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理想郷へ  作者: はと
第一章 旅立ち
2/10

2話 パブ『理想郷』

大体2000字ほどなので休憩時間にでもお読み下さい。



ドアを開けると同時に嗅ぎ慣れたビールの香りが鼻を刺激する。


酒盛りはすでに始まっていたらしくパブの中ではベテランも駆け出しも関係なく騒ぎあっていた。


見ると女性の探検家も三、四人だけだがいる。




かけがえのない相手であるアンナはいるが、それでも女性の少ない業界だ。


私は他に女の子がいないのではないかと不安に思っていた。


固まって座っている女探検家のテーブルに着くと先客はやはり安心から顔を綻ばせた。




「はじめまして。探検家のアンナ・ファルケよ。そしてこっちは」


「学者のマリア・ウーフーです。よろしくです」




簡単に自己紹介をすると先客の三人も自己紹介を返してくれた。


話によると一人目のヴァイキングを思わせる高身長のヘレナと名乗るエルフはハンスと同じく登山家で手の指を凍傷で6本失ってもまだ見ぬ高峰を目指して登っているそうだ。


二人目のローザという私と同じくらいの身長で溌剌とした獣人の少女は中東の砂漠に眠る遺跡でトレジャーハンターをしていて何回も命の危機を感じたが、それでもスリルに踊らされ続けているとのこと。


そして三人目のいかにも町娘といった感じの少女はフローラと言って町で優しくしてくれた探検家に憧れ、探検家になったと話してくれた。


フローラは探検家になったはいいものも勝手が分からず困っていたが町で偶然この催しのポスターを見かけ来たとのこと。




それに私とアンナを加えた五人で世間話などしていたところ突然ハンスがやってきた。




「ちょっとマリア君いいかな?」




ハンスは少し興奮しながら私に話しかけた。




「あ、はい。大丈夫ですよ」


「東洋から来たという旅人から聞いた話だけど、これはとても美味しい話になりそうなんだ」


「なんですって?」




反応したのはアンナだ。


アンナは前々から東洋に対して強い憧れを抱いていた。




「どうも東洋の旅人も伝え聞きらしいのだがチベットという地域の山中に遺跡が見つかったらしいんだ。


まだ誰も到達したことのない遺跡だ。憧れんかね?」




素晴らしい!私は内心ガッツポーズをしていた。


隣のアンナは実際に行動に移している。




まだ未踏破の遺跡など探検家にとっては美味しいチーズの乗った鼠取りのようなものだ。


初めてその遺跡を踏破したという名誉を求めて数多の探検家が挑み、そして死んでいった。


しかし探検家には死の危険よりも名誉の方が甘く映るようだ。


アンナもそんな探検家な人間で難所にある遺跡を踏破することを至上の喜びとしている。


私も本業はそんな遺跡の調査をすることなので人のことは言えないが。




しかし私たちの愛する未踏の遺跡が存在するというのだ。


アンナは裸の私を見た時のように「据え膳食わぬは女の恥」とでも言いそうなほど興奮するような情報である。




同じテーブルの女子陣に礼を言い、私とアンナは情報を持っている東洋人の元へ行った。




「Танилцъяはじめまして。探検家のアンナよ」


「Танилцъяはじめまして。同じく学者のマリアです」




「Танилцъя。私たちの国の言葉がわかるんですね。


私は旅人のイシと言います。やはり気になるのは遺跡のことですか?」




イシと名乗った東洋人は蒙古と呼ばれる地域の出身で定住地を求め放浪の旅をしていたが途中で気が変わりこの西洋まで来たと言った。


彼の肌は蒙古地域によく見られるように赤銅色に日焼けをしていて、それは旅の困難さを示しているようにも思えた。


彼はその黒い目を私たちに向け遺跡について、そしてここまでの旅について語りはじめた。







彼はもともと蒙古の遊牧民であったがあるときに酒の勢いで暴力を振るってしまい、家を追い出されたらしい。


最初は途方にくれたイシであったがすぐに地方都市で阿片を買い求め密輸の旅を始める。


そして西の地で阿片を売り捌きそれを軍資金としてこの西洋まで来たというのだ。




そして肝心の遺跡についてだが伝え聞きの伝え聞きらしく確実な情報ではないと前置きした上で話してくれた。


それはつい去年に発見されたらしく東洋の旅人の間では神殿のようだと噂されている。


最初に発見したのは『世界の屋根山脈』という山脈を山越えしていた行商人で雪解けの時期に遠くにキラリと光るものが見え、望遠鏡で覗いてみると西洋の神殿のような建物が見えたという。




それが探検家やトレジャーハンターの耳に届くとすぐ攻略隊が結成され高度六千メートルとも七千メートルとも言われる遺跡までアタックしていったが、攻略隊を望遠鏡で追っていた人が言うには五千五百メートルあたりでふっといなくなり後日ミイラとなった状態で攻略隊全員が発見された。




その後すぐさま結成された第二次攻略隊、第三次攻略隊も行ったきり戻って来なかった。




発見された遺体は皆幸せそうに微笑んだ状態で見つかったためその遺跡は『理想郷シャングリ・ラ』と呼ばれるようになったという。







私はその話を聞いて全身に鳥肌がたったように感じた。


行く者を拒む大神殿。


そんなものに憧れないわけがないだろう。

余談ですが中国にシャングリラ(香格里拉)市という町があるそうです。

チベット仏教の美しい廟が見ることができるらしいですね。

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