9.恐怖! 機械人間墓地
ルミシアの家を出発したレイたちは、ルミシアに聞いた情報を頼りに、壊れた機械人間の目撃場所へ向かう。辺りは、廃墟と化した建物が立ち並び、夜の闇に包まれている。
「こんな場所に、壊れた機械人間なんてでるのかな……?」
エリーが不安そうに呟いたその時――。
「いたぞ。あいつだ!」
レイが指さした先に、ギクシャクと動く影があった。
金属のきしむような音が響く。
その機械人間の片腕がぶら下がったようになっていて、機能していないのは明らかだった。
さらに、時折バチリと火花も散っている。
それでも、まるで何かに突き動かされているようにフラフラと歩き続けている。
「まるで……アンデッドみたいですね」
レイは、手を顎にあてて、頷く。
「よし。なにしてるか聞いてみるか」
「正気ですか!?」
エリーが目を丸くする。
「敵意は感じなかったって話だからな」
レイは気にする様子もなく、キャンピングカーを降りると、壊れた機械人間を追いかける。
「先生の神経はどうなってるんだろう?」
エリーは、半ば呆れながらも、慌ててその後を追いかける。
数分後――。
不意に目の前の景色が開けた。
そこに広がっていたのは、広大な墓地だった。
その場所は、錆びついた機械の部品や朽ちた人工的な構造物が散乱している不気味な場所だった。
墓石の代わりに、データプレートが並んでいた。
その周りを、先程追いかけてきた壊れた機械人間と同じような個体が彷徨っている。
「ここは……?」
エリーは呆然と立ち尽くして、周囲に広がる光景に見入った。
「機械人間は死んだりしないのになんで、墓なんかあるんだ? それにあいつらは?」
「機械人間になれば、死ぬことのない存在になれるんじゃ?」
エリーが呟く。その声は震えていた。
エリーは、いままで聞かされてきた内容と目の前に広がる悲惨な光景との乖離に胸が苦しくなった。
「結局、機械人間も死ぬんだな」
レイは、冷めた声で言った。
「先生も死んだりしませんよね」
「いや、俺は不死じゃねぇよ。多少の怪我はすぐ回復するが、一撃で脳を完全粉砕されるような攻撃を受けると蘇生は無理だな。ホムンクルスはバックアップみたいなことできない」
「ああ、そうでしたね」
脳は培養できず、破損が激しいとホムンクルスといえど死んでしまう。
そう教えてもらったことをエリーは思い出した。
目の前の、彷徨うゾンビのような機械人間たちのことを考えると、不死はデメリットのように感じる。
よく聞くと、機械人間たちはうわごとのように何かを呟いている。
「ああ、私たちは、幸せな存在に」
「これからは不自由なく」
「ずっと健康に……」
口々に意味不明な言葉をまき散らしながら、ゾンビのように蠢いていた。
まるで、自分自身に言い聞かせているようにも感じる。
正気は確実になさそうだった。
「随分と中途半端に壊してるな」
わざとなのか、ほとんどの機械人間達は、半壊のような状態だった。
まるでなにかに罰せられたように。
永久に彷徨うことを運命づけられているようだった。
「酷いことするな……。しかたない俺が引導を渡してやるか……」
そういいながら、レイは空に手を伸ばす。
究極理論「物質交換理論」
レイは自分の武器であるブラスターガンを取り出すと機械人間たちに引き金を引いていく。
痛みを感じないように、弱めの出力で人格データだけを壊すが、すぐに復帰し、動こうとする。
「もう少し出力あげるか……。それにしても、なんか変だな? アルファ解析を」
「はい。マスター」
レイが足につけているタブレット端末からアルファが飛び出して、辺りのスキャンを開始する。
しかし、その間にも――。
撃ち抜いたはずの機械人間たちが、バチバチと火花を散らしながら起き上がる。
「おいおい、マジかよ……!」
「解析結果が出ました。彼らはデータ破壊後、すぐさまバックアップデータから復元されているようです」
「はぁ? こんな中途半端な状態でか?」
「はい」
「なら、サーバーが電波の届く範囲にあるはずだろう。探ってくれ」
「はい。マスター。逆探知を開始します」
「解析結果でました。この墓地の中央にある塔から信号が発信されています」
「了解だ」
究極理論「物質交換理論」
再びレイはアポーツを展開すると、遠距離射撃用のライフル型ブラスターガンを取り出した。塔に向かって、ブラスターガンを撃ち込むと、雷でも打たれたように、塔が火花を散らし、倒れていく。
「バックアップデータの消去を確認。あとは、倒せば復活しません」
「くだらないことしやがって」
レイは、吐き捨てるように言うと、次々と機械人間の成れの果て達にむかって銃弾を打ち出した。
「これで、終わり、か……」
最後の一人を撃ち抜くと、墓地はようやく本来の静けさを取り戻していた。
「どうして、こんなことに」
エリーは涙を流しながら、彼らのために手を合わせて、そっと祈りを捧げた。
「こんなものが、お前の目指した幸せな未来なんかじゃないよな……リナ」
レイの呟きは、闇の中へと消えていった。
しかし、その手は、静かに震えていた。




