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ネザーワールド リヴァイヴ(冥界蘇生)2 ~サディスト魔女×冷徹な堕天使!相反する二人が狂気の世界を切り裂く!~  作者: たくみふじ
第一章 偽りの鎮魂歌(レクイエム)

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月下の激突㈡

「混沌」の魔女と「秩序」の堕天使。最悪で最強な二人の狂気の共闘劇!

 赤い閃光が、夜の闇を円を描くように切り裂いた。

 それは単なる物理的な切断ではない。刃が男たちの腕や脚を掠めた瞬間、その切断面から地獄の炎が神経を伝って魂の奥底まで侵入し、彼らの精神を「苦痛」という情報だけで完全に焼き尽くす。


「ぎゃあああああっ!」


「痛いッ! 熱いッ! 助けてくれェェェッ!」


 一瞬にして、第七D倉庫の入り口付近は、手足を失い、泥の床をのたうち回りながら絶叫する男たちの、地獄のオーケストラ会場と化した。孝子は返り血の一滴も浴びることなく、その絶望の悲鳴を極上の音楽のように聞き入りながら、恍惚とした笑みを浮かべていた。


「ふふふ……ああ、素晴らしい音色。もっと、もっとわたくしを楽しませてちょうだい」


 東の入り口が地獄の業火と苦悶の絶叫に包まれていたまさにその頃。

 第七D倉庫の遥か上空、冷たい雨雲が垂れ込める空から、もう一つの圧倒的な異常が、音もなく、そして美しく降下してきていた。

 重力を完全に無視し、まるで月の光の階段を滑り降りるかのように優雅に舞い降りたのは、深いワインレッドのブレザーに身を包んだ、高清水凉子であった。

 彼女は、倉庫の西側に設けられた巨大な天窓の強化ガラスの上に、羽のように軽く着地した。


『――凉子様。現在、倉庫の東側入り口より、高密度の霊的エネルギーの侵入を検知。熱源反応は異常な数値を示していますが、物理的な火器によるものではありません。間違いなく、関ヶ原で観測したあの『赤い閃光』の主です』


 耳元の真珠の通信機から、神戸の地下ラボにいる詫間亨の、極めて冷静で論理的な声が届く。


「ええ、分かっとうよ、亨さん。こんな離れた場所におっても、あの下劣で吐き気のするような『苦痛』の匂いが漂ってくるんやからな」


 凉子は、天窓越しに眼下の倉庫内部を見下ろし、心底不快そうに美しい顔を歪めた。


「本当に、美しくないノイズですわ。命という不完全なシステムを停止させるだけなら、一瞬でデリートすれば済むこと。それをわざわざ、無意味な悲鳴を上げさせて喜ぶなんて。あんな野蛮なバグ、この宇宙の秩序(コスモス)に対する最大の冒涜ですのよ」


『同感です。ですが、まずは我々のミッションである、人身売買組織の処理と、捕らわれている少年少女たちの無力化……もとい、保護を優先すべきです』


「ええ。この世のゴミどもを、わたくしの雷で塵一つ残さず浄化してやりますわ」


 凉子は、右手の指先を天窓の強化ガラスにそっと触れた。

 瞬間、彼女の脳内で空間の物理法則が演算され、書き換えられる。強固なはずのガラスが、まるで水面のように波打ち、彼女の身体は音もなく、倉庫の内部へと「透過」して落下していった。

 地上十メートルの高さからの自由落下。だが、地面に激突する寸前、彼女の身体はフワリと減速し、コンテナの影に一切の足音を立てずに着地した。

 彼女の目の前には、東の入り口で起きている異常事態に気を取られ、背後が完全に無防備になっている十数名の武装したヤクザたちがいた。


「……あんたたち、こんな所で何しとん?」


 背後から唐突に響いた、おっとりとした神戸のお嬢様言葉に、男たちが弾かれたように振り返る。


「なっ、なんだお前は!? どっから入ってきやがった!」


「ごきげんよう、皆様。わたくしは、あなた方のような『美しくないバグ』を、この世界から消去するために参りましたの。ごっつい迷惑やから、さっさとシステムを強制終了してや」


 言い終わるが早いか、凉子はスカートのベルトから、銀色に冷たく輝くショック棒を抜き放った。


「ふざけんな! 撃てェッ!」


 男たちが引き金を引く。だが、凉子の伊達眼鏡のディスプレイには、男たちの筋肉の収縮、銃口の向き、弾丸の弾道が全て青いデータとして可視化され、最適な回避ルートがミリ秒単位で演算されていた。

 彼女の身体が青い残像を残してブレる。

 弾丸の雨を、数ミリの首の傾げと最小限のステップだけで完璧にすり抜けた凉子は、瞬時に男たちの懐へと飛び込んだ。


 バチッ! バチッ! バチッ!


 静かで、しかし強烈な青白い閃光が、連続して闇夜に弾けた。


「……ッ!」


 男たちは、悲鳴を上げる間も、苦痛を感じる間もなかった。ショック棒から流し込まれた致死量の特殊周波数の電流が、彼らの心臓と脳髄の生体活動を完全に、そして一瞬にして「停止」させたのだ。

 巨体が次々と、糸を切られた操り人形のように崩れ落ちていく。血の一滴も流れない。苦痛の呻き声すら上がらない。完全なる即死。


「……遅すぎるやん。あんたらの動きには、知性も論理もあらへん。ただの獣の暴走やな。ごっつい美しくないわ」


 凉子は、周囲を囲もうとする残りのヤクザたちを一瞥し、小さく溜め息をついた。


「亨さん、このゴミども、まとめてデリートしたるわ」


 凉子はショック棒の出力を切り替え、もう一つの形態を起動させた。柄の先から青白いプラズマの超高圧電流が(ほとばし)り、長さ数メートルの光の鞭となって大気を焦がした。


 電流鞭ライトニング・ウィップ


「さあ、お掃除の仕上げやでぇ。塵一つ残さず浄化してや」


 凉子が手首を軽くスナップさせると、青い光の鞭が空気を切り裂き、逃げ惑う男たちの群れへと襲いかかった。


 ゴオォォォッ!!


 鞭が触れた瞬間、男たちの体は数万ボルトの超高圧電流によって内側から焼き尽くされ、一瞬にして黒焦げの炭のオブジェへと変貌した。

 倉庫の西側は、悲鳴一つ上がらないまま、ただ青白いオゾンの清浄な匂いだけが充満する、完全なる「消去」の空間へと変貌していた。


 倉庫の東側から侵食する、赤い「苦痛」の炎。

 倉庫の西側から侵食する、青い「浄化」の雷。

 人身売買組織の男たちは、二つの圧倒的で異質な死の前に、文字通り挟み撃ちにされ、為す術もなく処理されていった。

 そして、その二つの力は、コンテナが積まれた倉庫の中央、最も開けたコンテナヤードの広場において、ついに真っ向から衝突することとなる。


「ひ、ひぃぃぃッ! 来るな! 化け物どもめッ!」

X(Twitter)でも連載しています。

https://x.com/TakumiFuji2025

魅力的なキャラクターたちが躍動する物語をお楽しみください。

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