177/310
-177-
気分よく浴室を出ると、沙耶が近づいてきた。
『さっき、中林さんから電話があったわよ』
「なんて?」
『さあ? かけ直すって…。たぶん、新聞とかテレビじゃない』
「あっ! そうか…。今、俺達は渦中の人だからな…」
自動補足機のニュースは、この時点で多かれ少なかれ世間に知られていた。
「おっ! 俺だ。久しぶりだが、どうかしたか?」
「お前、今日の新聞見ただろ」
中林の冷静な声が保の耳に届いた。
「ああ…、その件か。お前も薄々は感じてたんだろうが、ついにな…」
「いやあ~、全国版の一面トップだぜ、写真入りの。それにだ。テレビが賑やかに言ってる」
「今、沙耶に何とかならないか訊いてたとこだ」
「世間に知れると、メリット、デメリット両方あるからな」
「それだ! 中林」
「世間と付き合えなくなるか…」
「というより、別世界の人間になっちまうからな。芸能人みたいなもんだ。…だがまあ、気にすんな。俺がパイプになってやる」
「ははは…太いバイプだ。そのときは頼む、じゃあな。また連絡する…そのうち、一杯、やろうぜ」
「そうだな。楽しみにしてるぞ…、じゃあ!」
保が電話を切った瞬間、玄関チャイムが鳴った。




