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LASTMAN~この荒廃した世界で、交配したい~  作者: 須藤 蓮司


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白場庭の最後

 サイコキネシスで推進力を得た大ナットが、ダイノに向かって飛んで行く。

 狙いは足。

 相手は砲弾の直撃で(不発ではあったが)死ななかった奴だ。

 この攻撃は足にダメージを入れて、一時的にでも敏捷性を下げさせる事が目的だ。


 …逆に、これが効かなかったら本当に打つ手は無し。

 詰む。


 俺は祈る様に千里眼を使用し、後方へ飛んで行った大ナットの行く末を見守る。


 …鈍い打撃音が聞こえた。

 続いて、バランスを失ったダイノが地面に転がり、低い呻き声をあげる。


 大ナットはダイノの左足に直撃し、そのまま『砕けた』。

 …あのナットが砕ける程の衝撃って、どんなだよ…。

 だが、確かにダメージは通ったようだ。

 死に至るようなダメージは最初から期待していなかったが、大ナットの直撃は見る限り予想以上の成果をあげたようだった。


 思えばあのサイズの鉄球でも岩を貫通させるサイコキネシスだ、大ナット程の金属塊なら相当のダメージになったっておかしくは…。

 …でも砲弾は、質量とダメージが比例していなかった気がする。

 あれ?これって、どういう事だ?


 その瞬間、頭に降って湧いた『ある仮説』を確認する為に、急ブレーキでカブを停車させた。

 ダイノは俺の後方500m程の所で、片膝をついて動けないでいた。


 …今が確認のチャンスだ。

 『物体に対して』の千里眼は、視認できる距離じゃなければ使えないからな。


 俺はダイノに…いや、ダイノの『ズボン』に千里眼を使った。


【ダイノボトムス】

見た目はただの巨大なズボンだが、裏地に防刃・防弾性の高いプレートが縫い込まれた強靭な下半身用防具。重量のあるプレートが大量に使われている為、重さに難あり。『白場庭ダイノ専用装備』


 あのズボン、固有名みたいなのまで付いてるよ。

 …でも、それだけ思い入れが強いって事でもあるよな。


 最初に見た時にも少し思ったんだ。

『なんで上半身は裸で、下半身だけズボン履いてるんだ?』って。

 その時はそこまで疑問に思わなかったし、上半身分まで作るのが大変なのかな?くらいに思ってた。

 だが、砲弾直撃のダメージや大ナットのダメージ等、幾つかの情報が加わって、ある考えが思いついた。


『上半身の防御力に絶対の自信があって、逆に下半身が弱点なんじゃないか?』


 そして、千里眼で奴のズボンを調べた今、仮説が確信に変わった。

 奴の弱点は、ズボンに覆われた下半身だ。


 再びカブを走らせ、すぐさまその場を離脱する。

 それと数瞬遅れて、ダイノも再び走り始めた。

 千里眼の使用に時間をくってしまったが、さっきまでより距離は開いた。

 おまけに、まだダメージが残っているらしく、俺達の距離は縮まらないでいる。


 …このまま!

 この距離を保ったまま、トラックまで戻れれば!!

 俺は千里眼で自分の居場所を確認しながら、泉に向かってカブを走らせた。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

「ノブさん…、本当に一人で大丈夫なんでしょうか…?」


 私のつぶやきに、隣で空気の圧縮作業をしていたベータちゃんが答えます。


「チョウチョさま、サイゴーさまはご存知の通り『特異な力』をお持ちです。本来なら私が同行して、代わりに敵を殲滅いたしたいところですが、サイゴーさまお一人でも何ら問題はありません。」


 そう語る鼻息は荒い。


 …ベータちゃんに鼻はありません。

 ベータちゃん、どこかから空気が漏れてないですか?


「…ここでこうやってただ待っていても何ですし、怪物も集まってきてしまいます。一度トラックに戻って、少し場所を移動しませんか?」


 ウルテさんがそう言って、私をトラックへと促す。

 ノブさんには時間がかかるようなら移動して待つと伝えてあるので、私とベータちゃんはトラックの荷台に乗ろうと歩みを…。


 …!


 ノブさんのカブの音がします!


「サイゴーさまのカブの接近を感知しました。…一定間隔で接近する振動を同時に検出、どうやら敵に追われているようです。」


 ベータちゃんから敵襲が告げられると、行商団の皆が慌ただしく動き始めます。

 …こう言ってはアレですが、行商団の、特にウルテさんは、最初の敵襲時に何もできなかった事に負い目を感じていましたからね。


「タン、ミノ、虎の子のガトリングボーガンを出す。迎え撃つ準備をしろ!…商品に手をつけちまっちゃあ、団長にドヤされるだろうな。」


 ウルテさん達が乗っていたトラックから、大きな木箱が運ばれてきました。

 タンさんがバールで無理矢理開けると、中からは店長が使っている物の倍はあろうかという巨大なボーガンが姿を現しました。


 すごい…!こんな大きなボーガン、初めて見ました…!

 ボーガンの上部には、店長の物には無いレール状のパーツが左右に取り付けられ、そこに大量の矢が装填されています。


 そのボーガンをトラックの後方に固定し、トラック自体を方向転換させて接敵を待ちます。

 ミノさんが運転するトラックは、ノブさんの来る方向を照らす係を。

 私とベータちゃんは、それぞれの武器を構えて動きを待ちます。


 どんどん近づいて来るカブの音。

 …だんだんと地面が縦に揺れるような振動も近づいて来ました。


 …あっ!

 見えました!!ノブさんです!!


「…〜〜〜…!」


 …何か、叫んでるのかな…?


「…の〜…って…〜…!!」


 え?何ですか?


「残りの砲弾全部、地面に並べてくれ〜!!!」


 砲弾?…ああ、ノブさんが持って行ったアレですか?

 そんな物なんで…。


 近づいてくるノブさんの後方に、巨大な影が迫っているのが見えました。


 …えぇぇぇぇっ!?何アレ!?

 何がどうなって、あんな怪獣に襲われてるんですかっ!?


 ハッと正気になって、私がトラックへ駆け寄ろうとした時。

 ウルテさんが運転するトラックの荷台から、ベータちゃんとタンさんが飛び出しました。

 その両脇に、巨大な砲弾を抱えて。

 …ベータちゃん、いつの間に…。


「サイゴーさまの来る方向に向けて、こちらに並べて下さい。」


 ベータちゃんの指示で、作業はあっという間に終わってしまいました。

 …ああ!砲弾を並べろって、まさか…!


 そこに、滑り込む様にカブを急停止させながら、ノブさんが到着します。


「サイゴーさま、準備は整っております。」


「流石ベータ!でかしたっ!!」


 そう言うとノブさんはカブを飛び降りて、並べられた砲弾の前に走りました。

 そうこうしている間に、怪獣の姿はもうハッキリ見える距離です!


『グァァァァァァッ!!!ブチ殺してやるぅぅぅっ!!!』


 うっそ!?怪獣が喋った!?


「…悪いけど、追いかけっこは終わりだ。」


 ノブさんの前に並べられた砲弾のうちの一つが、唐突に発射されました…!

 飛び出した砲弾が、怪獣に迫ります…!!


『…もうこんな物、喰らうかぁぁぁぁっ!!』


 えぇぇぇぇ〜!?

 怪獣の振り払った腕が砲弾を…薙ぎ払いましたよ!?


「くそっ!しかもまた不発だっ!!」


「サイゴーさま、プラズマクラッシャーを放ちます。着弾に狙いを合わせて下さい。」


「…!!分かった!!足を狙ってくれ!!」


 ベータちゃんの腕から電気の球体が発射されました!

 迫って来る怪獣にゆっくりと近づいていって…。


「…今だ!!」


 後を追う様に砲弾が発射されます!

 接近する電気の球に、怪獣が先程と同じ様に振り払おうと腕を…。


『…っ!?』


 バチバチッ!と放電した球体が、迫った腕を弾き返しました!!

 そのまま怪獣の足元に接近する電気の球。


 そこに、遅れて発射された砲弾が追いつきます。

 …砲弾が電気の球に触れた一瞬、強い放電の光が見えました。


 次の瞬間。


 鼓膜が破れそうな轟音をあげながらの、大爆発。

 熱気と爆風に吹っ飛ばされそうになる体を、体勢を低くして無理矢理留まらせます。



 …やっと爆風が収まり、体を起こすと、私の前にタンさんが立っていました。

 よく見れば、大きな盾のような物を両手で構えています。

 …どうやら、爆発から私を守ってくれたようです。


 辺りを見回すと、ノブさんとベータちゃんの前にはウルテさんとミノさんが、二人掛かりで盾を構えて立っていました。

 …みんな、体中砂まみれです…。


「…ぶっはぁっ!…や、やったか!?」


 ノブさん…!それフラグですよぅ…!!

 …そう思いながらも私は、タンさんが構える盾の後ろから、そぉっと爆心地を覗き込んでみます。


 …少しずつ晴れていく砂埃の中心に、怪獣の姿は…。


 …見当たりませんでした。


 完全に砂埃が晴れ、爆心地にノブさん達が歩いて行きます。

 私とタンさんもそれに続きます。


 爆発で抉れたそこには、無惨にも下半身が消し飛び、上半身のみになった怪獣の亡骸があるだけでした。

今回のタイトル、最初は『どっかんレックス』にしようと思ったのですが、流石に空気があわないので止めときました。

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