星なき夜のアウロライズ 第三話 かつて、英雄は星を殺した?!
リノンは勢いよく魔剣アウロライズを振るった。
しかし、古き剣はただ空を斬っただけだ。
「どうして? なにも起こらないの?」
唖然とするリノンに黒き闇の塊が刃ののように切り付けてくる。
「――リノン、伏せろ!」
ライルが叫ぶのと同時に、巨大な影が頭上を通り過ぎた。
街を飲み込む闇の中から現れたのは、かつての仲間たちの無惨な成れの果て――『星獣』。
ライルは震える手で剣を握りしめる。
彼の瞳に映っているのは、目の前の怪物ではない。
三年前、東の果て『星堕ちの地』で見た光景だ。
(まずい……また、このフラッシュバック……か) ライルの表情が軋む。
夜空を見上げるたび、喉の奥がひりつく。
星がない。それだけのことなのに……。
あのときも、そうだ…天は静かだった。
石の床。円陣。光の柱。
血の匂いと、祈りの声。
――やめろ。
中央に立つ少女が、こちらを振り返る。
ステラは、いつものように少し困った顔で笑った。
「だいじょうぶですよ、……ライル」
違う。
大丈夫なわけがない。
剣を握る理由を、思い出せ。
世界? 光?
そんなもののために、あたしたちは――
「彼女を捧げる」と誰かが言った。
正しい声だった。いや、正しすぎる声だった。
「世界を守るためだ」
理解できてしまうのが、いちばん残酷だった。
だから、俺は――
走った。
光の陣を踏み越え、術式に剣を突き立てた。
「逃げよう、ステラ!」
あの一瞬。
迷いと、希望と、子供じみた優しさ。
次の瞬間、光が裂けた。
悲鳴。
闇。
落ちる星。
ステラが叫んだのか、星が泣いたのか、わからない。
目の前で、彼女の身体が歪んだ。
人の形を、保てなくなった。
「――やめろぉぉぉ!!」
俺の声を、彼女はもう理解しなかった。
仲間たちが倒れていく。
剣が折れ、祈りが途絶え、名前が消えていく。
最後に残ったのは、
血に濡れた床と、星のない空だけだった。
救いたかった。
殺したくなかった。
その願いのせいで、
彼女は人間であることを失い、世界は光を失った。
星のない暗闇ばかりの、この夜空は――
俺のせいだ。




