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ガチャでUR種族を当てたら、異世界に飛ばされた  作者: 厠之 花子
序章:王国滅亡編
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閑話:ノワールと愉快な仲間たち

──主に報告書を渡し、拠点へ戻った後に待機。


無事にそれらを終え、拠点へと帰ったノワール。


「「「お帰りなさいませ、ノワール様」」」


扉を開けるとすぐに、主が召喚した魔族のメイド達が一斉に出迎える。

人間では見たことのないような様々な美人が、並んでいる──圧巻する光景、恐らく目にした者は誰もが感嘆の吐息を漏らすだろう。


しかしノワールはそれに見向きもせず、真っ先に自室にへと向かう。小走りで長い廊下を進み、自室に近づくと、そこに待っているであろう歓喜を想像し、ノワールの心が震えた。


───さあ、もうすぐだ。


不思議なことに、帰ってから誰にも他のNPCには会っていない──だが、頭脳派ではないノワールですら、その理由は容易に想像がついた。


あの時、主が最後に少々・・手を加え、この屋敷を完璧・・に仕上げた。

そこで追加された部屋の中には、NPCたちの部屋も・・・・・・・・・含まれている。つまりNPCたちの自室は、主がわざわざその手で作ったという事。


当然、身体中でその部屋を堪能するだろう。⋯⋯少なくとも一日、自室を味わわずして廊下などを歩いていたならば、その忠誠心を疑わざる負えない。


というより、あんなにも強大な力を持ち、それでいて愛らしく聡明で尊大な主に、跪かない者などいない筈だ──いない筈なのだ。


漸く見えてきた自室に、更に足早になるノワール。


NPCたちの部屋が立ち並ぶ、その最初にノワールの自室がある。

自室を目の前にして、ゴクリと喉が鳴った。いつも(主の前以外は)余裕を持つノワールにとって、珍しい期待と緊張。


しかし、それも金で装飾されたドアを開けると、すぐに歓喜へと変わった。


「⋯⋯凄い⋯⋯流石は主様だね」


広々とした部屋を、全体を落ち着いた茶系の色でまとめ、大人びた雰囲気が漂う。所々にある間接照明が、更にその雰囲気を助長していた。

しかも、一人部屋だがバスルームもあり、肌触りが良く高級な素材が使われているであろうベッドも、一人で寝るには結構な大きさだ。


早速革張りのソファーに腰掛けると、しっかりとした素材がノワールの体を包み込んだ。

これら全てが自分の為に設計されたものだと思うと、思わずにやけてしまう。


「主様⋯⋯」


姿を拝見するだけでも緊張する。ましてや、会話となると平常心を保つだけでも大変だ。大変な分、行えた時の喜びは大きい。

しかも今日は、数回も言葉を交わせる事が出来た。これは奇跡に近い。


しかしふと、あるNPC二人の姿が頭にチラつき、心がささくれだった。


「⋯⋯お供なら僕でも出来るのに」


主が決めた事なのでもとより異論はないが、やはり少し妬いてしまう。にやけていたノワールの表情に、影が落ちた。


はあ、とノワールがため息をついたその時、突然廊下の方から怒鳴り声が聞こえてきた。


「ったくよー!ほんと、シュヴァルツはお堅いなー⋯!!それぐらい許してくれたってイイじゃねーか!!」

「駄目です!!⋯⋯主様からの命令無しに、国へ入るなど許すわけにはいきません」

「はぁ?意味わかんないんだけどー!!国に入るな、なんて言われてないし、何でシュヴァルツに従わなきゃダメなワケ?⋯⋯オレが従うのは主様一人だし!!」

「その主様にご迷惑がかかることすら、分からないのですか?」

「何で、主様に会っちゃダメなんだよ。意味分かんねー!」


⋯⋯この会話だけで、ノワールには大体の事情がわかった。というか、誰にでもわかるだろう。

ノワールは重い腰を上げ、扉へと向かう。


───これは止めた方がいいかな。


気乗りはしないが、こうした仲間内のイザコザは今後の仕事に影響が出る。それこそ、主様にご迷惑がかかってしまうかもしれないのだ。


ガチャリ、と扉を開ければ、目に浮かんでいた光景がそこにあった。

イラつきから、普段より低い声が出る。


「⋯⋯何やってるの、二人とも」


対峙する二人──ラーヴァの方は今にも飛びかからんばかりに、シュヴァルツを睨みつけていた。対するシュヴァルツは、冷たい表情で静かにため息をついている。


ノワールに気づいたラーヴァは、聞いてくれよと言わんばかりに、シュヴァルツを指さしながら詰め寄る。


「主様に会いたいだけなのに、シュヴァルツが止めるんだぜ!?信じられなくね?」

「⋯⋯主様の命令も無しに、勝手に動いてはいけません。それと⋯⋯物以外に向けて指をさすのは、止めなさい」

「ほんと色々お堅いヤツだな!!少しの間会ったらすぐ帰るって!!」


そう声を荒らげるラーヴァ。

主には忠実であるが、精神年齢が低く性格が軽い。その上協調性が欠けている為、単独行動もしばしば。

その度に、主が命令という形でコントロールしていたのだ。


しかし、この場に主がいない今。誰がコントロールするというのだろう。一応、NPCのまとめ役であるノワールだが、ラーヴァが素直に従うとは思わない。


かと言って、こんなくだらない・・・・・事で主に連絡は出来ない。

意を決したノワールはわざとらしく、まるで小さい子を諭すように言う。


「ラーヴァ、主様はお忙しい方だから邪魔しちゃダメだよ。勝手に会いに行ったら何かあったのかって、心配されるよ?」


ね?、と可愛らしい笑顔付き。


案の定、そのわざとらしい物言いにカチンと来たようで、ラーヴァは壁を殴る。

ドンッ、という音と同時に、石で出来た壁の表面が剥がれ落ちた。


その破片を見下ろすノワール。⋯⋯主が帰ってくるまでに修理しなければ。


「ああそうか、ノワールもシュヴァルツの味方かよ。てか、ケンカ売ってんの?」

「おおーよく手加減したね?偉い偉い⋯⋯お陰で壁の被害も少ないよ」

「⋯⋯絶対、ケンカ売ってるよな」

「まさか。⋯⋯ただ、仲間内のイザコザは止めた方がいいよ?主様のお叱りを受けちゃうし」

「⋯⋯わかってる。でも」


諦めきれない様子のラーヴァに、いよいよノワールが強行手段にでようとしたその時。


「⋯⋯行って⋯⋯みれば」


静かに呟いたのはヴァイス。いつの間に来たのだろうか、後ろにはおずおずとこちらを覗き込むリリィの姿もあった。

廊下のシャンデリアの光に、動く度に頬の鱗が虹色に反射する。もう一度、ヴァイスが言った。


「行って⋯⋯みれば。ね、ラーヴァ」


すぐさま、シュヴァルツが反応した。声を荒らげて言う。そんな事は許される筈がない。


「ヴァイス!!今、何を」

「そ、そうですよ。そんなに行きたいなら行ってみればいいじゃないですか⋯⋯?」

「リリィ⋯⋯!?」


信じられないような目でリリィとヴァイスを交互に見るシュヴァルツ。

リリィもヴァイスも本来は常識人であるが為に、普段ならば絶対に考えられないような発言だった。


──しかしリリィが続けた発言によって、その疑問はすぐに解決する事となる。


「い、行ってみて⋯⋯主様のご迷惑になると判断した瞬間に、あ、貴方を殺しますから⋯!!」

「⋯⋯ボクも⋯殺る」


(なるほど⋯⋯言葉でわからないなら、身体で体験させようとしているわけか)


納得したノワールだが、ふとある予測に辿り着いた。


───もしかして、ヴァイスもリリィもただ単に主様に会いたいだけなんじゃないか⋯⋯?


しかし、直ぐに首を横に振る。


───いや、そんな下心はない⋯⋯はず。


そう言い切れないあたりどうも悲しくもあるが、ここは彼らを信じるしかないだろう。

意を決したノワールは、呆然としているシュヴァルツに向けて最後の一押しをする。


「⋯⋯シュヴァルツ、三人を行かせてあげれば?心配だったら、シュヴァルツも行けばいいよ。僕は留守番してるから」

「ノワール⋯⋯」


ね、と首を傾けて言えば、渋々と言った感じでシュヴァルツが頷いた。


「⋯⋯仕方ないですね、私が監督としてご一緒しましょう」


結局四人も勝手に拠点から出る事に、ノワールは苦笑した。玄関へと向かう四人を見て、目を細める。


(シュヴァルツもまだまだだなぁ⋯⋯矛盾してるよ。せめて僕だけ・・・は、勝手な行動をしないようにしよっと)


これも主からお褒めの言葉を頂くため──天使のような笑顔で、ノワールは自室の扉を開けた。


───これで主様にご迷惑をかけたら、どうしよっか?


四人の気配が遠ざかっていくのを感じながら、呟く。


「⋯⋯僕だけで十分なのにね」

本編からの登場は可哀想なので、他のNPCにも少しばかりの出番を⋯

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