表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
235/310

-235-

「おお…済まぬのう」

『軽い夕食をオーダーしておきましたので、間もなくボーイが参ると存じます。明朝は七時に起動し、ノックをさせて戴きます』

「ほっほっほっ…、モーニングコールが省けるわ」

「ごくろうさま…」

 三井は里彩に労をねぎらわれ、ペコリと頭を下げた。そして部屋を退去しようとしたが、ふたたび長左衛門にも深く一礼して部屋を出ていった。

「堅ぐるしい奴じゃのう…」

 長左衛門は、ふたたび顎鬚を撫でつけながら小さく呟いた。

「おじいちゃま、おじちゃんのところは?」

「それよ…。今、ここまで出てきておることを保に知らせておらぬからのう。まあ、里彩も夏休みじゃて、そう焦ることもなかろう。それに、保のマンションへ出向く前に三井に話さんとのう。やつ今度こたびの総責任者じゃからのう。作戦もあろうし…」

「作戦? 三井と沙耶さん…どちらもあなどれないわね」

「ほっほっほっ…、いい勝負じゃて。三井も性能を高めたからのう」

 そのときドアがノックされた。

「ルームサービスでございます」

「おお! 開いておりますぞ。お入り召されい!」

 長左衛門が古風な言い回しで了解すると、凛とした制服のホテルマンが数人、ワゴン車に乗せた料理を運び入れた。


-236-

その後は二人で手当り次第に料理を平らげ、わずか半時間で、すべては食べ尽くされた。隣室の三井は、すでにベッド上で停止し、冷たくなっていた。人間なら冷たくなる場合はいささか問題で、病気とか死を意味することもあるが、アンドロイドの三井には、むしろ逆に薬となり、熱冷却に有効だった。人の疲れは筋肉の凝りとか、けだるさだが、三井の場合は基盤や回路が熱を帯びることである。もちろん、自動制御の冷却機能により熱は放散されていたが、この夏の季節、外気温の高さは馬鹿にならず、三井としては、ようやく体熱を下げられる状況に至ったのだ。とにかく、そういう状況で、その夜は更けていった。

「三井よ、昨夜、里彩とも話しておったのだが、保のところへ行こうと思うておるのじゃ。連絡を入れようと思おたのじゃが、その前にお前にたずねておこうと思おてな」

『そうでございましたか。それは賢明なご判断かと存じます。こういうことは万事、タイミングというものがございます。この三井が悪いようには致しませんので、しばしご猶予を頂戴致したく存じます』

「そうか…。では、そうしようかのう。それにしても、相変わらず堅苦しい物言いじゃわい。わっはっはっはっ…」

 久しぶりに長左衛門の会心の大笑いが出た。

「すみません。そのようにお作り戴いておりますもので…。では、そういうことで一日だけお待ち下さい。あらゆる情報とデータにより、ベストタイミングを探ることと致します」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ