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LASTMAN~この荒廃した世界で、交配したい~  作者: 須藤 蓮司


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意外な言葉

 夜が明けるとともに、俺達は体育館を出発した。

 捕らえられていた人達の半数は装甲バスに、残りの半数は更に半々に分かれて行商団のトラックに乗ってもらった。

 …装甲バスに乗る事になった人達が、窓にはまった鉄柵を見て『また牢屋に入れられるのか!?』と顔色を青くして騒いでいたので、一応否定しておいた。


 装甲バスを先頭に三台の車が、崩壊したアジトを通り過ぎ、泉を抜け、谷にさしかかる。


 今回は谷を迂回するルートを通ることになった。

 なんせ大所帯だ、出入口が二箇所しか無い谷底を通って、万一襲撃に会ったら逃げ切れない。

 装甲バスは、谷沿いのルートを進んで行く。


「ここまで来ちゃえば、アエオンはもう目と鼻の先ですね。」


 ハンドルを握るチョウチョが、正面を見たまま話しかけてくる。


 …え?俺が運転じゃないのかって?


 バスの運転とか、やったこと無いもん…。

 …いや、ちゃんとマニュアル車も運転できるよ?

 でも正直、教習所以来マニュアル車なんて運転してないし、そもそも車自体ほとんど運転してなかったし。

 ええ、ペーパードライバーです。


 原付は学生時代乗ってたんで問題無かったけど、どこかで一度練習しとかないとなぁ…。


「…?ノブさん?どうかしました?」


「ああ、なんでもない。…目と鼻の先って言っても、まだ何時間もかかるぞ?ちゃんと運転に集中してくれよ?」


「大丈夫ですよ~。ここらは私にとっちゃあ庭みたいなものですし〜。」


 …お前アエオンから出たこと無かったって言ってたじゃねえか!

 …チョウチョの奴、運転し始めてからずっとご機嫌でやがる。

 あのエキセントリックなバスを運転できるのが、そんなに嬉しいのかねぇ?


「…なるほど、確かに破れませんね。見た目とは異なる材質で作られているのか、そもそもこの世の法則にのっとった品物なのか。私には解析不能です。」


 ベータが昨夜のカードをいじりながら言う。

 

 バスに乗り込んでからすぐに、ベータにこのカードの事を話した。

 …俺だけがおちょくられている感覚がムカついたので、誰かを巻き込みたかった訳じゃないよ?


「サイゴーさま、千里眼での解析ではどのような結果が出たのですか?」


「…あ。」


「…。」


「…。」


「サイゴーさま、もしや忘れて…。」


「よし!早速千里眼使ってみるか!集中するから黙ってて!」


 …どうも俺って、品物に千里眼が使えるってのを忘れがちだなぁ…。

 気を取り直して、千里眼っと!

 

【神様ブロマイドNo.615】

(海○語で確変が止まらない神様)

所持している者の運のステータスが1上がる。

(破壊不能・破棄不能・譲渡可能)


 え!?何それ!?

 あわてて自分にも千里眼を使ってみる。


【西郷信人】

(ノブさん)(サイゴーさま)

人間 25歳

生命力/12

力/7

体力/7

知力/7

敏捷/6

運/7(6+補正1)


ESP/クレヤボヤンス

   サイコキネシス〈制限付き〉


 おおぉ…、マジだ…。


 …すごいじゃん、神様ブロマイド。

 絵柄はムカつくけど、補正が馬鹿にできない。

 …あれ?たしか『各100枚ばらまいた』って言ってたよな…? 

 …それって、各ステータスに最高で100の補正がつくって事?


「…なんじゃそりゃあ!!チートじゃねえか、チート!!」


 興奮のあまり声に出てしまった。


「いかがなさいましたサイゴーさま!?」


「…ああ、すまんベータ。…このカード、ヤバイぞ…。」


 俺は千里眼で見た事を、ベータに説明する。

 説明が終わると、顎に手を当てる。

 …何か考えているのか?


「破壊不能、破棄不能、譲渡は可能…。そのカードを私が持った場合、私のステータスに変化はあるのでしょうか?」


 …なるほど、それは興味深い。

 早速試してみようじゃないか。


 カードをベータに手渡し、千里眼でチェックする。


【ソルティ(ベータ)】

ヒューマノイド

OS/doors10

耐久/35

力/30

動力/∞

知力/52

敏捷/25


アプリケーション/

『ベタートーク』『コックポッド』『メイドロイド』

『mySP』『iTune-up』『Dr.ブラウン1985』

『Gunshop Elements2.0』『Officer2030』

『ヤングトーク2016』『ジョークBOX』


「お前、運のステータス無ぇじゃん!」


「?そうなのですか?それでは譲渡によってステータスの変化が起こるのか、検証ができませんね…。」


 色々とステータスが人間と違うベータには、カードの恩恵は反影されないのかもな…。

 …まあいいや。

 後でチョウチョにでも持たせて、コッソリ千里眼でチェックするか。


 途中で休憩をはさみながらも、バスとトラックは順調に進んで行く。

 そして。


「おお、見えて来た!…やっぱり車だと早いし、快適だったなぁ。」


「ふふふ…、そうでしょう?やっぱりこのバスは凄いんですよ!」


 いや、俺は車が早いって話をしてるんであって…。

 チョウチョって、自分のお気に入りの機械に関する事だと目の色が変わって怖い。

 今もなんかブツブツ独り言言ってるし。


「…そうだ、この子にも何か素敵な名前を付けてあげないと…。」


 やめてっ!!

 名前なんて付けたら、情がわいちゃって手放し辛くなるでしょ!!


 俺達を乗せた装甲バスは、アエオンの町正面、駐車場への坂道手前で停車した。

 装甲バスや行商団のトラックだと、高さ的に屋上駐車場に入れないかもとチョウチョに言われたからだ。

 

 俺達は歩いて屋上へと続く坂道を上る。

 上り終えた俺達の前に、見覚えのある連中が止めに入る。


「止まれ!!…って、ノブとチョウチョじゃねえか、驚かせやがって。ダニの野郎が『なんか武装した車両がこっちに向かってる』とか言いやがるからダッシュで来たってのに。」


 集団の中央でボーガンを構えていたヤスデじいちゃんが、武装を解除するように号令を出す。

 

「じいさん、何日かぶりだな。」


「おお、それにしても何だこの大所帯は?一体全体どうなって…。」


 話途中のじいちゃんの目線が、俺の後で止まった。

 …ああ、ベータか。

 始めて見る人はみんな驚いてるもんな。


 …そんな風に考えていた俺は、ヤスデじいちゃんの口から予想外の言葉を聴くことになる。



「…ママ。」

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