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『あちらです…』

 慣れた仕草で三井がおごそかに指さす方向を長左衛門と里彩は見た。そこには有名な大提灯が下がる寺門が展望できた。三人は参詣の後、界隈を適当に散策して楽しんだ。もちろん、遠出の全責任を受け持つ三井は楽しんでいる訳ではなかった。分刻みでミスせず予定を実行していく責任感だけで、人としての感情は希薄だった。その点が、ほぼ人間に近づいた感情システムを保持し、繊細なプログラムを内臓する沙耶とは異なっていた。長左衛門も多少、それが気がかりだったが、以前のような人が妙に思う行動や言動は失せていたから、えて見ぬ振りをしていた。二人が美味い洋食に舌鼓を打っている間、三井は店前でホテルの宿泊予約をしていた。

『はい…。三名ですから、よろしく。六時過ぎにはチェックインの予定です』

 三井は電話をする前に、幾つかのホテルにターゲットを絞り、綿密なデータを入手していた。その後、最も適当と思えたホテルをピックアップし、電話したのである。だが、電話を入れるときにはホテルの空き室状況は察知していた。携帯端末と指先から出し入れできる自己端末を繋ぎ、情報入手したのだ。そんなことで、事がすべてスムースに運ぶのは道理だった。

 午後七時過ぎ、東京タワーの夜景が鮮やかに浮かぶ某ホテルの高層の一室に三人? は存在した。

わたくしは隣にツイン部屋を取っておりますので、これで失礼して停止させて戴きます』

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