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不意にその残像が保の脳裡をよぎった。両瞼まぶたを開けると、ベッドサイドにはアンドロイドの沙耶が立っていた。その微笑んで立つ姿は、完璧に初恋の相手の沙耶だった。

『はいっ、着替えっ! 顔、洗ったら、すぐに食事ねっ。…まだ、時間はあるわねっ!』

 足元に、いつもの外出用の服が置かれている。保は沙耶にかされ、ベッドを降りた。

━ 完璧だ! が、少しタメ口が気になるぞ…。まっ、いいか! 外観も口調も本物の沙耶と遜色ないしな… ━

 着替えて洗面台へ急ぎながら、保はそう思った。洗顔を終え、口をすすぎ、歯を磨く。昨日はなかった真新しいタオルが鏡の下の棚に置かれていた。おおっ! と思いながら顔を拭き、食卓テーブルの椅子へ座ると、タイミングを推し量ったかのように、沙耶が温めたミルクをコップに入れて現れた。テーブル上に置かれた幾品かの料理皿も、どこか人間っぽい暖かさが感じられた。昨日まではなかった雰囲気だった。こりゃ、いいぞ! と保は第一感、思った。その第一感の中には、これなら外へ連れ出しても気づかれないな…という気持が含まれていた。

 次の日、保はいつもと変わらず家を出た。マンションの出口までは沙耶が送り出してくれた。改良前の岸田2号は、こうはいかなかった。ドアを閉じ、歩き始めた保の顔は思わず緩んだ。

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