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ネザーワールド リヴァイヴ(冥界蘇生)2 ~サディスト魔女×冷徹な堕天使!相反する二人が狂気の世界を切り裂く!~  作者: たくみふじ
虚無の庭園(ゼロ・ガーデン)

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過去との決別㈠

「混沌」の魔女と「秩序」の堕天使。最悪で最強な二人の狂気の共闘劇!

 光も音も、そして時間の概念すらも存在しない、宇宙の法則の外側に広がる『虚無の庭園』。

 その灰色の砂漠の中心で、北條孝子と高清水凉子は、自らの精神を内側から崩壊させようとした『神託(オラクル)』の概念攻撃を、互いへの強烈な殺意と、己の美学への絶対的な自負によって強引に食い破った。

 孝子の右手には地獄の業火を纏う電光剣が、左手には月読命から託された漆黒の『月詠の刃』が握られている。

 凉子の右手には青白いプラズマを放つショック棒が、左手には同じく神気によって研ぎ澄まされた水晶の『月詠の刃』が握られている。

 二人の瞳は、もはや過去のトラウマの幻影に囚われることなく、はるか前方、庭園の最奥でドロドロと漆黒の膿を垂れ流し続ける巨大な次元の亀裂――『神託』のシステムの中枢核(コア)だけを、真っ直ぐに、そして冷酷に(にら)み据えていた。


『――愚カナ。タカガ人間ノ器ニ収マッタ程度ノ精神力デ、我ガ「虚無」ノ浸食ヲ跳ネ除ケタトシテモ、事態ハ何一ツ好転シテイナイコトガ、何故理解デキナイ?』


 次元の亀裂の奥から、無数のノイズが重なり合った『神託』の思念が、空間全体をビリビリと震わせて響き渡る。その声には、先ほどまでの絶対的な余裕は薄れ、計算外の「バグ」に対する明確な苛立ちと怒りが混じっていた。


『過去ノ幻影ヲ精神力デ払イノケタツモリダロウガ、オ前タチノ魂ノ根底ニ刻マレタ「弱点(エラー)」ガ消エテ無クナッタワケデハナイ。……ナラバ、ソノ弱点ヲ、物理的ナ圧倒的質量ヲモッテ、塵モ残サズニ()リ潰シテヤロウ』


 神託の思念が(とどろ)いた瞬間、二人の少女の周囲に広がる灰色の砂漠が、まるで巨大な沸騰する泥沼のように、ボコボコと激しく泡立ち始めた。

 そして、その灰色の砂の中から、先ほどの不定形の粘液のバケモノとは全く異なる、強固な物理的質量と、明確な「殺意」を持った巨兵たちが、次々と這い出してきたのである。

 孝子の前に立ちはだかったのは、身の丈が三メートルはあろうかという、漆黒の甲冑に身を包んだ無数の騎士たちであった。だが、その兜の奥には顔がなく、ただ冷たい赤い光だけが宿っている。彼らの手には、かつて孝子を地獄の底で苛んだ「拷問具」――焼け焦げた鉄の鞭、(のこぎり)状の刃を持つ大剣、そして魂を引き裂く棘のついた鎖が握られていた。

 それは、孝子が最も憎み、そして心の奥底で恐れていた「地獄の理不尽なシステム」そのものが、物理的な破壊力を持って具現化した姿であった。

 一方、凉子の前に立ちはだかったのは、純白の大理石でできたような、顔のない美しい天使の彫像の群れであった。彼らは皆、背中に生えるはずの翼を無残にもがれ、代わりにその両腕は、鋭く(とが)った巨大な氷の刃へと変異している。

 それは、凉子がかつて天界で目の当たりにした「個人の意思を剥奪された偽りの調和」、すなわち、彼女から論理と感情を強制的に奪い取ろうとした「同調圧力」という名のシステムが、暴力的な質量を持って具現化した姿であった。


『――サア、ドウダ? 自ラノ最モ忌ミ嫌ウ過去ガ、絶対的ナ力トナッテオ前タチヲ物理的ニ引キ裂コウトシテイル。精神論デハ、コノ肉塊ノ暴力ハ防ゲマイ。……大人シク絶望ニ平伏シ、我ガ新タナル法則ノ一部トナレ!』


「……ごきげんよう、地獄の亡霊ども」


 孝子は、迫り来る巨大な漆黒の騎士たちを前にしても、その場から一歩も下がることはなかった。彼女は、月詠の刃を構えたまま、ドレスコートの裾を優雅に翻し、極上の獲物を見つけた肉食獣のような獰猛な笑みを浮かべた。


「わたくしの精神攻撃に失敗したからといって、今度は随分と大掛かりな物理攻撃ですのね。……ですが、そのような鈍重で醜いガラクタの群れで、このわたくしの歩みを止められるとでも思いまして?」


『――強ガルナ。オ前ハ本当ハ、再ビアノ無意味ナ苦痛ヲ味ワワサレルコトニ、魂ノ底カラ震エテイルハズダ!』


 神託の嘲笑と共に、先頭の騎士が、燃え盛る鉄の鞭を孝子の細い身体に向かって全力で振り下ろした。

 空気を引き裂く轟音。だが、鞭が孝子の身体を捉える直前、彼女の身体から爆発的に噴き出した「赤い業火」が、鞭の軌道をいとも容易く弾き返した。


「……ええ。確かに、わたくしはかつて、地獄の底で理不尽な苦痛に震えるだけのか弱い小鳥でしたわ。……ですがね、神託とやら」


 孝子は、電光剣のグリップを強く握りしめ、その赤い刃を、まるで血のようにどす黒く、そして恐ろしいほどの熱量へと変化させていく。


「あなた様は、決定的な計算違いをしておりますの。わたくしの他者をいたぶるサディズムは、決して『過去の恐怖からの逃避』などという、安っぽい自己防衛ではありませんわ」


 シュゥゥゥゥッ!!


 孝子がその場で鋭く踏み込み、電光剣を横一文字に振り抜いた。

 極限まで圧縮された地獄の炎が、凄まじい衝撃波となって空間を駆け抜け、迫り来ていた数体の漆黒の騎士たちの上半身を、分厚い甲冑ごとバターのように真っ二つに両断した。


「わたくしは、あの地獄の理不尽なシステムの中で、ただ泣き喚き、許しを乞うだけの存在になることを、明確な意志を持って『拒絶』したのです。……誰の支配も受けない、誰にも奪われない、絶対的な『個』としての尊厳。それを証明し、誇示するための至高の手段こそが、他者にわたくし以上の苦痛を与え、その命を完璧に支配するこの『芸術』なのですわ!」


 孝子の言葉には、もはや一片の虚勢も、過去のトラウマへの怯えも存在しなかった。

 そこにあるのは、自らの歪んだ美学を、宇宙のいかなる法則よりも上位に置くという、神すらも恐れぬ圧倒的なエゴイズムの肯定であった。


「わたくしのこの炎は、恐怖を誤魔化すための偽りの光ではありませんのよ。……わたくしが、わたくし自身であるという、絶対的な真理を焼き付けるための、気高き魂の光ですわ!」


 孝子が左手に握った『月詠の刃』に、彼女の純度を増した地獄の炎が流れ込み、漆黒の刃の周囲に赤い稲妻のようなスパークを走らせる。


「さあ、ガラクタども! わたくしの極上の炎で、その醜い身体の隅々まで、芸術的な苦痛の悲鳴を上げさせてさしあげますわ!」


 孝子は、歓喜の笑声を上げながら、自らのトラウマの具現化である騎士の群れへと、一切の躊躇なく飛び込んでいった。赤い閃光が煌めくたびに、巨大な甲冑が次々と溶解し、灰色の砂漠に崩れ落ちていく。

 一方、背中合わせで顔のない天使の彫像群と対峙していた高清水凉子もまた、氷のように冷ややかな表情を微塵も崩すことなく、迫り来る氷の刃を正確無比なステップで(かわ)し続けていた。


「……ダボが。ホンマに、見てるだけで反吐が出るほど美しくないバグの群れやわ」


 凉子は、伊達眼鏡の中指でクイッと押し上げ、自らを囲む数百の偽りの天使たちを、冷徹な青い瞳でスキャンした。


『――ムダダ、堕天使ヨ! オ前ノソノ「論理(ロジック)」ナド、所詮ハ他者トノ関ワリヲ恐レタ孤独ナ箱庭ニ過ギナイ。感情トイウ不確定要素ニ耐エラレナカッタ、弱キ魂ノ逃避行ダ!』


 神託のノイズ混じりの声が、凉子の脳髄に直接語りかける。

 天使の彫像たちが、一斉に腕の氷の刃を振り上げ、凉子の純白のスーツを切り裂こうと凄まじい速度で殺到する。


「……フン。言うに事欠いて、孤独への逃避やて?」

 凉子は、襲いかかる無数の氷の刃を、右手のショック棒と左手の『月詠の刃』を交差させて完璧な角度で受け止め、その衝撃のベクトルを逸らして敵の体勢を崩した。


「あんたらみたいに、宇宙の法則とかいう巨大なシステムに依存せな存在意義も保てへん、同調圧力の塊みたいなバグに、私の崇高な論理の何が分かるっちゅうねん」


 凉子の全身から、青白い数万ボルトのプラズマが、これまで以上に激しく、そして極めて精密な幾何学模様の軌道を描いて吹き荒れ始める。

X(Twitter)でも連載しています。

https://x.com/TakumiFuji2025

魅力的なキャラクターたちが躍動する物語をお楽しみください。

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