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どうも、木⋯⋯の妖精です。  作者: 夏巻き
蜂蜜片手に笑うは骸
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ハチミツさん物語。3瓶目

洞窟(どうくつ)から出るとそこは森の中。先程探していたあの場所とあまり変わらない景色。

振り返ると背後にはあのモヤモヤ。やはりここに妖精の町があるのだろう。


「⋯⋯ぴっ!?」


そう思って正面を向いた瞬間、頭の上に小さな衝撃。両手を頭にやりベタッネトッと擬態語のつく何かを手のひらに感じながら、そのまま守りの体制で後ろに下がる。

その直後、今さっき自分がいた場所にボトッと何かが落ちた。


「な、なに⋯⋯ってこれ」


視線の先、目の前の草むらに落ちたそれは、黄色っぽい粘り気のあるもの(粘性流体)。水のように軽くはないらしく、葉を地面に()い付けまとわりついている。

特徴的なのはその香り。粘度の高い液体は()いだことのある甘い香りを放っていた。


頭の上に落ちたものも同じ⋯?と、確認のため両手を頭から離そうとすると一緒に髪も持ち上がる。それは少しの間だけですぐに離れたけど、想像通りの現象だった。

両手を正面に持ってくると、手のひらから香るのはやはり知っている甘い匂い。


先程の現象と匂いと感触、これらの情報から導き出される草と髪にまとわりついたベタベタしたものの正体は⋯


「間違いない。蜂蜜(はちみつ)だ」


導き出されるとか使ってみたけど、かっこつけみたいでなんか痛いな⋯なんて思いながら頭上を見ると、太い(みき)をした木の5mくらいの高さの場所に大きな蜂の巣ができていた。


「ぅわっ⋯でっかあぁ⋯」


あまりの大きさに開いた口が(ふさ)がらない。

あの蜂の巣から蜂蜜が垂れてきたのだろう。今もたらり垂れそうになって⋯あ、垂れた。

というかそもそも蜂の巣ってあんなに大きいんだっけ?大きくなるんだっけ?

そんなことを考えていると、辺りから聞こえる不気味な()


「ギギッギギギギッ」


なんだなんだと音が聞こえる方に目をやると、そこには奴がいた。


「蜂もでかい⋯って、逃げないと⋯⋯いや、妖精(さん)にいる蜂だし友好的⋯?」


蜂の巣、蜂蜜とくれば当然蜂とくる。蜂の巣が大きければ当然蜂も大きい。

体長1mはありそうな蜂達があちこちに見える木の陰から姿を現し、その数を増やしていく。


「ギッギギギギギッ」


背後からも不気味な()と重厚な羽音が聞こえる。

振り向けば1mないくらいの所に蜂蜂蜂。ここに来るのに使った洞窟の前に陣取っている。

正面に現れる蜂達に気を取られているうちに退路を(ふさ)がれていた。まるで逃がさないとでも言うかのように。


「ね、ねえ、なんでアタシを囲むの⋯?あなた達に何かした⋯?」


何もしてないのに周りを囲まれ恐怖を覚え、ブルリと身震い。

妖精族と共生しているのなら意思の疎通(そつう)は可能だろうと一応問いかけてみるが、蜂達は(なお)もブンブンと羽を鳴らし数を増やし近づいてくる。


「待って待ってっ。あなた達に攻撃したり何かするつもりはないのっ。妖精の町に行きたいだけっ」


話が通じていないのか、お尻に付いている針をこちらへ向けますます羽音を重くする。

ゆっくりと近づいてくる様は相手への(あなど)り。そして強者が弱者に見せる余裕そのもの。

死の間際に現れるという死神が、そこの木の陰からひょっこり出てきてもおかしくない場面。


相手は攻撃態勢に入っている。

あちらの武器は自前の針、こちらは武器なし。

今まで妖精山に入ってモンスターとかに遭遇したことがなかったから、今回も大丈夫だろうとナイフ等の刃物は持ってきていなかった。

買ってすらいないので、元々自前の得物なんてないんだけど。


普段冒険の際に使用する相棒は木の棒。そこら辺に落ちている普通の枝だが、今その姿は手の中にはない。

どこかに落としてしまったため、代わりのものをと洞窟を抜けた先で調達しようとしてこの状況。


ここは森。木がたくさんある場所。

木の棒なんて周りにいくつも落ちてるけど、拾うのに目を()らすのは危険だし、拾おうと手足を伸ばすのも危険。

武器の入手が困難極まっている。


なんでそんなに怒っているのか分からないけど、逃げないと殺される。全然友好的じゃない。

来た道を戻る形で後ろの洞窟から逃げたいが、蜂達の体で塞がれ通り抜けられる隙間はない。

つまり逃げ道は正面の森のみ。こちらにも蜂はいるが後方より密度は低い。


怖いことは怖い。胸がバクバクといつもより激しく動いている。

でも絶望はしない。森の中だから木がたくさん生えているし、しゃがめば草が身を隠してくれる。

大丈夫。上手く巻けるようにイメージはできた。適当なところで身を隠してやり過ごす。

己を信じて足を出し⋯ボトリ。


「⋯ひっ!?」


頭に小さな衝撃を感じながら走る。

攻撃による痛みはこんなものではないはずだ。足を動かしながら頭に手をやり確認。触れた髪から感じるのは、またしてもベタッネトッとした感触。これは蜂蜜だ。


「ギギギギッ!」


手を前に持ってきてもやはりそれ。とりあえず攻撃による出血じゃなくてよかったと少し安堵(あんど)していると、後ろから聞こえる()がさらに恐ろしいことに。


「ひぃぃィッ!」


追いつかれないように必死に走る。死にたくないからとにかく走る。前へ前へ足を動かす。

左斜め前の木を左折、直進、右の木を右折、左の木を左折、直進、右斜め前の木を右折、左の木を左折、直進、直進⋯⋯。

進路を変え木と木の間を()って走り、一定の距離ができたところで左折し飛び込み気味のスライディングで草の中へ。


幸いにも蜂達は見失ってくれたみたいで、ブンブン聞こえる羽音は離れた場所から聞こえ、さらに遠ざかっていく。

完全にその音が聞こえなくなったところで、近くの木まで()って進み体を預ける。


そうして息を整え休憩しながら考える。なぜ蜂達は突然現れ攻撃態勢をとったのか、なんで途中から怒りが増したのか。

思い出されるのは直前の出来事。頭に蜂蜜が落ちてきたことと、確認するためそれに触れたこと。

どちらもきっかけは蜂蜜。


「⋯はぁ⋯はぁ⋯⋯ま、まさか⋯盗られたって思ったの⋯?」


考えついた答えはそれ。

はたして蜂達は、頭に蜂蜜が落ちてきた瞬間を見ていたのだろうか。確認のために頭に手をやった瞬間を見ていたのだろうか。手に蜂蜜がついた瞬間から見ていたのではないだろうか。

もしそうだった場合、あの蜂達は自分達がせっせと作った蜂蜜を盗られたと思い、勘違いしたのではないだろうか。

だから怒り追いかけて攻撃してきている。そう考えた。


「勘違いで殺されたくない。早くここから出るか、妖精の町に入らないと⋯⋯ん?」


「あれ?」「およ?」


息を整え終わり考えもまとまったところで、木の陰からひょこっと出てきた生物と目が合う。

15cm程の体躯(たいく)に透き通った羽を持つ、(ミルティッロ)色の髪と目をした2つの小さな存在。


「ど、泥棒だぁァ!」


「侵入者だぁァ!」


「ちょっ、静かにっ!⋯⋯っぅわっ来たアァァぁぁぁっ!?」


「ギギギギギッ!」


叫び声に反応した蜂達がこちらへと向かってくる。


「違う違うってっ!あいつらに説明してよ侵入者じゃな⋯い⋯⋯どこ行ったあぁァァ妖精ええぇェェッ!」


急いで立ち上がって逃げれるようにし、蜂の方を見ながら妖精に説明してもらおうとするが返事がない。

そうだ妖精にも説明しなきゃ意味ないとそちらを向くが、そこに先程までいた存在の姿はなかった。


「なんでこんな目にあわなきゃならないのおぉぉォォォッ!!」


転びそうになりながらまた走る。


「ギギギギギッ!」


「きゃぁっ!来ないでぇっ。いやぁぁぁっ!」


少しの休憩で体力がほんの少しだけ回復したが、足には疲労が溜まったまま。そろそろ限界を迎えそう。


「蜂蜜盗ってないってばあぁぁぁっ!!」


いや、盗ったのか?勝手に頭に垂れてきた蜂蜜を手に取っただけだけど、蜂達にしてみれば触った時点でアウトなのか?

突発的に起こったことで避けようがなかったことだけどだめなのか?


「盗った盗ってないの判定ガバガバすぎるでしょぉがあぁっ!!もうどっちでもいいぃぃっ!」


「ギギギッ!ギギギギッ!!」


「蜂蜜盗っただけじゃんかぁぁァァっ!クソ野郎ォォォッ!」


盗ってないのに盗ったと自供する馬鹿者一人。

はい、アタシです。

もうどうでも良くなった。盗ってないって言っても全然聞いてくれないし。


実は聞こえているが無視しているという線も無きにしも(あら)ず。

しかし言い訳は無用とばかりに殺しにかかってくるあの態度。相手がどんなに弁明しようが彼らにとってそれは些細(ささい)な問題なのだろう。

己の目で見たもののみを事実として(とら)え、それに(もと)づいて体を動かしているように見えた。

〘称号︰草取り人〙

毎日1時間、計10日間、そこら辺に生えている草をむしり続けると獲得できる称号。

獲得すると、草カテゴリーのものを鑑定した際に記載される情報が多くなる。

(例)薬草の場合。葉の直径や重量、ここの部分を使うとポーションのレア度が高くなりやすいとか。

効果はセットしていなくても発動する。


〘職業︰初心者草取り人〙

一次職。庭や畑等の草を()ったり、草むしりをしたりする人。

草を刈ったりむしる行為に補正がつき、素手もしくは草を除去するものを手に持っていると、それの攻撃力が上がる。

除去できる草がそこにあればいいだけなので、引っこ抜いた草を相手の口の中へ入れれば、刈る対象むしる対象としてみなすことができる。

排除できるのが草だけとは限らない。

職業にセットしていると、STR(筋力)VIT(耐久力)DEX(器用さ)へ僅かなステータス補正がかかります。

就職条件:①〈称号︰草取り人〉を獲得していること。②称号(らん)に一度〈称号︰草取り人〉をセットすること。


〘職業︰見習い暇人〙

一次職。一週間、睡眠・食事・入浴以外何もせずにゴロゴロ、ゆっくりとくつろいで過ごしていると就くことができる職業。

空を(なが)めたり手足を投げ出して日向ぼっこしたり、何もしないことをする、ただただボーッと生きる人。

読書したりテレビを見たり誰かと話したりするのはアウト。ボーッとしていないので何かをしたとみなされ、暇人の職業獲得カウントがゼロに戻る。

職業にセットしていると、HP(体力)MP(魔力)LUK(幸運)へ僅かなステータス補正がかかります。

就職条件:一週間、睡眠・食事・入浴以外何もせずに過ごすこと。


〘スキル︰無気力〙

暇人専用職業スキル。

対象一人を決め指を差して発動する。

スキルを受けた相手は30分間無気力状態になる。

意欲や関心が低下し何事にもやる気が出ない、やることなすこと気力が湧かなくなる状態に(おちい)る。

リキャストタイム:24時間

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