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それにしても、16階の106号室である。この1と6は藤崎自身のこだわりなのか、あるいは偶然が単に重なった結果なのか…と、持参するたびに保は思えていた。

 居室前のチャイムボタンを押して呼び出すと、しばらくしてドアが開いた。事情があって今は一人暮らしだと保は以前、藤崎から聞かされていた。

「はい…。岸田さんですか。なんかご用ね?」

 藤崎は、いつものボケ~っとした顔でたずねた。

「朝早くから、すみません。実は、これだけは言っとかないと、と思いまして…」

「はあ・・どがんことでしょうか?」

 出身は分からないが、藤崎の言葉に地方訛なまりが混ざっていた。

「居座ってると言ってました妹のことなんですが…」

「えっ? ああ…。そう、おっしゃっておられたばい。どがんかされましたか?」

「いや、そうじゃないんです。言いにくいんですが…。実は、妹じゃないんです」

「えっ?!」

 一瞬、藤崎からニヤけた笑みがこぼれた。恐らくは怪物長左衛門と同じように、若い女が…みたいな錯覚をしたんだろうと、保は刹那、思った。

「いやいやいや、そうじゃないんです。実は従兄妹いとこなんです」

「はあ? …妹さんじゃなく、お従兄妹さんなんね?」

「ええ、そうなんです。どうも、すみません」

「そんな…。あやま)っていただくようなことじゃなかですから…。そうでしたか、お従兄妹さんですか」

 藤崎のその目は、まだニヤけていて、半信半疑でうかがうように保を見ている。

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