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「おお、これは岸田君の…。それに誰でしたっけ? ナントカさんのお従兄妹さんでしたな?」

『若林です』

「そうそう、そうでした。岸田君の友達のお従兄妹さん。歳をとると忘れっぽくていかん、ははは…」

「孫がいつもお世話になっとります」

 そこへ、長左衛門が話に割って入った。

「あっ! 先だっては態々(わざわざ)…。で、今回は?」

「いやあ~、この大学の…。私、これでも卒業生でしてな、ははは…。自慢話は余り好かんのですがのう。実は、二寮会で久々に一同が会することになりましてな、ホッホッホッホッ…」

「ああ帝大の…。聞いております、父から」

「ほう、父上から…。不躾ぶしつけじゃが、貴殿の父上はなんと申される?」

「山盛源太郎ですが…」

「おおお! 山盛源太郎君!! これはなんという奇遇じゃ! 私と山盛君は同窓でした」

「はあ! そうでしたか。父が聞けば喜んだと思います」

「今、お父上は?」

「数年前に他界いたしました」

「左様でしたか。それは、ご愁傷でした」

「有難うございます。父と昵懇じっこんの方にお会いできるとは、嬉しい限りです」

 教授は柔和な笑みで片手を差し出し長左衛門と握手をした。まるでドラマだ…と、保ロッカーの白衣を着ながら聞いていた。その横には沙耶がいた。

『どうしよう? 私。帰ろうか?』

「おいおい、身捨てるなよ俺を。もう少しくらい、いいだろ? せめて、じいちゃんが帰るまで」

 保は片手を広げて手の平を縦にし、頼み込むポーズをした。

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