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ネザーワールド リヴァイヴ(冥界蘇生)2 ~サディスト魔女×冷徹な堕天使!相反する二人が狂気の世界を切り裂く!~  作者: たくみふじ
第一章 偽りの鎮魂歌(レクイエム)

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介入と撤退㈠

「混沌」の魔女と「秩序」の堕天使。最悪で最強な二人の狂気の共闘劇!

 赤と青。地獄の業火と天の雷光。

 絶対に交わることのない二つの極限のエネルギーが、本牧埠頭の第七D倉庫の中央で正面から激突した瞬間、空間そのものが悲鳴を上げた。


 ドゴォォォォォォォンッ!!


 相反する絶対的な力が生み出した爆発的な衝撃波は、およそ数十トンはある鋼鉄のコンテナ群を、まるで子供が乱暴に蹴り飛ばした積み木のように軽々と吹き飛ばした。倉庫の屋根を支えていた太いH鋼の柱が飴細工のようにぐにゃりとねじ曲がり、はるか頭上の天窓からは、粉々に砕け散った強化ガラスの破片が、雨粒と共にキラキラと狂気的な輝きを放ちながら降り注ぐ。

 爆心地から全方位へと放たれた熱風とオゾンの嵐が、吹き飛ばされて意識を失っている人身売買組織のヤクザたちの身体を容赦なく壁に叩きつけ、彼らの運命を完全に決定づけていた。

 だが、その破壊の嵐の中心で、二人の少女は一歩も退くことなく、互いの得物(えもの)鍔迫(つばぜ)り合いの形に持ち込んだまま、至近距離でその殺意を激しくぶつけ合っていた。


「はぁぁぁぁっ!」


 北條孝子は、セーラー服の裾を爆風で激しく(あお)られながらも、白魚のような両手で電光剣のグリップを握りしめ、力任せに赤い炎の刃を押し込んだ。彼女の漆黒の瞳は、獲物を前にした極北の肉食獣のように、強烈な歓喜とサディズムに妖しく輝いている。


「まあ、素晴らしいステップですわね、堕天使様。わたくしの『炎』を正面から受け止めるなんて、なかなか骨がおありのようですわ。ですが、その無機質で退屈な瞳が、絶望と苦痛の涙に染まる瞬間が、わたくしは待ち遠しくてたまりませんのよ!」


 孝子の放つ地獄の業火は、ただの物理的な熱ではない。それは触れた者の魂に直接作用し、「無限の苦痛」という情報を強制的に脳髄へ書き込む呪われた炎である。炎の刃が涼子の電流鞭と拮抗(きっこう)するたびに、ジリジリと焦げるような熱と、怨念の()もった瘴気(しょうき)が、涼子の純白の肌を舐めようと(うごめ)いた。


「……お黙りなさいな、地獄のネズミ」


 対する高清水凉子は、伊達眼鏡の奥で氷のように冷たい青い瞳を細め、片手で電流鞭の柄を操作しながら、孝子の力任せの斬撃をミリ単位の絶妙な角度で逸らし、いなしていた。


「あんたの攻撃は、感情任せで無駄が多すぎるんや。力任せに振り回すだけの野蛮な炎なんて、わたくしの演算の前では、ただの予測可能な物理現象に過ぎへん。……ダボが。そんな非論理的なバグで、わたくしの秩序(コスモス)を崩せると思うとうの?」


 凉子の言葉と共に、電流鞭から数万ボルトの青白いプラズマが弾け、孝子の電光剣の炎を相殺する。凉子のヘッドマウントディスプレイには、孝子の筋肉の収縮率、炎の温度変化、そして周囲の酸素濃度の低下までが全てリアルタイムの数値データとして表示され、瞬時に次の回避行動と反撃の軌道が算出され続けていた。

 だが、凉子の内心には、表向きの冷徹な言葉とは裏腹に、強い苛立ちが渦巻いていた。


(……ごっつい不快やわ。わたくしの計算では、とっくに相手の武器の出力を上回り、システムをショートさせているはずやのに。この女の炎は、物理法則を無視して、こちらの雷を『喰らおう』としとる……!)


 それは、秩序の側からすれば絶対にあり得ない事象であった。混沌の力が、論理の壁をじわじわと侵食し、凉子の絶対的な計算式に、常に微小な「誤差(エラー)」を生じさせているのだ。


「ふふふ、強がりはおよしなさいあそばせ。あなた様のその澄ました仮面に、焦りの色が浮かんでおりますわよ?」


 孝子は、電光剣を押し込みながら、空いた左手でスカートのポケットから黒い千枚通しを引き抜いた。


「わたくしは、相手が足掻けば足掻くほど、その心臓に針を突き立てる瞬間の快感が深まる性質(たち)でしてよ。さあ、大人しくわたくしの芸術の極上の(にえ)となりなさい!」


 孝子が千枚通しを凉子の喉元へ向けて閃かせようとした、まさにその刹那(せつな)であった。


『――お嬢様ッ! いけません、一旦距離を取っておくんなせえ!』


 孝子の足元の影から、ガーディの切羽詰まった怒号が響き渡った。


『――凉子様、直ちにバックステップを! 空間の熱量が臨界点を超えています!』


 同時に、凉子の耳元の通信機からも、亨の緊迫した声が弾けた。

 二人の少女は、互いのサポート役からの警告に舌打ちをしながらも、本能的な危険を察知し、同時に床を蹴って大きく後方へと跳躍した。


 ドォォォォンッ!!


 直前まで二人が立っていた空間で、圧縮され限界まで拮抗していた炎と雷が臨界点に達し、小規模なプラズマ爆発を引き起こした。コンクリートの床がすり鉢状に抉れ、周囲の空気が一瞬にして真空状態となる。もしあのまま至近距離で打ち合いを続けていれば、二人とも無傷では済まなかっただろう。

 距離を取った二人は、乱れた息を整えながら、再び互いを凄まじい眼光で睨みつけた。だが、その激突を物理的に妨げているのは、もはや彼女たち自身の力だけではなかった。

 この第七D倉庫の屋根の上、そして周囲を囲む本牧埠頭の漆黒の闇の中において、二人のサポート役による、主たちの戦闘を遥かに凌駕するほどの、恐ろしく高度で致命的な「情報戦」と「電子・霊的空間での防衛戦」が、限界点に達していたのである。

 神戸の地下ラボラトリー。

 壁面を覆い尽くす無数の大型モニターは、次々と真っ赤な警告(アラート)の文字で埋め尽くされていた。中央のメインコンソールで、詫間亨の十本の指は、人間の動体視力では追えぬほどの速度でキーボードを叩き続けていた。彼の額には、冷たい汗が幾筋も流れ落ちている。


「……信じられない。私の構築した多重防壁(マルチ・ファイアウォール)が、論理的なハッキングではなく、物理的なデータ回線を直接『呪い』で腐食させるような、未知の手法で侵食されている……!」


 亨は、モニターに映し出された、真っ黒なコールタールのようなノイズが、ネットワークの深層へと這い寄ってくるのを、戦慄(せんりつ)と共に視認していた。


「相手のサポート役は、人間のテクノロジーを根本から否定する、高位の霊的存在……恐らくは、地獄の最深部を司る番人クラスの化け物だ。私の放ったステルスドローン三機を、瞬時に空間ごと捻じ曲げて撃墜したばかりか、こちらが展開した霊的スキャンの逆探知ルートを辿って、この神戸のメインサーバーの座標を割り出そうとしている」


 亨は、自らの持つ最高峰の技術が、非論理的なオカルトの力によってハッキングされているという事実に、研究者としてのプライドを激しく逆撫でされていた。

X(Twitter)でも連載しています。

https://x.com/TakumiFuji2025

魅力的なキャラクターたちが躍動する物語をお楽しみください。

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