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 無視する訳にもいかず、保は、どうにでもなれ! と、思い切って、チェーンを外し、ドアを開けた。

「なんだ、いるじゃないか…」

「じいちゃん、どうしたんだ、いま頃。出てきたのか?」

「出てきたもなにも…。保、お前な、机にこれ忘れとったろ。じいちゃん、気づいてな、持ってきてやったぞ。わっはっはっはっ…」

 長左衛門は肩から斜め掛けした黒鞄かばんから保がXパーツと名づけた基盤入りの小箱を取り出して手渡した。外見はかたくなに守るステッキに羽織袴はかまの和服姿である。そして、長く伸びた白髪の顎鬚あごひげを片手の指先で撫でつけた。こんな夜分に、なにが可笑しいんだ…とは思えたが、保自身、どこへ行ったんだ…と探し続けていた重要部品だったから、それ以上は突っ込めなかった。

「じいちゃん、立ち話もなんだから、中へ入ってお茶でも飲みなよ。ゆっくりしていけるんだろ?」

「いや、今夜はわしの旧友に会うんだ。某財閥の会長でな、是非泊まってくれと頼まれとるんだ。だからのう…積もる話はあるが、改めて来る。それじゃな。タクシー、待たせとるからのう」

 一方的にそう語ると、長左衛門は素早く背を向け、去っていった。年老いてなお機敏な行動力。それはいったいどこから生まれるんだろう…。保は茫然と長左衛門の遠退く姿を見送った。そして、姿が消えると、片手に持ったXパーツの小箱をじっと眺めた。

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