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なづけてなづけて

 おにぎりを堪能した後、食後の茶っぽい謎飲料を飲みながらチョウチョと相談していた。


「…名前、ですか?」


「そうなんだよ。ソルティって形式名とからしくて、個別の名前がつけられるんだって。俺ってそういうの苦手でさぁ、何か良い名前ないか?」


 腕を組んでしばらく考えるチョウチョ。

 頑張れ!こういう所で女子力を見せてみろ!


「…白い悪魔と書いてガン○ムというのは…。」


「チョウチョさま!素敵な響きです!」


「…絶対やめてください…。というかチョウチョはよくそんなの知ってるな…。」


「あ、元ネタ知ってましたか?なんか大昔のハイテクロボの名前らしいんですけど。」


 どう伝わってるんだガ○ダム…。

 …チョウチョに女子力を求めるのが間違ってたか…。


「あ…あの…。」


 突然、後ろから話しかけられて振り返る。

 そこには立ち去ったはずのミノが、申し訳なさそうな顔で立っていた。


「あれ?ミノさん?どうしたの?」


「あの…ノブさん、先程は突然失礼なことをしてしまい、申し訳ありませんでした。行商団の一員としてあるまじき行動だったと反省しています。」


「ああ…ちょっと驚いたけど、そんなに気にしないで良いよ。…ミノさんはヒューマノイドに興味があるの?」


「…お恥ずかしながら、過去のテクノロジーが大好物でして…。場もわきまえず興奮してしまいました。…だとしても、私の軽率な行動が行商団の信頼を下げてしまったのは、弁解のしようが無い事実です。」


 そう言ってしょんぼりと俯く。

 …もしかしてあの後、ウルテさんに叱られたのかな?

 …余計なこと言ったせいで悪い事しちゃったな。


「あ、あの…。」


「ん?まだ何か用事でもある?」


「すみません…。先程、そちらのソルティの名前を決めていた様子だったので…。」


「ああ、そうなんだよ。…何か良い案があるのかな?」


 ミノの顔色に、見てわかる程に赤みが増した。


「ご提案なのですが…。夜に空を見上げると、沢山のキレイな光が見えますよね?あれは『ホシ』と言って、一つ一つに名前があるそうなんですが…夜空の中で唯一、緑色に見える『ホシ』があるのです。『てんびん座ベータ星』という名前なのだそうですが、ソルティシリーズの緑色の瞳とかけて…『ベータ』というのはどうでしょうか?」


 こ…こいつ…!!


「女子力高っ!!」


 第一印象から想像がつかない位の女子力に、思わず声が出てしまった。

 チョウチョも、ソルティも、ミノも。

 周りにいた他のお客さんも俺を見ている。


「ああ、スイマセン。何でもないんですスイマセン。」


 恥ずかしい…。

 …だけど…『ベータ』か。

 由来がちゃんとしてるし、ソルティの瞳と同じ緑色ってのも良いな。

 何より男心をくすぐるロボっぽさが気に入った。


「…ソルティ、どう思う?」


「…まさか星の名前がいただけるとは…私、感無量でございます!」


 ソルティの緑色に光る瞳が僅かに明滅している。


「…ミノさん、採用で。」


「ほ…本当ですか?ありがとうございます!!」


 飛び上がらんばかりの喜びの表情を浮かべるミノ。


「ベータちゃんか…良い名前ですね。良かったねベータちゃん!」


 ソルティ…いや、ベータの手をとって話しかけるチョウチョ。

 …なんでナチュラルにちゃん付けなの?

 性別とか無いよ?…無いよな?


「本日より私の名前は『ベータ』です。ヒューマノイド・ソルティシリーズの『ベータ』です。」


 よくわからないがベータも喜んでいるみたいだ。


「ここまで喜ばれると、ミノさんには何か礼がしたいなぁ。そうだ、食事でもおごるから買い物に一緒について来ないか?」


「え…ノブさん達が良いのであればかまいませんが…ご迷惑では?」


「いやいや、迷惑だなんてとんでもない。ついでにミノさんに、この村でオススメの店なんかを教えてもらえると助かる。」


「…そうですか。それでしたら、喜んでご一緒させていただきます。」


 こうして俺達は、まんまと案内人をGETしたのだった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 俺達はミノに案内され、駅ビル内の市場にやってきた。

 辺りには焦げた醤油のような良い香りを漂わせた屋台や、見覚えの無い『動く』フルーツ?のような物を売る店、ガラクタの山を一箱5ナットで売ってる店など、バラエティ豊富な店が軒を連ねている。


「まずは…先立つ物が必要だな。ミノさん、過去の遺物を買い取ってくれる店とか心当たりある?」


「発掘物の買い取りなら、あそこの『泥棒商店』が適正価格です。…名前はアレですけど、信用できる店ですよ。」


 なんでそんな名前にした…。

 早速その店に行こうとすると、チョウチョがガラクタの山を前に目を輝かせていたので引き摺って連行した。


「…おう、いらっしゃい。…ミノか、商売敵が何の用だ?」


「随分だなぁトンヤマチのおっちゃん、お客さん連れて来たってのに。」


「売りたい物があるのですが、見てもらえますか?」


 トンヤマチと呼ばれたおっさんは、俺を見定めるような目つきで一瞥する。


「…ふん、物を見せな。」


 ぶっきらぼうなおっさんだなぁ…。

 俺はバックパックの中から、谷底で拾ってきた品物を取り出して机に並べた。


「…お前さん、顔もそうだが中々面白い物持ってきたな。」


 失敬な!

 

 俺が持ち込んだのはモーター、電池、配線のついたよくわからない電子部品、壊れた携帯電話など。

 …俺からすると、やはりただのガラクタなんだが…。


「持ち運びやすくて価値が高い物を重点的に持ってきた所をみると、流れのプロか?…まぁウチは良い品を持ってきてくれれば、適正価格で買い取らせてもらうがね。」


 言い終わると、おっさんはカウンターの下からナットの束を取り出した。

 両手に2本ずつ、計4束。


「…40ナットだ。また頼むよ。」


 …これは…結構儲かったのか?

 多分一日の稼ぎなら良い方なんじゃないだろうか?

 ただ、受け取ってすぐにある事に気がついてしまった。


「…地味に重いな…。」


 実は谷底で11ナットほど稼いでいたので、計51ナット。

 そこから宿代10ナットを引いて、計41ナット。

 これは馬鹿にできない重さだ。

 そんな考えを見透かしたのか、チョウチョが答える。


「ノブさん、お金は重いんで、みんな使う時以外あまり持ち歩かないんですよ。長旅の際はしょうがないみたいですけど、旅ができるような人は大体乗り物を使いますから。」


 あ、そうか。

 俺の場合はカブに積んじゃえば良いんだな。


「…あれ?でも乗り物を盗まれたりしないの?」


「絶対に無くは無いですが、乗り物は目立ちますし、何より罪が重いんです。所有者のいる乗り物の窃盗は死罪なんですよ。」


 Oh…マジか。


「そりゃ重いな。」


「サイゴーさま、重いようでしたら私がお持ちしましょう。」


 勘違いしたベータがナット束を肩に担いでくれた。

 …まあ楽だから良いか。


 さてと、次は買い物だな。


「ミノさん、ガソリンを扱ってる店と、金属部品や火薬、あと色々加工できる設備がある店って無いかな?」


「それは…村レベルでは難しい物品ですね。でも心当たりはあります。」


 …言ってみるもんだな、俺も無理かなぁと思ったのに。

 促されるままにミノについて行くと、何故か駅ビルから外へと出る道のりだった。


「あの…ミノさん?外に出ちゃいますけど?」


「外に出るんです。…ああ、説明してませんでしたね。これから行く所は私の仲間達…、行商団の所です。」

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