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ネザーワールド リヴァイヴ(冥界蘇生)2 ~サディスト魔女×冷徹な堕天使!相反する二人が狂気の世界を切り裂く!~  作者: たくみふじ
外伝

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白亜の契約『亨と凉子』㈡

「混沌」の魔女と「秩序」の堕天使。最悪で最強な二人の狂気の共闘劇!

 亨はくぐもった呻き声を上げたが、その視線はモニターから一切外れることはなく、瞬きすら忘れたようにコードを打ち込み続けていた。

 彼の心は、とうの昔に人間の感情というものを放棄していた。

 暴力に怯える恐怖も、組織への憎しみも、彼にとっては演算のノイズでしかない。彼はただ、目の前のシステムを解体し、自らの計算式で世界を上書きしていくという、純粋な『論理の構築』にのみ、自らの存在意義を見出していたのである。


(……くだらない。人間は、なぜこうも非効率に感情を撒き散らすのか。怒りや暴力でシステムが加速すると本気で信じている。……こんな不完全な連中のためにコードを書かなければならない自分の存在すら、不完全で、美しくない……)


 亨の目は血走り、その魂は、誰にも理解されない孤独で冷たい泥濘(でいねい)の中で、ゆっくりと摩耗し、沈みかけていた。

 その時であった。

 分厚い鋼鉄の防爆扉が、まるで紙屑のように、内側から青白い閃光と共に吹き飛んだのである。


第三節:白亜の契約

 ドゴォォォォォォンッ!!


 耳をつんざく爆音と共に、防爆扉の破片がハッキング・ルーム内に散乱する。


「な、なんだ!? 敵襲かッ!」


 組織の男たちが、慌ててアサルトライフルを構え、土煙の上がる入り口へと銃口を向けた。


 パチッ……バチバチッ……。


 もうもうと立ち込める煙の奥から、青白いプラズマの雷光が幾何学的な軌道を描きながら弾ける音が響く。

 やがて、煙が晴れた入り口に立っていたのは、純白の特殊戦闘スーツに身を包み、銀縁の眼鏡を光らせた、氷の彫刻のように美しい一人の少女であった。

 高清水凉子。

 彼女の右手の周囲には、数万ボルトの電流が圧縮された『電流鞭(ライトニング・ウィップ)』が、まるで生き物のようにバチバチと這い回っていた。


「……撃て! 撃ち殺せェッ!」


 男たちが一斉に引き金を引く。何十発もの銃弾が、凄まじい速度で凉子の華奢な身体へと襲いかかった。

 だが、凉子は表情一つ変えず、一歩も動かなかった。

 彼女の銀縁眼鏡のレンズに、無数の緑色の数列が滝のように流れ落ちる。


「……弾速、弾道、空気抵抗、空間座標。……全ての変数を演算完了。ホンマに、非効率で退屈な攻撃やね。……『完全防御(アクティブ・シールド)』」


 凉子が小さく呟いた瞬間。

 彼女の眼前に、青白い雷光で構成された完璧な六角形(ヘキサゴン)のハニカムバリアが瞬時に展開した。


 キン、キン、キンッ!


 銃弾は、バリアに触れた瞬間に運動エネルギーを完全に相殺され、すべて床へと無力にポロポロと転がり落ちていく。


「な、バカな……!? 化け物かッ!」


「……他人の美学を理解できへん劣等な演算装置(脳味噌)に、化け物呼ばわりされる筋合いはないんよ。……邪魔やわ、ゴミども。システムから消去(デリート)してあげる」


 凉子は、右手の電流鞭を一閃させた。


 ピシャァァァァァァァンッ!!


 青白い稲妻の刃が、空間の物理法則を無視した幾何学的な軌道で部屋を駆け巡り、銃を構えていた十数人の男たちの身体を、一瞬にして細胞レベルまで蒸発させた。

 悲鳴を上げる隙すら与えない、一切の無駄を省いた完璧で冷徹な殺戮。部屋には、微かなオゾンの匂いと、黒い焦げ跡だけが残された。

 静寂が戻った部屋の中で。

 鎖に繋がれたままの亨は、恐怖で震えることもなく、ただ目を大きく見開いて、目の前で起きた事象を見つめていた。

 血飛沫一つ上げない、数学的なまでに美しい死。

 あらゆる変数を一瞬で支配し、法則を塗り替えた少女の立ち姿。


(……美しい。なんという、圧倒的なまでの……『秩序(コスモス)』だ……!)


 亨の魂の底から、生まれて初めて、論理が完璧に噛み合った時のような、背筋が凍るほどの強烈な歓喜と興奮が込み上げてきた。

 凉子は、倒れた残骸を冷たく一瞥した後、ゆっくりと亨の座るデスクへと歩み寄った。

 彼女の青い瞳が、亨のモニターに表示されたままのハッキングコードと、彼の血走った目を交互にスキャンする。


「……あんたが、この美しいコードを書いたんやね。名前は?」


「……詫間、亨。ただの、システムエンジニアです」


 亨は、鎖に繋がれたまま、どこか恍惚とした表情で答えた。


「そう。亨さん」


 凉子は、電流鞭を指先で操り、亨の手足を縛っていた分厚い鋼鉄の鎖を、音もなく正確に切断した。


「あんたの書くコードは、この泥だらけの地上で唯一、私の演算回路を不快にさせへんかったわ。……感情というバグにまみれたこの世界で、あんたも息苦しかったんやろ。その冷徹な計算能力を、こんな劣等なゴミどものために消費するのは、宇宙の損失やわ」


 凉子は、亨の眼前に立ち、氷のように冷たく、しかし絶対的な引力を持つ声で宣告した。


「……私と契約しなさいな、亨さん。あんたのその極上の頭脳を、私のシステムに組み込んだげるわ。あんたは私の『翼』として、私の演算のバックアップと、完璧な装備の開発だけをすればええ。……感情も、恐怖も、倫理も、すべて捨てて、私という絶対的な『秩序』のために、その魂のすべてを稼働させなさい」


 それは、愛や絆といった生ぬるい言葉ではない。

 純粋な能力の評価と、極限の論理による、絶対的な主従関係(システム)の提示であった。


「……私の、魂のすべてを」


 亨は、震える手で自らの痛む腕を摩りながら、凉子の完璧な青い瞳を真っ直ぐに見つめ返した。

 彼にとって、この少女は神よりも美しく、何よりも絶対的な「正解」であった。

 自らの孤独な論理を、ようやく完全に理解し、評価し、そしてそれを超越する究極のシステムが目の前に現れたのだ。


「……光栄です、凉子様」


 亨は、自らの血で汚れ、ひび割れた冷たいコンクリートの床に、迷うことなく深く片膝をついた。


「私の演算能力のすべては、今この瞬間から、貴女の論理を証明し、貴女の『完璧な日常』を支えるためだけに稼働する、貴女だけの端末となります。……いかなるバグからも、私が必ず、貴女をお守りいたします」


 かくして、感情を嫌悪する西の堕天使と、彼女の論理に絶対の忠誠を誓った天才発明家は、薄汚い地下の血溜まりの中で、誰よりも白く、純粋で、強固な『契約』を結んだ。

 これが、後にあらゆるネットワークを支配し、神々の結界すらも暴き出す「高清水凉子の無敵のシステム」が産声を上げた日の、氷のように冷たい、真実の記録である。


(外伝:白亜の契約 完)

X(Twitter)でも連載しています。

https://x.com/TakumiFuji2025

魅力的なキャラクターたちが躍動する物語をお楽しみください。

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