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ネザーワールド リヴァイヴ(冥界蘇生)2 ~サディスト魔女×冷徹な堕天使!相反する二人が狂気の世界を切り裂く!~  作者: たくみふじ
虚無の庭園(ゼロ・ガーデン)

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犠牲の論理㈡

「混沌」の魔女と「秩序」の堕天使。最悪で最強な二人の狂気の共闘劇!

 このまま無意味な攻撃を繰り返せば、いずれ二人のエネルギーは枯渇し、神託の虚無に完全に飲み込まれて自我を失う。

 横浜の路地裏で拘束され、拷問の痛みに耐え続けているあの醜い地獄の番人も。

 そして、漆黒の移動ラボラトリーの車内で、全身に火傷を負いながらも、最後まで自分の論理を信じてキーボードを叩き続けてくれている、彼女のたった一人の理解者である詫間亨も。

 全員が、この宇宙から塵一つ残さずデリートされてしまう。


(……そんな非論理的なバッドエンド、私の完璧な秩序(コスモス)が絶対に許容できへん。亨さんとの約束を守るためには、この巨大なバグを、何が何でもここで完全にフォーマットせなあかんのや)


 凉子は、伊達眼鏡を外し、それを灰色の砂の上に静かに落とした。

 彼女の脳内で、たった一つの、しかし彼女自身の存在理由を根底から覆すような、究極にして最悪の「最適解」が導き出されていた。

 完璧なシステムである『神託の絶対防壁』を内側から崩壊させるためには、外部からの物理的な攻撃ではなく、システムそのものを狂わせる「致命的な論理矛盾パラドックス」を、直接その内部にインストールするしかない。

 神託の防壁は、「あらゆる事象を『無』に帰す」という絶対のルールで動いている。

 ならば、その『無』の空間の内部に、「無限の秩序」と「無限の愛」という、天界の根源的なエネルギーそのものを質量として無理やり叩き込めばどうなるか。

 計算式はオーバーフローを起こし、防壁の概念そのものが「ゼロ除算」のバグを起こして、自壊するはずである。

 だが、それを行うためには、天界から堕ちたとはいえ、かつて天使として純粋な「秩序」と「愛」のシステムで構築されている凉子自身の魂の(コア)を、防壁の内部で完全に限界突破させ、自爆(ショート)させる必要があった。

 それはすなわち、高清水凉子という「個」の完全なる消滅を意味する。


(……亨さん。ごめんなさい。あんたとの約束、破ってまうことになりそうやわ)


 凉子の脳裏に、ボロボロになりながらも自分を信じて待つ亨の姿が浮かんだ。彼女の無機質な心に、生まれて初めて、「申し訳ない」という明確な感情のノイズが走った。


(せやけど、あんたの命を、あんたの未来を守るための論理的最適解は、もはやこれしか残されてへんのや。……私のこの非効率的な選択を、どうか許してや)


 凉子は、深く、静かに息を吸い込むと、隣で再び突撃の態勢を取ろうとしている孝子に向かって、氷のように冷たく、しかしどこか透き通るような声で呼びかけた。


「……おい、地獄のネズミさん」


「なんですの? わたくしは今、最高に機嫌が悪いですのよ。話しかけないでくださる?」


 孝子は、電光剣を構えたまま、忌ま忌ましげに振り返る。


「……あんたのその野蛮で無駄に熱い炎、一瞬だけ、私のシステムに組み込んだるわ」


「……は?」


「私の言うた通りに、寸分の狂いもなく動きなさいな。そうすれば、あのムカつく泥の壁に、一秒だけ、あんたのその極上の『針』を通すための、たった一つの穴が開く」


「……あなた様、一体何を企んでおいでですの?」


 孝子の漆黒の瞳が、凉子の様子が先ほどまでと決定的に異なっていることに気づき、怪訝に細められた。

 凉子の全身からは、もはや青白いプラズマの雷光は放たれていなかった。代わりに、彼女の身体そのものが、まるで純白のガラス細工のように半透明に透き通り始め、その内側から、目を射るような神々しい光が漏れ出していたのである。

 それは、彼女が天界を捨てて以来、ずっと心の奥底に封印し続けていた、天使としての本来の力――「極限の自己犠牲を伴う、無償の愛の光」であった。


「……ダボが。私の辞書に、敗北とか諦めっちゅうエラーコードは存在せえへんのよ。私はただ、この宇宙で最も効率的で、確実なバグの消去法(デリート)を実行するだけや」


 凉子は、腰のベルトから水晶の『月詠の刃』を取り外すと、それを孝子に向かって無造作に投げ渡した。


「なっ……!?」


 孝子は慌ててそれを受け取る。彼女の左手には漆黒の刃、右手には水晶の刃が握られることになった。


「あんたの右手にある下品な電光剣はいらへん。……私がこれから、あの壁の中枢に直接ハッキングを仕掛けて、システムの論理崩壊(クラッシュ)を引き起こす。壁が内側から崩れたコンマ一秒の隙間を縫って、その二つの『月詠の刃』を、同時にあの奥の次元の亀裂に突き立てなさい。……それで、全てが終わるわ」


「……ちょっと、お待ちなさいな! あなた様、まさか……!」


 孝子は、凉子の言わんとしていることの真意を悟り、その美しい顔を、これまでにないほど激しい驚愕と、そして「怒り」で歪ませた。


「その身を犠牲にして、防壁に穴を開けるおつもり!? ふざけないでちょうだい! あなた様は、このわたくしの手で、恐怖と絶望に顔を歪ませながら、ゆっくりと時間をかけて切り刻まれるべき極上のおもちゃなのですわよ! わたくしの許可なく、勝手にこの舞台から降りるような真似、万死に値しますわッ!」


 孝子は、他者の命を奪うことには一切の躊躇がない。だが、「自分の所有物」であると見定めた獲物が、自分の意志とは無関係なところで自ら命を絶とうとすることは、彼女の異常なまでのサディズムとプライドを最も激しく踏みにじる行為であった。


「……キャンキャンとうるさいネズミやね。あんたのその悪趣味なお稽古に付き合ってやるほど、私は暇やないんよ」


 凉子は、孝子の激昂を完全に無視し、純白のブーツで灰色の砂を蹴った。


「――システム・オーバーロード。絶対秩序(コスモス)、逆コンパイル開始」


 凉子の身体が、一本の凄まじい光の矢となって、漆黒の絶対防壁に向かって一直線に突撃した。

 彼女は、自らを守るための物理的なシールドを全て解除し、無防備な状態のまま、その両手を防壁の表面へと深々と突き入れたのである。


『――何ヲ企ンデイルカハ知ランガ、無駄ダト言ッタハズダ! 我ガ「虚無」ニ触レタ時点デ、オ前ノ存在ハ全テ情報トシテ分解サレ、我ガ一部トナル!』

X(Twitter)でも連載しています。

https://x.com/TakumiFuji2025

魅力的なキャラクターたちが躍動する物語をお楽しみください。

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