第十二話:守り神の真相
短めですが、遂にやつらが・・十二話に修正しました。
翌日、アンビル一行はヘイゼルの森にやって来ていた。そう、現実逃避の為である。
アーレム商会従業員達のキラキラした目も、顔を出しただけで通行人から受ける称賛の声も、今のアンビルには辛かった。
なぜこうなったの、どこで間違えたの、などグルグル考えてしまうので、いっそ知らない場所へと気分転換に来てみたのだ。
そして道中やっと思い出す、友情で結ばれた(と、思っている)狼達の事を。
ヘイゼルの森近くで狩人達とすれ違う。皆、大漁である。しばらく森の道を往くと大きな湖に出た。バスネア湖だ。ほとりに10人程の兵士の集団がいて、こちらに近づいてくる。
「ちょっといいですか。我々は王都守備隊ですが、こちらに何か御用でもおありですか。」
「そうですね、この辺りを散策したいのですが、何かあったのでしょうか。」
御者台のロランと兵士がやり取りを交わす。
要約すると、この辺りに1頭の大きな白狼が住み着いて魔物を駆逐しているらしい。そのため動物が多くなり、大型の動物も出没するらしかった。
魔物よりも安全であるが、大型の動物であれば人には危険である。先程の狩人達の大漁の理由が理解出来た。
その白狼は滅多に姿を見せず、狩人や旅人が魔物に襲われたりして声をあげると、何処からともなく神出鬼没に現れて助けてくれるらしい。
今では森の守り神と言われていて、助けられた狩人が手の中の獲物をじっと見る白狼に獲物の肉を投げたところ、喜んで咥えて帰って行ったという。
それ以来狩人達は獲物を食べ易く捌いて岩の上に置いておくらしい。するといつの間にか無くなっていて、その者は加護を得られると言われているらしい。
加護が得られるのは真実だが、実はそんな美談やおとぎ話の筈もなく、もっと現実的で即物的である。お察しの通り、イーシトンからさっさと引っ越して来たマッドウルフ達であった。
人も動物も襲えない、食料は魔物のみ。移動途中の街道沿いには魔物はおらず、すぐに空腹になった。
マッドウルフ達は旅路で泣いた。耐え難い空腹、放牧されてる旨そうな牛、豚、家畜達。泣いた。吠えたかったが泣いてしまった。もう何ウルフか分からないサッドなマッドウルフ達であった。
家畜とか目の毒だ、早く森へ行って魔物を食いたいと、僅か3日の強硬日程で移動を済ませ、新天地ヘイゼルの森の魔物を狩りまくった。
満腹になって落ち着く頃には辺りには魔物が近づかなくなり、狩りが難しくなっていた。
マッドウルフ達は考え、知恵を絞った。
そしてたどり着いたのが『釣り』である。それまでも何回か魔物に人が襲われている場面に遭遇し、人間ジャマ!と思いながら魔物(食料)を狩った。
人間が逃げた後、食料を美味しく頂いた。そして閃いたのが『釣り』である。手順はこうだ。
まず、餌(人間)を尾ける。獲物(魔物)が餌に食いついたら仕留めるのである。マッドウルフ達は、もはやクレバーを超えスマートになっていた。
餌(人間)が熊に襲われそうになった時、仕掛けをバラされるのが嫌で熊を威嚇して追い払った。さっさと食いつかれろと、じっと見ているとなんと餌(人間)がお肉を放ってきた。助けた礼のつもりらしい。マッドウルフ達は狂喜した。
この時、餌(人間)は配給係兼餌に格上げになった。獲物が釣れて、お肉もらえる。マッドウルフ達にとって一粒で二度おいしかった。
勿論、神出鬼没などではない。狩人達を完全マンマーク体制で分業、分散していて、近くに潜伏し、隠密行動して『釣り』しているだけである。この『釣り』が狩人達の言う加護の事だった。
お供え物の肉は配給係宣言という意味であった。真実というのは、得てして奇妙なものである。
「ヘイゼルの森には守り神がいる。」狩人達は迷信を信じやすく、噂は瞬く間に広がり、守り神のいる森は大人気の狩り場になっていった。
大挙する狩人達に対応し満腹になる為に、5頭はバラバラに森の中へ潜伏し、肉が釣れる『釣り』を楽しんだ。狼など並んでいなければ一緒にしか見えないので神出鬼没の一匹狼と錯覚されていた。
一週間過ぎる頃には体毛が徐々に白くなり、5頭とも白狼となっていった。『苦労したからなあ』と、皆しみじみ思っていたが、これも間違い、勘違いである。
本来、呪われている魔物のマッドウルフであったが、魔物を狩りまくり、人や動物を助けまくったことにより積まれた善行が呪いを上回り、聖なる存在へ近づいていた。
そのため白く、雄々しくなっていて、体長は2メートルを超えかなり上位の強力な魔物になっていた。
5頭で戦って勝てない相手などこの世界に数える程しかいないが、文字通りの意味で人畜無害、クリーンなマッドウルフ達であった。
ありがとうございます。続きもなるべく早く投稿します。




