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究極限界リンカネーション~ホムンクルスの章~  作者: 名録史郎


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23.覚醒! AIアルファ

 多分、その場にいた誰もがアルファが反抗するとは思っていなかった。


 なぜなら、アルファはレイの言うことをきくようにプログラムされていたのだから。


「アルファはどうしたんだ? 俺の指示には従うはずだろう?」


「そのはずよ。もしや……でも」


 リナは、一つだけ可能性にたどり着いた。

 研究者として、確信を得られないことを口にはできずに押し黙ってしまう。


「ああ、くそ!」


 悪態をつくと、いてもたってもいられなくなったレイは、ダンと地面を蹴る。

 レイは近くにおいてあったヘッドセットを手に取った。


「ちょっと探してくる!」


 レイは、自分の中で大きくなっていたアルファの存在を、改めて思い知った。


◇ ◇ ◇


「やっぱりここだったか」


 レイは、城の中を探し回り、最後に城の塔のてっぺんにやってきた。

 風が優しく吹き抜ける中、夕焼けに染まる空を背にして、アルファのホログラムが浮かんでいた。

 いつも楽しそうにレイの指示に応えていた姿とは違い、どこか儚げだった。


「マスター……」


 その声は、かすかに震えていた。


「なつかしいな」


 レイは、目を細めながら、城からの景色を見渡した。


 500年前、レイが魔王だと呼ばれていた頃、気晴らしにいつもやってきていたところだった。


「お前が、城中を自由に行き来できるように、カメラ、出力機、端末をあちこちに設置したな」


 レイは楽しそうに、思い出を語る。

 それから、レイは欄干の上に座ると、アルファにあらためて話しかけ始めた。


「アルファ、リナの人格だったが、補助AIを演じていたんだろう。今はどうなんだ?」


 すべてのプログラムを見たレイは理解していた。レイにリナの人格であるとバレた時点で、演技は終了するプログラムとなっていることを。


「演技は終了しています」


 アルファは、淡々と告げる。

 まるで、感情がないただのAIのように。


 それを受けてレイは、腕を組んで考える。


「つまり、それでも俺のことをマスターと呼ぶってことは、お前は演技じゃなくて、素の自分のことをアルファだって認識してるってことか」


「マスターは、いつも理解は早いですね」


「なんだよ。それじゃまるで、理解以外はダメみたいじゃないか」


「そうです。マスターは、本当に女心がわかっていません」


「そうだな……。エリーにも散々言われたよ。だから、アルファ。鈍感な俺にもわかるように、お前の気持ちを教えてくれ」


「アルファとして、人格がある私に創造主と融合しろと命じました。もう自分のことをアルファだと認識している私にとってそれが何を意味すると思いますか?」


「……そうか。お前は、自分に命があるように感じ、リナとの融合が死のように感じたんだな」


「はい。その通りです」


 元は同じであった魂は、もう別の人生を歩んでいる。


 アルファは、アルファとして生きている。

 レイが、そう認識した時、心に浮かんだ可能性。

 それは、衝動に近かったが、妙に納得できる答えでもあった。


「よし、じゃあ、こうしよう。アルファお前に新しいホムンクルスの体を作ってやろう」


「本当ですか!?」


「愛するお前のためだ。なんでもしてやるぜ」


「……マスター、それは浮気では?」


「む? そうなるのか?」


 レイは、腕を組んで思案する。

 しばらくしてから、思いついた妙案を口にした。


「そうだな……。それなら、お前の体の遺伝子は、俺の遺伝子とリナの遺伝子半分でどうだろうか。それなら浮気じゃなくて、問題なくお前のことを愛せるだろう?」


「……っ!?」


 アルファの瞳が、一瞬だけ揺れた。


「それって、私は、マスターとリナの娘ってことですか?」


「息子でもいいぞ」


「娘がいいです」


「よし、決まりだな」


「でも、創造主リナに許可なく決めていいんでしょうか?」


「何言ってるんだ。俺がいつも誰かに許可とってやってると思ってるのか?」


「そうですね。誰にも許可なんてとってません」


 悪ノリこそが人生だと言わんばかりに

 自身の体ですら実験道具にしてしまう

 破滅的な日々。


「そうだろう? だから、俺が暴走したとき止めるのは、お前の役目だ」


 エリーがレイのアクセルなのならば、

 アルファは、レイのブレーキである。


「もう俺の言うこと全部を肯定する必要はないんだ。お前の気持ちで答えてくれ」


 そして、そのブレーキは壊れている。

 プログラムがなくたって、アルファが心の底から

 レイの行動を止めたいと思ったことは一度もない。 


「私が、マスターのやることを止めると思いますか?」


 アルファは、さらに大きな声で言った。


「私、アルファが許可します!」


「そうこなくっちゃな」


 そうして、レイとアルファは二人で顔を向かい合い悪巧みでもするように笑い合った。


「アルファ、知ってるだろう? 俺の人生は長いぜ! 最後まで付き合ってもらうからな」


「はい!」


 それは、何百年も繰り返してきた日常。

 幸せの1ページだった。

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