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「おお…済まぬのう」
『軽い夕食をオーダーしておきましたので、間もなくボーイが参ると存じます。明朝は七時に起動し、ノックをさせて戴きます』
「ほっほっほっ…、モーニングコールが省けるわ」
「ごくろうさま…」
三井は里彩に労を労われ、ペコリと頭を下げた。そして部屋を退去しようとしたが、ふたたび長左衛門にも深く一礼して部屋を出ていった。
「堅ぐるしい奴じゃのう…」
長左衛門は、ふたたび顎鬚を撫でつけながら小さく呟いた。
「おじいちゃま、おじちゃんのところは?」
「それよ…。今、ここまで出てきておることを保に知らせておらぬからのう。まあ、里彩も夏休みじゃて、そう焦ることもなかろう。それに、保のマンションへ出向く前に三井に話さんとのう。奴が今度の総責任者じゃからのう。作戦もあろうし…」
「作戦? 三井と沙耶さん…どちらも侮れないわね」
「ほっほっほっ…、いい勝負じゃて。三井も性能を高めたからのう」
そのときドアがノックされた。
「ルームサービスでございます」
「おお! 開いておりますぞ。お入り召されい!」
長左衛門が古風な言い回しで了解すると、凛とした制服のホテルマンが数人、ワゴン車に乗せた料理を運び入れた。
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その後は二人で手当り次第に料理を平らげ、わずか半時間で、すべては食べ尽くされた。隣室の三井は、すでにベッド上で停止し、冷たくなっていた。人間なら冷たくなる場合は些か問題で、病気とか死を意味することもあるが、アンドロイドの三井には、むしろ逆に薬となり、熱冷却に有効だった。人の疲れは筋肉の凝りとか、けだるさだが、三井の場合は基盤や回路が熱を帯びることである。もちろん、自動制御の冷却機能により熱は放散されていたが、この夏の季節、外気温の高さは馬鹿にならず、三井としては、ようやく体熱を下げられる状況に至ったのだ。とにかく、そういう状況で、その夜は更けていった。
「三井よ、昨夜、里彩とも話しておったのだが、保のところへ行こうと思うておるのじゃ。連絡を入れようと思おたのじゃが、その前にお前に訊ねておこうと思おてな」
『そうでございましたか。それは賢明なご判断かと存じます。こういうことは万事、タイミングというものがございます。この三井が悪いようには致しませんので、しばしご猶予を頂戴致したく存じます』
「そうか…。では、そうしようかのう。それにしても、相変わらず堅苦しい物言いじゃわい。わっはっはっはっ…」
久しぶりに長左衛門の会心の大笑いが出た。
「すみません。そのようにお作り戴いておりますもので…。では、そういうことで一日だけお待ち下さい。あらゆる情報とデータにより、ベストタイミングを探ることと致します」




