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第十一話:アンビルお嬢様エルノイア王立高等学術院合格記念魔法打ち上げ大会

ストックが尽きてしまいました。行間を読みやすくしました。十一話に修正しました。

 お菓子もばらまき、とりあえずアーレム商会に帰って来たが、店の周りは大変な人だかりだった。


 どうやらアーレム商会とその周辺が最後のイベント、魔法打ち上げ大会の会場らしい。


 一般客に紛れて夜空を見上げる。打ち上げられる数々の魔法は綺麗だった。次々打ち上がる魔法は今日の出来事を忘れさせてくれる。 気がする。


 うっとりと眺めていると、


 「お嬢様、お楽しみのところ申し訳ありません。」


 ロランが真剣な面持ちで話しかけてきた。


 「どうしました?」


 「実は、今日この魔法打ち上げ大会の締めの一撃を任されていましたが、昨日極大魔法を使ったせいで威力が足りそうにないのです。」自業自得以外の何でもない。


 「まあ!でも、何か違う魔法で間に合わせたらいいのでは?」


 「いえ、お嬢様の合格記念の魔法打ち上げ大会にそのような事は許されません。それで大変お恥ずかしいのですが、お嬢様に代わりをお願い出来ないでしょうか。他にあてがなくて。」


 ああ、なんという事でしょう。


 花火大会でも最後の締めは大事です。こんなに沢山の皆さんをがっかりさせる訳には参りません。


 ただでさえ、合格祝いなんて個人的な事に巻き込んでしまった気がして申し訳なく思えているのに、締めがしょぼしょぼしては立つ瀬がありません。


 「分かりました。呪文を教えて下さい。」


 勿論大嘘である。


 ロランはすでに開幕の一撃を放っている。ついでにいえばあと1,2発なら問題ない。


 何故このような手間を?


 実は一般に配布してあるチラシには、最後の一撃はアンビル自身が打ち上げると明記してあるのである。


 生お嬢様の魔法が見れる、噂のファイヤーボールが見てみたい。その結果想定以上の観客数だった。


 そんなからくりなど夢にも思わないアンビルは、皆さんの為に、と気合いを入れる。


 魔法打ち上げ場所はもしもの場合に観客へ魔法を誤射する事がないように、アーレム商会屋上にブース然とした囲いがいくつも用意してある。


 良かった、これなら誰が打ち上げたのか分からないわ。これ以上魔法の事でいろいろ言われるのはもうこりごりよ。


 打ち上げ終わったら静かな場所でゆっくり、そうだわ、読みかけの本でも読んでお菓子とお茶を頂きましょう。


 想像すると何だかすごく素敵な事に思えて力が湧いてくる。


 「呪文は書いておきました。炎の魔法でございます。詠唱を始めて下さい。」手渡された紙には長々と呪文がしたためてあった。


 「分かりました、がんばります。」

 ふんすと気合いを入れ詠唱し始めるアンビル。


 「サンダーボール!」「ファイヤーアローズ!」「ミラーフェンス!」「クリスタルダガーズ!」「エレクトリックカーテン!」「ジェットファイヤ!」「ビッグボム!」「ファイヤーウォール!」


 終盤で立て続けに魔法が打ち上げられ、ちょうど最後の魔法が効果を無くし、歓声が上がったその時である。

 「・・・・らしむる契約に基づき古よりの偉大にして輝けるその姿を示し天地人星に月陽までをも灼熱に滅し焼き尽くし幾度も甦らん」長い長い詠唱が終わった。ヤバい長さだった。


 「今です、お嬢様!」


 「バーンコントロールドアクロバティックギガントフェニクスッ!」本来こんな名前の魔法はない。ロラン何てことを。

 

 夜空に向けたアンビルの手の先からボボボンッと拳大の三つの炎の玉がシュルシュルと三方向へ飛んでゆく。あれが例のファイヤーボールか、お嬢様の魔法打ち上げは三発か、豪勢だなあぐらいに観客達は油断していた。


 カッと光り、シュボッという音と共に三体の炎の鳥が現れた。


 全長30メートルはある炎の鳥が三体である。この魔法は本来、集団魔法で10人がかりでやっと一体発現出来るかどうか、と言われる超級呪文である。その凄まじい威力の為か制御が困難かつ繊細さを極め、それ故に魔法を行使する魔術師も尋常ではない消耗を強いられる。全力を使い果たしてその日は使い物にならなくなり、総合的にみても難易度の高い戦術的超級魔法と言えよう。


 その、軍隊でも使用を躊躇う魔法『バーンフェニクス』の炎の鳥が三体も出現し翼を広げてポーズをとった。


 『あっ!』『えっ?』と一声、そのまま観客達は皆目を奪われ、あんぐりと空を見上げた。


 屋内にいた者も、窓越しに火事か何かかと慌てて外に出てきて更に驚愕した。


 炎の鳥達は徐々に羽ばたきながらゆっくりと旋回し始めた。


 その偉容はまさに圧巻であった。魔法打ち上げ大会会場は煌々とその炎に照らされた。熱さのため高度は充分にとってあったが眩しいほどの明るさだ。


 やがて炎の鳥達は編隊飛行しはじめ、どんどんと加速してゆく。観客達は獲物を追う猫のように右に左にと一斉に首を振る。


 やがて垂直上昇し、錐もみ急降下からの宙返りや、すれ違い、衝突。火の玉となり、また再生して飛び立つなどを何度も何度も繰り返した。


 無駄に芸達者である。おそらくロランが勝手に詠唱に付け足したコントロールドアクロバティックの部分の効果であろう。


 そして最後に三方向から魔法打ち上げ大会上空へ、もの凄い速度で飛来し衝突合体、全長70メートル、翼長180メートルほどの一羽の巨大なフェニックスとなった。翼を広げ羽ばたくその姿は巨大としか言いようがない。


 巨大なフェニックスは大きく二回ほど上空を旋回し、そのまま遥か上空へ、悠々と飛び去って行った。


 観客達は完全に言葉を失い、ぽかんと夜空を見上げていた。完全に想像を絶していた。泣き出しても可笑しくない幼子まで、茫然と空を見上げたままだった。


 水を打ったように静まり返った観客達が突然息を吹き返し、


『うおおおおおおおおおお』


『すっげえええええええええええ』


『おおおおおおおおおおおお』


 という大歓声、そしてどしゃ降りのような大拍手が沸き起こった。歓声と拍手しか聞こえない。いつまでも止む事がない。


 その歓声の中から少しずつアンビルの名を呼ぶ声が聞こえだし、拍手にとって変わるまで時間はかからなかった。


 『アッンビル、アッンビル』とお約束の大合唱となった。


 ただ一人、からくりも何も知らないアンビルは「えっ、えっ、何、なんで」とおろおろするが、アンビルコールはいつまでもいつまでも続くのであった。



お気付きかと思いますが勇者マサユキが大好きなんです。次話以降は書きながら投稿になりますので、間隔が空くかもしれません。頑張ってみますので、思い出したらたぶん天然で検索してみて下さい。よろしくお願いします。

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