連ガチャ
ベータが治って、更に一週間。
俺はグータラと食っちゃあ寝て過ごしていた。
…わけでは無い。
本当はそうしたかった。
ただの願望である。
だいたい午前中は、チョウチョやベータに頼まれてスクラップを探す。
場所だけ特定できれば後はベータが運んでくれるので、以前よりは楽な作業になった。
…涼しい顔で自分の数倍はあるスクラップを運ぶベータにも、もうみんな慣れた様子だ。
昼食は適当な店で済ませる。
最近はサンドイッチやらパスタに似た食べ物を出す喫茶店みたいな店を気に入っている。
主にチョウチョが。
午後になると、チョウチョとベータはスクラップを解体したり、何やら組み立てたりと急がしそうに動き回っている。
こうなれば俺はお役御免だ。
日によって町をぶらついたり、アシュラやラクシュミにちょっかいをかけに行ったり、キンナラに誘われてウエイトレスさんが可愛い飲食店へ出向いたり。
そして今日も、午後からは特に用事も無いので町をブラブラしていた。
…すると突然。
「…ノブ殿!やっと追いつけました!!」
不意に呼ばれた方へと振り返ると、ターバン姿のデカいのと小さいのが。
…って…。
「ミノと…タンさんでしたっけ?」
親指を立ててニッコリ笑顔のタン。
…あの人って、あんなキャラだったっけ?
「お久しぶりです、ノブ殿。…いやぁ、正直追いつけるか不安だったんですけど、ノブ殿達が思った程移動していなくて助かりましたよ。」
「え?俺達を追ってきたの?なんで?」
「…ノブ殿、約束をお忘れですか?」
約束?
…なんか約束してたっけ?
「…もうっ!例のカードの件ですよっ!」
…ああ、行商団との契約の事か。
「連絡を入れた各地の行商団から、ある程度カードが集まったので追いかけてきたんです。どこか落ち着ける場所でお渡ししたいのですが、よろしいですか?」
二つ返事でOKした俺は、ミノとタンを連れて喫茶店へと入った。
…今日もウエイトレスさんが可愛いなぁ…。
「…ノブ殿?…まあいいです。それで、こちらが例のカードになります。」
ミノが背嚢から取り出したのは、メモ帳程の小さなジュラルミンケースだった。
…ミノの視線が『開けてみろ!』と訴えてくる…。
…そんじゃまあ、開けてみますか。
「…お、おおおぉぉぉぉ!?」
「どうですか?時間は少々かかってしまいましたが、それなりの成果だと思うのですが。」
そう言って胸を張るミノ。
…それも当然だろう。
小さなジュラルミンケースの中には、ざっと見ただけでも30〜40枚はカードが入っているのだ。
「…いやぁ〜、驚いた。よくもまあこれだけの枚数を見つけたな。」
「…それが、結構簡単に見つかったんですよ。何人かの団員なんて、連絡した時点で既に持ってた位で。…捨てようとしても何故か捨てられないって、『呪いのカード』とか呼ばれて一部で有名になってるらしいんです。」
…ああ、破棄不能だったっけ。
まがりなりにも神様なのに呪いって…。
それにしても結構簡単に見つかった物ってことは、今回のには流石にレアカードは入ってないかもな。
「あ、ちなみにその中の4枚はアエオンのノミ君から預かってきた物です。」
…アイツのゲームに対する情熱って…。
よくもまあ一人で4枚も見つけたもんだ。
…いや、もしかすると独自の妙なネットワークを通じて集めたのかもしれんが。
「…正直、この短期間でこんなに沢山集めてくるとは思ってなかったよ。…これは、こっちも相応の物で応えないとだなぁ…。」
「ええっ!?じゃ…じゃあ、それでは…!?」
「…よし、いいぞ。何が知りたい?」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
喫茶店を出ると、店の前で解散となった。
二人は休む間もなくアエオンまでとんぼ返りだそうだ。
「…それじゃあ、また数が集まったら頼むよ。」
「了解です!帰ったら早速ソルティを回収しに行ってきます!」
「ああ。さっきも言ったけど、壊れた物しか無かったら持って来てくれ。うちの修理好き班なら直せるだろうからさ。」
ミノとタンは鼻息も荒くといった様子で帰っていった。
…一方は興奮で、もう一方は興奮した相方を追いかけるのに必死で。
行商団にはソルティ達が眠る谷の情報を教えた。
その内容にミノは終始、興奮しながら手帳にメモをとっていた。
…これでベータの優位性、銃の製作や様々な知識のもつ価値は減ってしまうかもしれないけど、まあ仕方ないかな。
流石にこの枚数に釣り合う情報となるとねー。
あ、ちなみにノミの報酬であるゲームソフトもちゃんと渡しておいた。
ピンクの暴食鬼が大暴れするヤツを含む4本をチョイスしてみました。
今夜からしばらくはノミのヤツ寝不足だろうなぁ…。
さてと、早速バスに戻ってカードのチェックといきますかね。
「…あれ?ノブさん今日はお早いお帰りですね。」
「ちょっとね。あ、さっき町でミノ達に会ったよ。もう帰っちゃたけど。」
「え?帰っちゃったって…ちょっ…?」
「まぁ詳しくは晩飯の時にでも話すよ。ちょっと用事があるんで、また後でな!」
まだ何か言いたそうなチョウチョを残して、俺は装甲バスの中に入る。
バスの中ではベータが何やら作業中だった。
右手人差し指の先端がパカッと開き、露出した金属棒を使って器用にハンダ付けをしている。
これは修理時に新たに組み込まれたギミックらしい。
「サイゴーさま、お帰りなさいませ。」
「ああ、ただいま。俺の事は気にしないで作業を続けて。」
そう言うと近くのシートに腰を下ろす。
膝の上で小さなケースを開き、早速中からカードの束を取り出した。
どれどれ…どんなカードがあるのかな…?
なんかソシャゲのガチャ回すみたいで、少しワクワクしてきたぞ。
【神様ブロマイドNo.113】
(ラーメン◯郎、大ぶたダブルを食べる神様)
所持している者の生命力のステータスが1上がる。
(破壊不能・破棄不能・譲渡可能)
【神様ブロマイドNo.579】
(新幹線のぞみ700系に勝利する神様)
所持している者の敏捷のステータスが1上がる。
(破壊不能・破棄不能・譲渡可能)
【神様ブロマイドNo.403】
(芥川賞を受賞する神様)
所持している者の知力のステータスが2上がる。
(破壊不能・破棄不能・譲渡可能)
…。
お、おお。
ステータスが2も上がるカードもあるのか…。
…ん?
なんだこのメタリックなカードは…。
【神様ブロマイドNo.065:ちょいレア】
(壁ドンする神様)
所持している者の生命力と敏捷のステータスが2ずつ上がる。
(破壊不能・破棄不能・譲渡可能)
…これが例の『ちょいレア』か。
『ちょい』でこのぶっ壊れ方ですか。
…すげぇな『ちょい』。
今の所、レア以外は例外無く悪ふざけのような写真だな。
ステータスが上がらなかったら、俺は絶対集めたく無いわ。
…その後も、若干胸焼け気味になりながらカードのチェックを続けた。
残念ながら『レア』や『ちょいレア』はもう無かったが、なんとカードは全部で38枚もあった。
それと途中から気がついたのだけれど、どうも100番ごとにシリーズになっているようだ。
100番台は生命力が上がり、内容は『神様の食道楽シリーズ』。
200番台は力、『神様と肉体美シリーズ』。
…300番台、体力、『もしも神様がサラリーマンだったらシリーズ』…。
…。
…もう説明せんでいいよね…?
まぁそんなカンジで、内容はともかく結構なステータスアップになってしまった。
上昇値の確認の為に久々に自分に千里眼を使ってみる。
【西郷信人】
(腕利き探索者)(PSI能力者)
人間 25歳
生命力/25(15+補正10)
力 /15(7 +補正 8)
体力 /26(9 +補正17)
知力 /12(7 +補正 5)
敏捷 /20(6 +補正14)
運 /15(6 +補正 9)
PSI/クレヤボヤンス
サイコキネシス〈制限付き〉
〈親愛なる西郷くんへ〉
…最近、あんまりチェックしてくれてないよね…。
少し寂しく感じています。
まぁ、こっちからは西郷くんの様子は丸見えなんだけどね。
このどスケベwww付き合っちゃえよwww
…あ、ちなみに『レア』のカードはPSIを使わないと発見できない仕様です。
なんたって『レア』だからね!
地道に千里眼で探してね!
それでは、楽しい終末を!
…。
ああ、ここの所すっかりステータスチェックするの忘れてたわ…。
(PSI能力者)って…。
あ、そういえばアシュラ隊の目の前でチョウチョ打ち上げてたっけ…。
あれで知れ渡っちゃってるのか…疲れてたとはいえ迂闊すぎるだろ俺…。
…神様ヒントは相変わらず絶妙にウザイ感じだな。
つーかプライバシーは無いんだな、俺には。
…今更か。
ひとしきりチェックが終了すると、俺はため息を吐きながら立ち上がった。
ベータが不思議そうにこちらを見ていたが、『晩飯の時にでも説明するよ』と言ってバスを出る。
神様ヒントを見て思い出してしまったのだ。
ラクエンの町に来てもう数週間が経っているが、地下以外でカードを探すのを忘れていた事を。
…その後、日が落ちるまで町中を探しまわり、更に2枚のカードを収集できた。
ステータスが増強されたとはいえ、流石に疲れた。
…そんな疲れて帰ってきた俺を、容赦なく質問攻めにする二人。
…いやぁ、仲間って本当にいいね!ちくしょー!
戦力強化回って書いてて楽しいっすね!




