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『そうよね。今回は私が軽率だったわ。大丈夫よ、私のことは何一つ、分かんないんだから、あの男…』
「そりゃそうだろうけどさ…。これじゃ、俺がいないときの自由外出は駄目だな。仮免はアウトってことで…」
保はまた同じようなことが起こることを恐れていた。沙耶が言ったとおり今回は丸く収まったが、プログラムの組み替えがいるか…と保は、ふと思った。自分がいるときはいいとしても、自由行動させるには些か疑念が残った。地下鉄の車内の揺れが、心なしか保には吊革を持つ指先に重かった。仮免の郊外試験でこれだから、まだまだ前途は遠そうだ。横を見れば、隣に立つ沙耶は揺れにピクリ! ともせず、しかも吊革を持たずに停止している。対面席に座った客からは、妙な女だな…と映るかも知れない。幸い、対面の客は新聞を広げ、気づく気配はなかった。ここも修正の要ありか…と、保は、ふたたび思った。
僅かなことだったが、修正プログラムの完成には、その後、一週間を要した。すべての組み換えが終わり、沙耶も自室へ引き上げた。疲れからか、保は俄かに睡魔に襲われた。寝室へ入り、ベッドに寝ころぶ。ようやく仮免くらいはOKだな…と自負したとき意識は遠退いた。保の携帯に馬飼商店の中林から電話が入ったのは、その後しばらくしてである。保は無意識で携帯を手にした。
「おお! 岸田か。俺だ」
「なんだ、お前か。何の用だ、こんな遅く…」
保がベッドサイドの時計を見ると、一時半ばを指していた。




