っている四人の少女は右から順に。


 貴族のお嬢様で縦ロールの髪型、福音派二位巫女神官ルミナスフィール。

 神鎧(アンヘル)『クラージュヴェリテ』は高貴さの漂う紫色の騎士型。

 貴族の集まる東部都市に実家があるらしい。

 彼女は優雅なしぐさと澄まし顔で紅茶をたしなんでいる。


 次は……テーブルに突っ伏して居眠り中、福音派四位巫女神官ミルファーファ。

 神鎧(アンヘル)『トラムゼント』は百メートル近い巨大なワーム型の異形。

 北西部の四位巫女神官ヒルドアリアと事を構えるはずなんだけど、大丈夫かな……。

 ブランケットと枕を用意する周到さで怠惰極まりません。


 その隣は先ほど私に声をかけた少女で、福音派五位巫女神官アニエスルージュ。

 神鎧(アンヘル)『ネピリムレイヴ』は三十メートルほどの金色の狼だ。

 ここ南西部の巫女神官パフィーリアに代わって担当することになっている。

 パーカー姿の彼女はテーブルに足を乗せていて行儀が悪い。

 というかスカートもタイツすら履いていないじゃないですか。パンツが見えますよ、それ。

 

 そして四人目は年長で大人な美貌を持つ、福音派七位巫女神官イベリスニール。

 神鎧(アンヘル)『ラストラエール』は青い旗持ちの騎士型。

 彼女はなんと現在の七位巫女神官ラクリマリアの補佐官を務めているようです。


「リリアナさん。アニエスの言う通りですよ。わたしもラクリマお姉様の付き添いを放ってまでこの場に来ているのです。早く話を進めましょう」


 ――私はなんだか無性に頭が痛くなり、こめかみに手を添えました。

 すると、アニエスルージュがまた口を開きます。


 「そういえば、リエルっちがまだ来てないんだけど~」


「リエルテンシアは先日の任務からまだ帰還していません。同時に補佐官の死も確認されました」


 福音派三位巫女神官リエルテンシア。

 神鎧(アンヘル)『グリムリンデ』――深紅の人型騎士で耐久、高機動を活かしてパイルバンカーで敵を貫く神鎧(アンヘル)

 南東部に潜伏し、管轄のクランフェリアと成り替わるはずでした。

 しかし、三位巫女神官の神鎧(アンヘル)『バルフート』は攻守に優れ、非常に手強い相手。

 単騎で正面から戦うことは無謀だと言わざるを得ないでしょう。


 と、そこで紅茶を飲んでいたルミナスフィールが反応します。


「まぁ!それは大問題ですわっ!今すぐ安否を確認すべきですっ!万が一に捕らわれの身にでもなって居ようものなら……いやぁああ、わたくしの口からはとても言えませんわぁぁああ!?!?」


 うるさいですね……。

 お嬢様ってこんなに声を張らないといけない決まりでもあるんでしょうか?

 

「うぅうん……もうおなかいっぱいですよお……あ、でもお好み焼きは飲み物ですから、まだいけますぅ……」


 よくわからない寝言を吐くミルファーファさん。

 そろそろ叩き起こしたほうが良いでしょうか。


「ほらほら、あんたたち!リリが困った顔してるよ。いい加減にちゃんと話し合いするよ!」


 そう言ったのは最年少のアニエスルージュ。

 その言葉を待っていましたよ。


「……あたしもはやく終わらせて、ライヴのためのレッスンに行きたいんだから!」


 ……前言撤回します。本当に大丈夫でしょうか、この人たち……。

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