第14話 かぐや姫と月見バーガー
今日の帰り、電車で座れた。今日はお局に太ったとか、前髪に白髪が混じってるとか言われて余計に疲れたし、これはラッキー。
ついついSNSを見てしまう。私と同じようにお局の悪口に困っている同士はいないかなぁ。
しかしSNSを見続けて後悔した。婚活や恋愛系の話題、いつもSNSは荒れているが、今日はさらに酷い。とあるインフルエンサーが「女は無能なくせに高望み。身の程知らずのかぐや姫」という発言を見てしまった。
見るんじゃなかった。こんなもの見ても何の利益もないのに。
帰りにコンビニに寄ってもSNSの言葉が頭をぐるぐるする。お局に耐え、明日はせっかくの土曜日なのに。
コンビニの値段の高さも憂鬱になってくる。この物価高もいつまで続くだ。
その時だ。目に留まったのは、月見バーガー。紺色の包みに包まれ、うさぎの絵もデザインされてる。可愛い。そうか、今の時期はお月見か。
ついつい手が伸びる。ファストフードでハンバーガーを買うのは、アラサーになると他人目を気にして恥ずかしいが、コンビニのチルドコーナーのハンバーガーって気軽に買える。ついでに冷凍ポテトも買って家でお月見するか。
家に買えると、月見バーガーも冷凍ポテトも温める。お皿にも盛り付けよう。お月見だし、見た目にもこだわるんだ。
「こうしてお皿にちゃんと盛るといいね。うん」
あとは、インスタントのコーヒーも用意してお月見を始めるか。
「月は……。見えん……」
もっとも窓の外を見ても、月は雲隠れ。でもいいんだ。バーガーの中に小さな月があるはず。
「いただきます」
手を合わせて食べ始めた。卵の黄身がじゅわり、白身はプルプル。これぞ月見バーガーだ。卵の存在感、肉やバンズに全く負けていないもの。
せっかくだし、動画サイトで満月の映像を探して流す。
無音で月の映像だけが流れている。月の色、案外無機質だし、寂しい雰囲気すらある。うさぎも見えない。
「かぐや姫もこんな月を見ていたのか……」
もしかしたら、求婚を断り続けていたのもかぐや姫なりのメッセージだったのかも。本当は結婚したくなくて、月に帰りたいとか、寂しいとか……。
「私もそうか……?」
私も人並みにイケメンや金持ちの男性に憧れていたのも事実。でもそれは本気の憧れでもなく、恋したいわけでもなく、現状が嫌だっただけか。
「うん、そっかぁ」
でも、今みたいに月見バーガーを食べている自分はそんな嫌いじゃない。かぐや姫の気持ち、想像して考えられているし。
気づくと月見バーガーも冷凍ポテトも完食してしまった。月は見えないけれど、いい夜だ。




