助太刀、プレイヤー VS エリアボス。part.6《サキドリ緑》
キャラクターの詳細な設定については、設定集に書いています。
キャラクターのことをもっと知りたいという方は、ぜひ見ていってください。色々書いています。
爆弾を使ってどんどん爆発させたいが、〈交換魔法〉は再使用できるまで60秒かかる。
少し重くて手投げには向かず、待つ必要があるので、それまでの間は暇つぶし⋯とはいかない。皆真剣に亀と戦おうとしている中、一人だけサボれるかぁっと、セルフツッコミ。
この60秒間は、別の攻撃でダメージを稼ぐ。
魔法の袋から、何の変哲もないただのナイフを取り出す。それをそのまま手に握り、亀の後ろ足目掛けて思いっきり投げつける。
「何回見てもブーメラン」
投げたナイフは亀の足に傷をつけて、クルクルとこちらへ戻ってくる。ただ、キャッチしやすいように形を保って戻ってくるわけじゃないので、掴むにはコツがいる。
が、種族で獣人を選択していると、動体視力・身体能力が他の種族よりも高いので、人間を選択したプレイヤーよりはこういったものを掴みやすい。
回転する持ち手がどこに来るか⋯
「はいキャッチ成功」
このブーメランのように戻ってくる現象は、技術でもって起こしているわけじゃない。これは称号によるものだ。
称号名は〈ギルドへようこそ出戻りよ〉。何かイラッとする称号名だが、これを称号欄にセットすると、中確率で自分が投げたものが自分へと返ってくるようになる。
ただしそれには条件があり、投げたものが途中で一度何かに当たらないと返ってこないのだ。説明を見る限り、反動を利用して返ってくるそうなので。
投げれば返ってくる。それだけの称号だが、それだけの有能な効果。使い所が多いので、結構な頻度でこれをつけている。さすがに石を投げた時にはつけていなかったが。戻ってきちゃうから。
そうして手元に戻ってきたナイフをまた投げる。
反動を利用しているなら、肉に当たった時点でズブリと食い込んで戻ってこないはずだが、この亀の肉体は硬い。それ故にこのナイフは浅く傷をつけるのみで弾かれ返ってくる。
「このナイフもそこそこ斬れ味いいんだけどなっと」
返ってきたナイフをキャッチ。また投げようと構えた時、戦闘から離脱していた3人のプレイヤー達が見えた。
回復はちゃんとできたのだろうか。そう思いながらこっちへ来てと手招きをする。亀の情報も欲しかったので。
手招きしてすぐ彼らはそれに気づき、こちらへと駆けてくる。
「あ、来たね。ちゃんと回復できた?」
ここへ来るまでに投げたナイフが返ってきたのでキャッチ。また投げる。少しのダメージでも地道に稼ぐ。
「助けに入ってくださってありがとうございました!」
「本当にありがとうごさいます!」「ありがとうございました!」
「いやまあ、困った時はお互い様って言うしね」
キザな台詞を言ってしまったが、本当に困った時はお互い様だ。私も困った時には誰かに助けてもらうのだし。今回は彼らだっただけのこと。
「お陰様で3人とも体力を回復させることができました」
「それは何より。ああ、それでね、ちょっと聞きたいことがあってさ」
無事回復できたことは知れたので、次に本命の亀についての情報を聞き出す。
そうして亀について話してくれ、分かったことは3つ。この3つとは攻撃の種類である。
1つ目噛みつき攻撃。素早い攻撃ではないが、一度噛まれたら相手が離すまで振り回されたりとやられ放題。これは正面で戦わない限り問題ない。
2つ目斬撃。爪が紫色に光り、当たった相手を切り裂く魔法を飛ばしてくる。前足の指が5本、後ろ足の指が4本なので、どちらかと言うと正面での戦闘の方が被弾しやすいか。
3つ目ビーム。何やら口から出てくるらしい。そんなに長い時間出してはいなかったらしいが、遠距離攻撃のこれも正面戦闘仕様。
横や後ろにいる敵に対する攻撃手段を持っていないのか、はたまた彼らが正面での戦闘しかしていなかったからしてこなかったのか。
「なるほど。まだ攻撃手段は持ってそうだけど、それでも攻撃の内3つを知ることができた。教えてくれてありがとう」
「いえ、そんな⋯」
「サキドリ緑さん、これからどうしたらいいですか?正面で攻撃した方がいいですかね?」
カイトさんがそう聞いてくるが、さてどうしたものか。
私はたけまるに遊撃の役割を与えられただけで、どう行動してとかの指示は何も受けていない。やることの全ては、作戦も何もない自由な行動・攻撃だ。
パーティー組むと大体いつもそんな感じだし。各々自由にって。
「あたしも手探りで攻撃してただけだからなぁ⋯⋯ごめんだけど、あそこにいるたけまるに聞いてもらえる?」
なので、指示を聞きたいのならたけまるの方へどうぞ。
「分かりました」
そう言ってすぐに行こうとしていたので、待ってと声をかけ呼び止める。
よく考えたらここにもう1人、一緒に攻撃してくれる人が欲しい。このままたけまるの所に行って正面戦闘ってことになったら、私一人でこの右側を攻撃しなきゃならなくなる。亀の上で石とか投げてたヴェステルさんも正面に行ってしまっているし。
これは私も正面に行くべき?いやしかし全員が集まってしまっては、亀の攻撃によっては全滅の可能性もある。やはりここで攻撃だ。
「えっと、ミミアは⋯あ、呼び捨てでいい?」
「大丈夫です」
「僕達も呼び捨てて大丈夫です」
「分かった。それで、ミミアは短杖持ってるし魔法使いでいいんだよね?」
「そうです。覚えているのは攻撃の魔法がほとんどです」
魔法の威力等を補正してくれる杖の武器を持っていたので、そうかと思って聞いたらそうだった。
一つ頷くと、ミミアを見てここで一緒に亀へ攻撃しないかと話す。
何個か亀の攻撃手段が分かったので、これから近接戦闘もやっていく。横と後ろは多分安全そうなので。
そうなると、魔法を扱える者がいるといいな。何となくそう思った。
「えっと、分かりました。おにい⋯シュート達もここでですか?」
「いや、一箇所に4人は多いし、何よりこれだけ大きい亀。固まるよりバラけて殴った方が攻撃箇所が多くなっていい。相手もその方がうざったく感じるでしょ」
たけまるが指示する内容によっては、4箇所もしくは3箇所にバラけての攻撃になる。最低値は2。正面とこの場所。
仮に2箇所からの攻撃になったとしても、亀が2箇所同時に対処できるとは思えない。つまり敵からすれば、1箇所対応しているうちに別の所が攻撃され始め、そこを対処しようとすればまた別の場所が攻撃され。色んなところからチクチクチクチクと攻撃されイライラ。さらにそれが続けば続くほどストレスに変わり始める。
バラけての攻撃は精神攻撃も兼ねているわけだ。
普通の攻撃よりも、精神攻撃の方がよく効くって言うしね。
「何となくで決めたけど、ミミアはあたしとここで亀に攻撃してくれるとありがたい」
「はい」
さらにある程度の人数で別れていれば、全員がいっぺんに死ぬこともなくなる。避けられるリスクは回避しておかないと。
あの亀全体攻撃とかないよね?
「じゃあ別れる前にパーティーに招待するから、入ってもらえる?」
そう言ってウィンドウを弄り、3人をパーティーに招待する。今彼らの目の前には承諾するかどうかのウィンドウが出ていることだろう。
それから時間を置かずに、パーティーリストに名前が追加された。
上から順に私、たけまる、ヴェステルさん、シュート、カイト、ミミア。
ここに6人パーティーが結成された。
パーティーへ加入が済むと、いくつか言葉を交わし2人は走って行った。向かうのは敵の正面。たけまるがいる所だ。
「魔法って、バフ系の何か覚えてる?」
2人が走り去るのを見送った後、そう口を開く。あれば便利だし。
「2個くらいです。まだ見習いなのもありますけど、攻撃を中心に覚えていっているので」
「ちなみにその2個は何か聞いてもいい?」
「筋力上昇魔法と、耐久力上昇魔法です」
攻撃力と防御力を上げる魔法か。なるほど。
「そのバフ、今かけてもらっても?」
「あ、はい。攻撃するんですね」
あの少年達が行ってからずっとナイフ攻撃はしてるんだけどね。
まあ遠距離攻撃は一旦中止、そろそろ近接戦闘のお時間だ。バフかけてもらってやれるだけやろう。
亀さん、こっちも見ずに攻撃とかしてこないでね。
「攻撃力アップの方だけお願い」
「分かりました。〈筋力上昇魔法〉っと、オッケーです」
体が赤いオーラに包まれる。この湯気みたいなエフェクト少し邪魔だな。後でメニュー画面かどこか探して見えなく⋯⋯見えなくなったら効果が切れたか分かんないか。
「ありがと。ミミアも適宜攻撃よろしく。自由にやっていいよ。あ、あたしには当てないでね」
「了解です。当てないように攻撃します」
故意のフレンドリーファイアはごめんだから、念の為注意喚起。さすがにないとは思うけどね。いい子そうだし。
「んじゃ、行きますか。〈切断魔法〉」
「はいっ。〈小さな火〉っ」
魔力でできた剣を右手で持って走り、亀に近づく。攻撃目標の後ろ足より少し前の地面を踏み込んで、その勢いのまま、鞘はないが居合のように剣を振り抜く。
「いっっぱつめぇェっ!」
ザシュゥゥッと亀の足を斬りつける。当たった箇所は僅かながらも皮膚が裂け、傷口から血が噴き出す。
それから少しして隣の箇所に、ノロノロと飛んできた小さな火が当たる。爆発などは起きないが、確かに当たった。
見た目はお化けとかによく付属で現れるあの火の玉。
火傷をしているかすら分からない攻撃だが、少しはダメージが入っていることだろう。
「2発メえェッッ!」
そのまま手首を返し、右から左へ斜めに袈裟斬り。更にそこから突き⋯
「ぬわッ!?」
繋げて攻撃しようとしていたのに、足が甲羅の中に引っ込んでしまったので中断させられた。そのまま突いていれば、当たったかもしれなかったけど、攻撃が来るかと思って止まってしまった。
「⋯攻撃じゃなさそうだね」
「そうですね。正面の方で誰かが何かやったのかもしれません」
攻撃を躱せるように距離を取って亀をじっと見ていたが、足をしまったこと以外何の変化も見られなかった。
様子見は済んだ。反撃をしてこないなら、引き続き攻撃だ。
「あ、そういえば⋯」
習得スキル欄を見れば、〈交換魔法〉が使用可能になっていた。
剣で攻撃していた時にはもう使えていたかもしれない。なんてもったいない。
急いで魔法の袋から石を取り出し、甲羅の中に投げ入れる。
「あ、戻ってきた。おっと⋯っキャッチ。ふぅ」
称号を外すのを忘れていた。ステータス画面を呼び出して称号欄にセットしていた〈ギルドへようこそ出戻りよ〉を外す。もう一回石投げだ。
「よっ⋯⋯お、一発いいねぇ」
「お見事ですっ」
さぁて、準備は整った。綺麗に決まるといいなぁ。
ほい、使えるなら使ってしまえ、はい爆弾。
「2個目の爆弾行ってらっしゃい。〈交換魔法〉」
甲羅の中に入った石と交換された火のついた爆弾。あれは1個目よりも大きく、火薬の量も多い。
が、その爆発がたけまる達に届くことはない。そうならないちょうどいいものを投げ込んだのだから。
「ダメージは期待できるけどね。ミミア、ちょっと後ろに下がろっか」
「え、あ、はいっ」
2人で後方へ走る。それからすぐに「ーーっバアァァンッ!!」と後方で爆発。
甲羅の欠片か何かが、背中に当たったのを感じた。
「結構威力あったね」
「で、ですね。びっくりしました」
振り返れば甲羅の隙間から黒煙が上っていた。
亀を鑑定すると、ダメージも結構入ったみたいで大きく削れている。このまま行けばそんなに時間をかけずに倒せそう。
「さ、どんどん攻撃しよ。戻るよ」
ミミアと共に元の位置まで戻り、攻撃を再開。
再びスキルで剣を創り、中の足を突く。
「突き突き突き突き突き突き突き突き突き突き突き突き突きっッッ!!!」
「⋯⋯なんか怖いです⋯。り、〈小さな火〉っ〈小さな火〉っ〈小さな火〉っ〈小さな火〉っ!!」
ミミアは私の異常なまでの突き攻撃に若干引きながらも、自身も真似して魔法を連発した。
その結果その小さな火は、狙っていた後ろ足の甲羅の中に入り、一箇所に連続して当たることになる。小さな火でも火は火。暗くてよく見えないが、大火傷だろう。
「っ!?何っ?!」
突きの連続を一旦やめ、汗を拭おうとしたその時、それは起こった。
突然亀の巨体が震えたかと思うと、中にしまわれていたはずの足が飛び出してきたのだ。しかもだらんと弛緩したような感じで。
「攻撃⋯ではなさそう。一体何が?」
「相手の体力結構減ってるみたいなので、それだったりしませんか?」
「どうだろう⋯。分かんないけど、攻撃チャンスではあるね」
「追い討ちかけちゃいますか?」
「やっちゃおうか」
ミミアのはいっと言う返事を聞きながら、再度剣を構える。
相手の体力もだいぶ削れている。この調子で楽に削らせてちょうだいな。亀さん。
〘称号:ギルドへようこそ出戻りよ〙
一度加入したギルドを脱退し、再度同じギルドに加入することで獲得できる称号。
この称号をセットしていると、中確率で自分が投げたものが自分へと返ってくるようになる。ただし、一度何かの障害物に当たらないと返ってこない。その反動を利用しているため。
〘魔法:筋力上昇魔法〙
魔法師専用職業魔法。
自分または指定した相手に、30秒間僅かに攻撃力が上昇する魔法をかける。
必要魔力:20
〘魔法:耐久力上昇魔法〙
魔法師専用職業魔法。
自分または指定した相手に、30秒間僅かに防御力が上昇する魔法をかける。
必要魔力:20
〘魔法:小さな火〙
魔法師専用職業魔法。
お化けに付属しているような小さな火を生み出す魔法。
火力は弱めだが、重なった火は炎となり激しく燃える。
必要魔力:5




