表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/87

流されて大乱闘

 俺達を乗せたトラックは、ゆっくりとスピードを落とす。


『そうだ、そのまま止まれ!こっちは車をぶつけて止まらせてもいいんだからなぁ!?』


 破れたホロの隙間から、外の様子を伺う。

 逆光でハッキリとは見えないが、トラックを囲むように車が数台。

 …どの車も錆びが浮き出ていて、窓も無い。

 

 …ハッキリ言ってしまおう、M○DMAXの車だ。


 後付けで追加されたと思われるスパイク付きホイールや、フロントグリルから生えたスパイク、車体の両側にもやっぱりスパイク。

 何処に刺さりに行こうというのか。

 クラッシュ○アか。


『よ〜し、止まったなぁ!積荷は全部いただくし、女がいれば連れて行く!!…が、その前に…、チョウチョとか言う女と、その連れの男がいたら、大人しく下りて来い!!』


 …やっぱり、俺が逃がしたモヒカンのお仲間か。

 いや、最初に見た時から絶対そうだと思ったけどね?


「チョウチョ、俺がちょっと言ってくるから、お前はここに居ろ。」


「ノブさん!?…私も行きます!」


「多分大丈夫だから。…それに、もう次は後悔したく無いんだ。」


 覚悟は決まっている。

 …勿論、死ぬ気はまったく無い。


 死ぬのは彼奴等だ。


 トラックの荷台から飛び下り、歩み出る。

 …ライトが眩しいっ!俺はル○ンか!?


「!!コイツです!コイツが仲間を殺った野郎ですよ!!」


「ほう…、こんな痩せたドブスターみたいな野郎が…。」


 とんでもなく失礼な事を言った奴を睨む。


 …おおぅ、そう来たか。

 身長はざっと3m、ウロコのようなものが全身に浮き出た体…。

 顔はそのまんま、ワニだった。


「ウチの兄弟達を随分と可愛がってくれたらしいなぁ。…俺は白場庭ファミリーの長兄、『悪食のダイル』だぁ…。」


【白場庭ダイル】

(悪食のダイル)

変異体 31歳

生命力/42

力/30

体力/33

知力/11

敏捷/25

運/18


特殊:表皮硬質化

(遺伝子異常有り)


 頭のほとんどを占める大きな口が、醜く歪んだのが分かった。

 …ダイルって、クロコダイルだから?

 …え〜っと…、前にネットで見た記憶なんで、あんまりハッキリしないけど…。


 閉じた口の下の歯が見えない。

 幅広の頭。


 お前アリゲーターじゃねえ?

  

 …ツッコムのも面倒なんで良いか、放置で。


「可愛がるなんてとんでもない。躾がなってなかったんで、ちょっとお仕置きしただけさ。お宅のご兄弟なら、もっとちゃんと躾けろよ?」


「うるせえっ!よくも俺等を埋めやがったな!?おかげで俺以外の仲間は、生きたままネックレスの餌になったんだ!」


 あ、泉で最後まで残ってた奴だ。

 生き残ったのはコイツだったのか。

 …顔は醜い傷だらけになっているが。


「…お前も懲りないなぁ。生き延びたのなら残りの人生をおとなしく過ごせば良いものを…。」


「黙れ卑怯者が!銃なんか隠し持っていやがって!兄貴、コイツ銃持ってるんで注意して下さい!!」


「…ウハハハハッ!残念だったが、俺の硬質のウロコは、豆鉄砲なんざぁ通さんぞ!!」


 …銃じゃなくてサイコキネシスだったんだけどね、それも最小出力の。

 あ、でも今は銃持ってるんだ。


「豆鉄砲って、コレの事か?」


 俺は背中からショットガンを取り出し、ワニ男に引き金を引いた。

 轟音と共に飛び出した無数の鉄球が、ワニ男の胸元に命中する。


「!!!!痛ぁぁ!!!!」


「ああああぁ!兄貴ぃ!兄貴ぃぃぃ!?」


 おお、大口叩くだけはあるな、一撃で死ななかった。

 でも自慢のウロコはゴッソリ抉り取れちゃったみたい。


「…どうすんの?もう一発同じ所撃ったら、お前死ぬぞ?」


「ぎぃぃぃい!!野郎共!!殺っちまえぇぇ!!」


 …悪党ってのは、どいつも同じセリフ言いたがるなぁ。

 

 ワニ男の叫び声を切っ掛けに、数台のトゲ車が俺に向かってくる。

 俺は一番近い車をショットガンで撃ちつつ、近くの岩をサイコキネシスで飛ばす。

 この乱戦だ、俺がESPを使ったって誰も分かりゃしないだろ。

 …どうせ生きて帰さないしな。


 ショットガンで撃った車は、元々ボロだったのもあって轟音と共に爆発、炎上した。

 …アブねぇ!!巻き込まれる所だった!!

 威力があるのは良いけど、調整できないから扱いが意外に難しいな。


 飛ばした岩は、何台かの車をかすめながら遠方に飛んで行った。

 岩がかすめた衝撃で、二台ほど横転したようだ。


「…サイゴーさま、後ろはお任せ下さい。」


 振り返ると、いつの間にか下りて来たベータが後ろに立っていた。

 腕部にはいつかの黒棒が露出しており、その腕を車に向けて…って、お前それスタンガンみたいのだろ?流石にこの距離では…。


「…初披露でございます。『プラズマクラッシャー』!」


 黒棒から青白い電気の塊みたいな物が、ふわりと車に発射された。

 接触と同時に、爆発する車。


 …お前…、ホント、何でもアリな…。

 あと技名叫ぶのか、お前。


 ベータばかりに任せてもいられないと、ショットガンにショットシェルを詰めていると、あらぬ方向からパララッという銃声と、男達の汚い悲鳴が聞こえた。


「わ、私だって、銃があれば戦えるんですよ〜!!バタフライちゃんの餌食にしてやりますぅ!!」


 …車の中に居ろって言ったのに、チョウチョまで出て来ちゃったよ。

 なんか混沌としてきたなぁ。


 ベータと共にチョウチョに駆け寄り、三人で敵を掃討していく。


 チョウチョが生身の敵をバタフライの一斉掃射で片付け。

 ベータがプラズマなんちゃらで車を破壊し。

 討ち漏らしを俺がショットガンとサイコキネシスで仕留める。


 そうしてしばらくすると、辺りで無事に残っているのは、二台の行商トラックだけになっていた。


「…やっぱり、飛び道具ってロマンですよねぇ。」


「…お前の言うロマンってのは、ずいぶんと血生臭いんだな…。」


 辺りが静かになったのを確認してか、ウルテさん達がトラックから下りて来る。


「…何も助力できずに申し訳ない。ノブさん…、ベータ殿も大概でしたが、やはり銃の力はすばらしい物ですね。改めて必要性を感じさせられました。」


「ソルティのプラズマクラッシャーが生で見れるなんて…。今日は一生の思い出になりそうです。」


 ウルテさんの謝罪は分かるし、別に気にしてないけど…。

 …ミノさんって、薄々は感じてたけど、ソルティのマニアか何かなの?

 ちょっと怖いわ…、ウチのベータさんに悪さしないでね?


「サイゴーさま、『悪食のダイル』が見当たりません。」


「おっと…、逃がしたか…?」


 すかさず千里眼を使用する。

 …良かった、まだ範囲内にいやがった。


「タンさん、俺のカブを降ろしてもらえますか?」


「ノブさん、追うつもりですか?…一人では流石に危険では?」


「いや、今回は一人で良いや。…て言うか、アジトまで追っかけてみるわ。」


「流石はサイゴーさま、根絶やしにするおつもりでございますね。」


「…いくら何でも無茶だ。銃の威力は認めるが、アジトにどれだけの敵がいるのか見当もつかないですよ?」


 ウルテさんの言葉に、俺は商談モードに入る。


「…そこでですね、今日見せてもらった商品の、『例の売れ残り』を、俺にいただけませんか?」


「…はい?あんな物、どうするおつもりで?そもそもアレは…。」


「いや、分かってます。上手く使う方法を思いついたんで。」


 ウルテさんは納得していなかったようだが、負い目を感じたからか承諾してくれた。


 …さてと、それじゃあ追っかけますか。

 後腐れを残さないためにも。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ